経産省とJOGMECが世界初の海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功、課題は「経済性」と「中国の海洋進出対策」だ
経産省は JOGMEC (石油天然ガス・金属鉱物資源機構)と沖縄近海で行っていた海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功したと発表いたしました。
鉱物資源は大部分が輸入に頼っていた日本にとって、国内に供給源ができることは大きなインパクトを持ちます。国を経済的に豊かにするための研究で成果が得られたことに対し、ポジティブに伝える必要があると言えるでしょう。
経済産業省及び(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、採掘・集鉱試験機を用いて海底約1600mの海底熱水鉱床を掘削・集鉱し、水中ポンプで海水とともに連続的に洋上に揚げる世界初の採鉱・揚鉱パイロット試験を沖縄近海で実施し、成功しました。この試験の成功は、海洋鉱物資源開発に必要となる技術の確立に向け大きな一歩となります。今後、本試験成果の他、資源量評価、環境調査等の調査結果を踏まえて、平成30年度に経済性評価を行います。
海底から連続して採鉱・揚鉱に成功したことは大きな実績と言えるでしょう。鉱物資源のほとんどが “鉱山” で採掘されているため、海底からも採掘が可能であることが証明されたことが与えるインパクトは大きいと言えるからです。
採算が取れるかの経済性評価が行われるのはこれからのことです。海中での開発となりますので、「環境への影響がどのぐらいで生じるのか」など複数の要素を踏まえた判断が必要となるでしょう。
1:海底熱水鉱床から何が採掘されるのか
今回、掘削に成功した海底熱水鉱床に含有される金属には次のようなものがあると経産省が『海洋鉱物資源の概要』で紹介しています。
銅、鉛、亜鉛、金、銀、レアメタルと記載されており、含有量は海底熱水鉱床ごとに異なるでしょう。
しかし、鉱山を持たない日本にとって、鉱床が存在することは重要な意味を持ちます。(ほぼ)すべてを輸入に頼っていた国が「国内調達」という選択肢を持ち、採算性次第で「輸出する側」に立つことも起こり得るのです。
ただ、課題がない訳ではありません。現実に問題として起きる可能性がある事柄に対し、対策を講じておく必要があると言えるでしょう。
2:沖縄県は「海底熱水鉱床開発の前線基地」としての当事者意識を持っているのか
経産省が連続揚鉱に成功した海底熱水鉱床は沖縄近海にあります。つまり、沖縄県は「新しい鉱区を持っている」に等しいことなのです。
採算性があることが判明すれば、民間企業を含めた投資が押し寄せることでしょう。採算性が取れない状況でも、開発プロセスが確立しているのであれば、鉱物資源の国内調達先を確保したい国の投資が止まる可能性は極めて低い状況にあるのです。
この流れを活用することが沖縄県の責務であるはずです。「観光業が好調だ」と主張していますが、県の収入や県民所得は低いままです。
高給を得られる見込みがある業種が沖縄に生まれることを妨害する県政は避けなければならないと言えるでしょう。
3:中国が「沖縄近海の海底熱水鉱床」を狙ってくるのは時間の問題
「沖縄近海の海底熱水鉱床」にとって最大の懸念点は中国の海洋進出でしょう。すでに南シナ海を我が物顔で占拠している中国が東シナ海に手を伸ばさない理由はどこにもないからです。
この中国の動きに沖縄県がどういった立ち位置を採るかが重要です。
「話し合い」の通じる相手ではないことは “南シナ海での中国の振る舞い” から明らかです。もし、「平和的な話し合いで解決できる」と主張するのであれば、それは「中国にすべての開発権を差し出す」以外に選択肢は存在しないと言っていることと同じです。
その場合、沖縄が “おこぼれ” をもらえることはありません。なぜなら、「中国の資源を横取りする恐れのある信用できない相手」と見なされ、『監視の対象』と位置付けられていることが予想されるからです。
反基地活動に走り、環境問題でダブルスタンダードを適用する沖縄が “宝の山” を無駄にする可能性は十分に存在します。そうなった際に、中国などの諸外国に国益が持ち出されないように日本国内に還元する仕組みを構築し始めておく必要があると言えるのではないでしょうか。