韓国GM労使交渉:期限の4月20日を経過するも、韓国政府の介入で23日まで期限が延長

 大赤字を計上し、「大規模リストラによる経営再建」か「法定管理(≒ 事業撤退)」かの2択となっていた韓国 GM の労使交渉は期限であった4月20日になっても合意せず、決裂となりました。

 交渉が妥結しなかったため、「法定管理(≒ 事業撤退)」が有力な状況でしたが、韓国政府からの介入で期限が23日(月)に延長になったと韓国・中央日報が報じています。しかし、厳しい状況に変わりないと言えるでしょう。

 

 米ワシントンを訪問中の金東ヨン(キム・ドンヨン)副首相兼企画財政副長官は20日(現地時間)、韓国GM労使の交渉期間を23日午後5時まで延長すると明らかにし、劇的妥協の余地は残すことになった。

 法定管理という最悪の事態は防がなければいけない。労使合意案が出れば群山(クンサン)工場1カ所の閉鎖にとどまるが、法定管理に入れば衝撃は群山を越えて全国に広がる。

 韓国 GM の経営状況が思わしくないことは過去に言及済みです。

  • この4年で3000億円の巨額赤字を計上
  • 韓国 GM は「欧州向けの小型車」が主力だったが、GM の欧州撤退で収益性が悪化
  • 労組は賃金アップを求め、ストを実施するなど生産性が極めて悪い状態

 この状況を改善・テコ入れすることに労組側が反発し、労使交渉が発生したという経緯があります。高給取りで生産性の悪い従業員を雇用し続けるメリットが会社側には存在しない訳ですから、「労組がどこまで “痛み” を容認するのかが問われている」と言えるでしょう。

 

合意なら工場1カ所、決裂なら事業全体が閉鎖

 まず、韓国 GM は経営資金がほぼ枯渇している状態です。GM 本社には(大赤字を計上している韓国 GM に)追加の資金援助をする意図はないため、労使がまとまらなければ法廷管理に入ることが確実な状況にあるのです。

  • 労使妥結
    • 閉鎖は発表済のクンサン(群山)工場のみ
    • 人員削減は3000人超
    • 年100億円規模の福利厚生費が削減
  • 労使交渉が決裂
    • 法定管理(=事業清算)となる
    • 韓国 GM の全従業員(約1万6000人)に影響が生じる
    • 下請けなどを含めると、数十万人の雇用が脅かされる

 両者ともに強硬な姿勢を貫いており、妥結の兆しはありません。ただ、GM 側が韓国の労働者に “プレゼント” を与える見込みはゼロに近いため、労組側が歩み寄る意志を持っているかがすべてと言えるでしょう。

 会社側には巨額赤字を計上する海外法人を存続させるメリットがないからです。韓国市場が大きいという訳ではないだけに労組は厳しい立場に置かれているのです。

 

韓国政府の介入に関係なく、法定管理の申請は23日(月)まで不可能

 労使交渉の期限が韓国政府の介入で23日(月)17時までに延長されました。

 しかし、法定管理の申請を提出しようにも、21日と22日は土日で受付窓口は閉鎖していることでしょう。つまり、申請はどれだけ早くても23日だったのです。

 GM 側が韓国政府に恩を売っても、見返りはありません。その上、従業員が経営再建に非協力的であり、過去に計上した巨額赤字(3000億円)を挽回するために必要な姿勢を示していない状況なのです。

 こうした状況で会社側が妥協に応じることはないでしょう。労組側が折れる(=会社側の要求を飲む)以外は法定管理に向けて進んでいることと同じであることを見落とすべきではありません。

 

 ムン・ジェイン大統領は南北首脳会談を控えているため、韓国 GM の労使交渉に公的支援などといった介入はしないでしょう。“銀のスプーン” を咥えている労組を甘やかすよりも、キム・ジョンウン委員長との会談の方が政治的にインパクトを残せる可能性が高いからです。

 経済が大きく落ち込むことになっても、南北融和による “夢” を優先する」という姿勢を韓国の有権者が評価するなら、それも民意です。韓国 GM の行く末は韓国経済に少なからずの影響を与えることは確実ですので、事態を見守る必要はあると言えるのではないでしょうか。