米韓 FTA の妥結内容を考慮すれば、鉄鋼・アルミの関税免除では韓国は割に合わない
アメリカ・トランプ政権が鉄鋼・アルミに新たな関税を設けましたが、韓国はその対象外となりました。
ただ、再交渉に入っていた米韓 FTA の見直し内容を考慮すると、韓国側は “手痛い譲歩” を強いられた結果となっています。日経新聞が伝えた記事は以下のものです。
トランプ米政権は27日、韓国と米韓自由貿易協定(FTA)の見直しで大筋合意したと正式発表した。同時に両国が競争的な通貨切り下げを禁じる「為替条項」の導入でも合意したことを明らかにした。米国への輸出拡大を狙った韓国の通貨安誘導を防ぐためで、米国が同条項を結ぶのは初めてという。
『為替条項』が導入されることはアメリカ側にとって大きなメリットです。これはオバマ政権時代からの “悲願” であっただけに、トランプ大統領が大きくポイントを稼ぐ結果となりました。
また、『為替条項』以外では以下の項目で合意に達したとのことです。
韓国にとって “割に合わない内容”
韓国は「鉄鋼・アルミニウムに対する関税の対象外」という成果を得ましたが、その見返りとして次の項目で譲歩を強いられることとなりました。
- 韓国が得た内容
- 鉄鋼関税 25% の免除
- アルミ関税 10% の免除
- アメリカが得た内容
- 韓国製ピックアップトラックへの関税 25% の撤廃期限を2041年まで先延ばし
- アメリカの安全基準を満たす車両の韓国国内での販売可能数を1メーカー当たり5万台に倍増
- 対米鉄鋼輸出量は 2015〜17 年平均の 70% (年間約270万トン)に制限
- 韓国の製薬会社を優遇する公的健康保険制度を改定
- 韓国による為替介入の透明化向上の義務付け
- 競争的目的でのウォン安政策の回避を約束
関税の適用は免除されましたが、総量規制を科されました。これは市場から締め出しと同じですので、トランプ政権の狙いと変わらないでしょう。
また、ウォン安に誘導するための『為替介入』を禁じるための “足かせ” を導入したことはトランプ政権の大きな手柄となりました。
『通貨安に誘導するための為替介入』は他国に嫌われる
輸出企業を多く抱える国にとって、通貨安は競争力を高めることになります。外国市場に安い価格で商品を販売できるため、シェアを伸ばせる大きな要因となるからです。
ただ、通貨安が進みすぎると、通貨危機を招いてしまいます。しかし、韓国は『通貨スワップ協定』を “命綱” に使い、ウォン安へと為替介入を続けてきたのです。
- ウォン安になるよう為替介入
→ 韓国企業が国外市場で競争力 UP - 『米韓 or 日韓スワップ協定』の存在
→ 通貨危機に陥っても問題なし
つまり、韓国政府は積極的に為替介入を行い、ウォン安という形で韓国企業を支援。しかも、『通貨スワップ』で保険をかけた状態で通貨危機すれすれの状態にまでウォン安を誘導するという政策を採ってきたのです。
こうした政策を採る国を容認する諸外国は存在しないでしょう。その結果、アメリカも日本も韓国と『通貨スワップ協定』を締結しなくなり、通商交渉をより厳しい姿勢で臨むようになっただけの話なのです。
日本政府としては、アメリカに「鉄鋼・アルミの関税撤回」の働きかけを行うとともに、中国・韓国製の鉄鋼・アルミがダンピング価格に日本市場に流入しないように対策を講じることが求められます。
これらの製品に日本も速やかに報復関税をかけ、“真っ当な商売” を行う国内の鉄鋼・アルミ企業が利益を確保できる市場となるように動くべきでしょう。アメリカに対しては「TPP の加入」を呼びかけ、「2国間 FTA の交渉に応じる予定はない」とのメッセージを送るべきと言えるのではないでしょうか。