フローの重税化が進む一方でストックにはほぼ無課税である状況では預金が増えるだけだ

 日経新聞によりますと、預金残高が1000兆円を超えたとのことです。

 しかし、その資産を持つのは高齢者がほとんどであり、現役世帯ではありません。経済を回したいのであれば、現役世帯の『フロー(=所得)』を減税し、高齢者の『ストック(=貯蓄)』に課税する形での税制改革が不可欠と言えるでしょう。

 

 金融機関に預金が集まり続けている。銀行や信用金庫などの預金残高は2017年3月末時点で、過去最高の1053兆円となった。日銀のマイナス金利政策で金利はほぼゼロにもかかわらず、中高年が虎の子の退職金や年金を預け続けている。

 

 銀行などに預けられている預金残高は1000兆円を超えており、その持ち主は高齢者がほとんどであることは家計調査報告から明らかです。

 2人以上の世帯における総貯蓄の約7割は60歳以上が保有しているのです。この資産が世に出回らないかぎり、経済にプラスとなることはないでしょう。

 

『フロー(=所得)』への課税を重くする方針は限界に達した

 高齢者は『現役時代の所得(=フロー)』を長年積み重ねたことで、『現在の貯蓄(=ストック)』を手にしました。このこと自体はフェアと言えるでしょう。

 しかし、“フローに課せられていた税率” が異なるのです。これは明らかにアンフェアなことです。

 以前は消費に向かっていた所得の一部が「高齢者向けの社会保障」という形で強制的に徴取されているのです。高齢者の現役時代と比較すると、現役世帯の経済的な余裕は失われている状況なのです。

 財布の紐を緩めることを促したところで、そもそも現役世帯の財布には中身が不足している状況です。そのことを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

『ストック(=貯蓄)』への課税強化に舵を切るべき

 政府の採るべき税制の方向性としては『ストック(=貯蓄)』に対する課税を強化するべきです。

 国民のほとんどが資産を持たない状況であれば、『フロー(=所得)』に課税する形は適切なものです。しかし、資産家が一定数を超えた時点で『ストック(=貯蓄)』からも課税しなければ、不公平感が強くなるからです。

 1億円の所得は 50% の所得税がかかりますが、資産であれば税金はかかりません。資産を受け継いだ際に贈与税がかかる程度です。

 それなら、資産そのものに課税を行い、贈与税は極めて低くする税制に意向すべきです。1億円の土地があるなら、贈与税で5000万円という形ではなく、年間 1〜2% の資産税を設けた方が “先進国型の税制” と言えるのではないでしょうか。

 

現役世帯の社会保障料を上げるのはでなく、“裕福な高齢者” に負担をお願いすべきだ

 「現役世帯が高齢者の社会保障を支える」という考えは少子高齢化で高齢者の絶対数が増える状況では破綻することは明らかです。

 社会保障料を上げることで一時的に予算は確保できますが、その代償として経済活動に回るはずだった金額が失われます。その結果、消費が低迷し、景気が悪化する要因となるのです。

 マスコミは “生活の苦しい高齢者” を登場させ、現役世帯がさらなる負担をすることを正当化しています。しかし、実際に資産を持っているのは高齢者であり、マスコミに登場する “生活の苦しい高齢者” と同水準の生活を強いられている若者は多くいるのです。

 社会保障料の増加を担うのは若者など現役世帯ではなく、資産のある高齢者です。高齢者間で資産の移転を行うべきであり、貧しい若者から裕福な高齢者へ “仕送り” をする形になっている現状がおかしいことなのです。

 

 「税金は金のあるところから取るべきだ」というのであれば、高齢者の資産に対する課税を行うことを本格的に議論すべきでしょう。少なくとも、資産を持つ高齢者が現役世代と同じ医療サービスを受けているにもかかわらず、保険税率が低いという不公平を是正することから始めるべきではないでしょうか。