日本相撲協会は「満身創痍の力士では土俵上は充実しない」ことを認め、大相撲改革に取り組むべきだ

 平成29年(2017年)9月場所は3横綱2大関が怪我で休場するという異例の事態となりました。

 日本相撲協会は「土俵上の充実」を目標に掲げていますが、満身創痍の力士が充実した内容の相撲をとることは不可能です。この点を認識し、大相撲改革を行う必要があると言えるでしょう。

 現状を放置すれば、勝負事として魅力が下がり、人気が低迷することは時間の問題だからです。

 

■ 休むことへのデメリットが大きすぎることが問題

 満身創痍の力士が急増した理由は「休場することのデメリットが大きすぎるから」です。

 昔は『公傷制度』があり、負傷や病気を理由に番付が下がることを防ぐことができました。しかし、制度を悪用する事例が相次ぎ、制度が廃止されたことで “番付を下げたくない力士” は怪我を押して強行出場を選択せざるを得なくなったのです。

 その結果、本来の力とは程遠い内容となったり、怪我を余計に悪化させるなどのマイナス面が浮き彫りになりました。これは角界にとっての長期的な損失を生み出す問題であり、改善策を講じる必要があると言えるでしょう。

 

 

■ 大相撲改革(案)

 少なくとも、現状維持では確実に “ジリ貧” です。そのため、力士の負担となっている原因についての対策を講じることが不可欠と言えるはずです。

 具体的には以下の内容を対策として行う必要があると思われます。

1:『公傷制度』の復活

 『公傷制度』の復活は必須です。しかし、問題のあった『公傷制度』を昔のままで復活させるという意味ではありません。問題となった部分を改善し、現代の基準にあった制度で運用するということです。

  • 『公傷制度』の対象は外的損傷・負傷とする(年齢無制限)
  • 病気による『公傷制度』の利用には年齢制限を設ける
  • 全治4ヶ月以上(2場所以上連続休場)の負傷であれば、申請を認める
  • 『公傷』と認定されるかは日本相撲協会が指定する機関での再検査を義務付ける

 上記のルールを設定するだけでも、以前の制度と大きく異なることになるでしょう。

 まず、力士と医師がグルになって『公傷制度』を悪用するケースを追放できます。セカンドオピニオンを仰いでも診察結果が変わらないなら、『公傷』として認定すれば、ズルをする輩をある程度は排除できるからです。

 次に「病気」に対する『公傷制度』は新たな問題点となる可能性があるだけに年齢制限が必須です。なぜなら、引退間近の幕内力士が「うつ病」との診断書を出せば、番付が下がることなく定年まで “幕内力士の給与” を手にすることができるからです。

 この手の “穴” を事前に防ぎ、制度を改善していくことが『公傷制度』を復活させるためには不可欠なのです。

 

2:東京開催を年2場所とし、1場所を地方で開催する

 大相撲人気を継続させるのであれば、ブーム頼りでは苦しくなることは明確です。本場所が行われるのが東京・大阪・愛知・福岡の4都市だけですから、それ以外の地域でもファンの掘り起こしが必須と言えるでしょう。

 大相撲最大の魅力が本場所であるなら、本場所を地方で開催しなければ意味のないことです。

 東京では本場所が年3場所も開催されており、この内の1場所を地方で開催する形に変更すべきです。そうすることで “地方巡業” の価値が現在よりも高くなる訳ですし、相撲協会も財政的なプラスを得ることが可能となるからです。

 

3:地方巡業は “本場所誘致のためのプレテスト” と位置付けるべき

 「本場所が地方で開催される」となれば、巡業の価値が急上昇します。なぜなら、本場所が開催される地方での巡業は “本場所に向けたプレ興行” となるからです。

 年1場所が東京・大阪・名古屋・福岡以外の都市で行われるのです。大きな経済効果がその都市にもたらされることは確実です。場所中だけで15日間の日程があり、本場所に向けた全日程では1ヶ月以上になります。

 また、マスコミの取材もある訳ですから、誘致に乗り出したいと考える地方自治体は多いと見込めるはずです。そうなると、日本相撲協会は「まずは巡業で本場所の開催を希望する自治体の運営力をテストする」ことが可能になります。

 巡業でプレテストを行い、開催自治体を選定し、正式発表を行う。その後、実際に本場所が行われる1年から半年前に巡業で「本場所で <開催地> のファンの皆さんとお会いできることを楽しみにしています」と横綱が述べれば、大きな宣伝となるでしょう。

 巡業は数を増やすだけでなく、質を高め、力士の負担を増やしすぎないことも留意しておく必要があるのです。

 

 「土俵上の充実」を念頭に置き、それを実現させるためには大相撲改革が必要と言えるでしょう。日本相撲協会はその動きを本格化させ、様々なタイプの力士が土俵上で数多くの質の高い真剣勝負が繰り広げられる環境を作ることに尽力すべきと言えるのではないでしょうか。