安全性を満たしていれば、品質データを改ざんしても良いということにはならない

 検査データの改ざんが問題となっている神戸製鋼ですが、「安全性に問題がある」という内容の報道は起きていません。

 ただ擁護することはできないでしょう。なぜなら、『約束した品質の製品』を顧客に無断で『品質水準を満たしていない製品』を納入していたからです。

 

1:高品質なものは高コストである

 品質による製品の分類は下表のものとなるでしょう。

画像:品質と基準

 安全性を満たしていない製品は問題外であり、それが原因で消費者に損害が出ないよう『品質基準』が存在しています。しかし、『品質基準』の設定された水準によって、誰かが損害を受けることになるのです。

 

 

2:過剰な高品質が要求される基準は引き下げられるべき

 『品質基準』は『安全性が保てる下限』から “ある程度のゆとり” を取った上で設定されているはずです。

 これは多くの人が納得することでしょう。ただ、ゆとりの幅が大きすぎることは必ずしもプラスとは言えません。

 過剰に高く設定された『基準』は引き下げに向けて動かなければなりません。これは経営陣の仕事であり、「規格(=基準)を満たす製品を低コストで作れ」と現場に発破をかけるだけでは仕事をしたとは言えないのです。

 経営層がどれだけ汗をかいたかが如実に現れるテーマと言えるでしょう。

 

3:「実現可能で現実的な経営目標」が現場にアサインされていたのか?

 「安易な経営目標」を設定する経営陣は会社に損害をもらす結果を招きます。これは実現困難な目標を定め、現場に要求してしまう恐れがあるからです。

 昔は人が製品を作っていたため、個人差やムラが存在しました。つまり、本人が手際を良くすることで「前年比プラス」を容易に達成できたのです。

 しかし、機械化が進んだことで個人差やムラがなくなりました。そのため、「前年比プラス」を達成するには「機械を最新化する」や「工程を改善する」という大掛かりで予算が不可欠になっているのです。

 これを見落とし、「現場の工夫と努力で結果を残せ」と要求するのは経営陣の問題なのです。

 

4:黙って基準値未満の製品を納入する行為は顧客に対する裏切り

 ただ、現場にも問題があります。それは「顧客に黙って基準値を下回る製品を納入したこと」でしょう。これは顧客に対する裏切りです。

 出荷前の品質テストが負担になっているなら、追加の人員と費用を経営陣に要求すべきです。要望を受けた経営陣は予算を出すか、顧客側に費用を請求するかなどの決断を下さなければなりません。

 “抜き打ち検査” で自社が出荷する製品の品質チェックは行うべきですが、出荷する製品を購入することを要望されるのであれば、コストは価格に転嫁しなければならないことなのです。

 偽装問題は経営陣だけ、もしくは現場だけに責任があるというものではありません。原因は複数から発生しており、その点を明らかにした上で個々の対策を講じ、地道に信頼回復に務めるしか道は残されていないと言えるのではないでしょうか。