ドイツ、政党支持率で “極右” の『ドイツのための選択肢(AfD)』が2位に躍進

 NHK によりますと、ドイツで行われた世論調査で『ドイツのための選択肢(AfD)』が2大政党の1つである『社会民主党(SPD)』を上回ったとのことです。

 AfD は着実に勢力を伸ばしており、存在感が急速に失われるような要因は現時点では見当たりません。そのため、どのあたりまで勢力を拡大するかが注目点と言えるでしょう。

 

 ドイツで19日に発表された世論調査で、難民の受け入れに反対する新興右派政党「ドイツのための選択肢」の支持率が2大政党の1つで中道左派の社会民主党を初めて上回り、今後のドイツ政治の勢力図が大きく変化することにつながるのかどうか注目されています。

 19日に発表されたドイツの世論調査会社 INSAの調査によりますと、各党の支持率は、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟が32%、新興右派のドイツのための選択肢が16%、そして、中道左派の社会民主党が15.5%で、ドイツのための選択肢が初めて社会民主党を上回りました。

 

 このニュースで注目すべきは「政党支持率」と「政党紹介で使われる文言」です。

 これまで、AfD には『極右』という枕詞が使われていましたが、これが『新興右派政党』という表現に変化しています。さすがに支持率で第2党に躍り出た政党に対し、極右という “レッテル貼り” を継続することはできなかったのでしょう。

 「レッテル貼りではない」との根拠を提示できるのであれば、政党紹介の文言を変更する必要はないからです。

 

1:SPD の支持率下落の発端は「大連立交渉の再開」が報じられたこと

 INSA が発表しているドイツ主要政党の支持率をグラフにすると、以下のようになります。

画像:ドイツ政党支持率の推移

 当初、メルケル首相が率いる CDU/CSU は『ジャマイカ連立』を模索。『自由民主党(FDP)』や『緑の党』との交渉を行っていました。この間、各政党の支持率はほぼ横ばいであり、大きな動きはない状況でした。

 ところが、『ジャマイカ連立』は交渉での折り合いがつかず決裂。「CDU/CSU と SPD による『大連立』の可能性」が報じられ、実際に動き始めると、SPD の支持率下落が進行したのです。

 

2:中道左派『SPD』の “受け皿” は『緑の党』

 AfD は支持率で第2党に躍進しましたが、SPD とは政党としての立ち位置が大きく異なります。そのため、 “SPD の受け皿” となる可能性が高いのは同じく左派系政党である『緑の党』だと言えるでしょう。

  • SPD (中道左派)
    • 2017年10月第1週:22.0%
    • 2018年2月第3週: 15.5% (-6.5)
  • 緑の党(左派)
    • 2017年10月第1週:9.0%
    • 2018年2月第3週:13.0% (+4.0)

 左派系政党の政策を支持する人が右派政党を支持するようになるケースは例外的です。基本的には「左派系の政策を掲げる中で、最もベストと考えられる政党」に投票することでしょう。

 SPD は2017年10月第1週の時点から、6.5 ポイントの支持率を落としました。『緑の党』は同時期に 4.0 ポイントのプラス、同じく左派系の『左翼党(Linke)』が 2.0 ポイントのプラスですので、左派系政党間での増減に過ぎないと言えるのです。

 

3:“隠れ支持者” も多いと予想される AfD が躍進することの意味

 AfD が他の主要政党と比較して侮れないのは「隠れ支持者の存在」でしょう。マスコミが “極右” とのレッテル貼りに勤しんでいる訳ですから、AfD 支持を公言することのデメリットを認識した上で生活しているはずです。

 したがって、実際の支持率は 20% に迫るものと見ておく必要があります。

 AfD は「第1党である CDU/CSU (中道右派)が主導する政権批判票」を取り込むことができる1番手であり、自称・難民がドイツ国内に大量流入している問題で政権が上手く対処して効果を示せない限り、支持を拡大することになるでしょう。

 行き過ぎたリベラル政策の “揺り戻し” も、AfD が躍進する要因となっているのです。大連立が続くことになれば、今後もこの兆候が続くことになるでしょう。SPD の党員投票でどういった結果が示されるのかに注目と言えるのではないでしょうか。