韓国 GM が工場閉鎖を通告、ムン・ジェイン大統領の経済手腕が問われる事態に
ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の韓国 GM が「クンサン(郡山)工場を閉鎖する」と13日に発表したと日経新聞が報じています。
自動車などの製造業は雇用人数が多く、生産工場の閉鎖は地域経済に大きな痛手を与えることになります。韓国 GM が事業そのものを閉鎖する可能性が現実にあるだけに、ムン・ジェイン大統領の経済手腕が問われることになるでしょう。
米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の韓国GMは13日、韓国南西部にある群山工場を閉鎖すると発表した。韓国GMは「シボレー」ブランドの小型車の生産拠点だが、GMが欧州での同ブランドの販売から撤退したことで同工場の稼働率が急低下。生産継続は不可能と判断した。
群山工場は5月に閉鎖する。従業員2000人は全員解雇する。同工場は生産能力が年26万台だが、近年は稼働率が20%台まで低下していた。
稼働率が2割である上、韓国 GM の業績は大赤字です。そのため、韓国撤退を視野に入れた工場閉鎖に踏み切ることは妥当な判断と言えるでしょう。
注目されるのは『韓国政府の対応策』です。「外資系の民間企業である韓国 GM を支援するか」の決断を迫られるという状況に置かれているため、難しい判断を迫られています。
1:4年で3000億円の赤字を出している韓国 GM
韓国 GM ですが、この4年で3兆ウォン(≒ 3000億円)の巨額赤字を計上したと朝鮮日報が報じています。この業績では工場閉鎖の判断が下されて当然です。
- 4年で3000億円の巨額赤字を計上
- 韓国 GM は「欧州向けの小型車」が主力
→ GM の欧州撤退で稼働率が低下 - 韓国 GM の人件費はヒュンダイのアメリカ工場より高い
→ 労組は賃金アップを求め、ストを実施
世界屈指の人件費がかかる韓国国内で自動車生産を行う理由がないのです。
賃金アップを求めたストが頻繁に行われる上、生産効率は世界最低の水準。“韓国国内の工場でしか生産できない” という技術を持っている訳ではないのですから、「高コスト体質の韓国 GM (の規模)を縮小すること」は当然の成り行きなのです。
2:『撤退』のカードが行使可能になった韓国 GM は強気に出られる
『撤退』を視野に入れた工場閉鎖に踏み切った韓国 GM ですが、これまでは『撤退』したくてもできない状況でした。
韓国 GM の前身はテウ(大宇)自動車です。テウ自動車がアジア通貨危機で経営破綻し、買収によって GM の傘下に入ったという経歴があります。この際、「15年は事業を継続させる」との条件が加えられていたのですが、2017年10月に失効しています。
そのため、韓国 GM は「ムン・ジェイン大統領が守ると宣言したテウ(大宇)造船海洋と同様の支援策を表明せよ。それがなければ撤退する」と強気に出られる訳です。
韓国経済のために巨額赤字を容認する民間企業はないでしょう。株主やオーナーへの背任行為を問われることになりますし、グローバル企業なら世界規模での最適化を推進するはずだからです。
3:左派系トップの「弱者優遇による経済政策」で効果が生まれるかに注目
ゼネラル・モーターズは “お荷物” となっている韓国 GM を切ることに躊躇する理由はありません。欧州向けが主力で韓国市場に対する貢献度が極めて低い工場を抱えていることにメリットはゼロだからです。
しかし、韓国大統領にとっては重要な問題です。なぜなら、GM が韓国撤退を決断すれば、約1万人の従業員が職を失うことになるからです。
ムン・ジェイン大統領は左派系で、弱者に寄り添う姿勢を示しています。こうした政策が好調な経済を生み出していれば良いのですが、逆の結果となっているのです。
最低賃金を上げれば、輸出を主力とする企業は競争力を落とします。自動車や造船など “裾野が広い製造業” が国際市場での競争力を落としてしまうと、大規模な雇用喪失が生まれるというマイナス面があることを左派・リベラルの指導者は自覚しなければなりません。
彼らは「現時点の弱者」を支援するために、企業への負担を増す政策を進めようとするでしょう。その結果、製造業で働く従業員が “世界規模での最適化の荒波” を受け、「支援されるべき新たな弱者」となってしまう可能性があるのです。
当初に見込んでした支援用の予算が不足することになりますし、経済効果が現れないことは当然の結末と言えるでしょう。
「弱者への支援こそ、成長するための経済政策」と誇らしく語る左派系の政治家がいますが、それは間違いです。「国家からの支援」で経済成長するのであれば、社会主義国家が破綻するようなことはなかったと言えるからです。
左派・リベラル系の政治家は自分たちの政策をあまりに過信しすぎているのでしょう。詐欺師のような見通しの甘い言論に騙されないように注意する必要があると言えるのではないでしょうか。