不発弾処理費用をめぐる訴訟、朝日新聞は「地域振興予算から処理費用を拠出せよ」とのキャンペーンを展開すべき

 大阪市の繁華街で発見された不発弾の処理費用を巡り、土地の所有者が「国と大阪市が費用を負担すべき」と訴えていた裁判で判決が出たと朝日新聞が報じています。

 判決は「法的根拠がないため、原告の訴えを退ける」というものでした。妥当な判決だと言えるでしょうが、“救済” という点では政治が動く必要がある事案と言えるでしょう。

 

 戦時中に投下された不発弾を処理する費用は自治体や国が負担すべきだとして、大阪市の不動産管理業の男性(59)ら3人が市と国に576万円の支払いを求めた訴訟の判決が26日、大阪地裁(比嘉一美裁判長)であった。「国・市に費用を負担する法的義務はない」と訴えを棄却した。

 (中略)

 判決は、国や市に支払い義務があるとするには「明確な法令の規定があるか、支払わないことが著しく妥当性を欠いている場合だ」と指摘。原告側が根拠とした地方自治法などには不発弾についての明確な規定がなく「支払い義務を課すものではない」と判断した。

 不発弾処理費は「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害」とも指摘。国や市が負担することは特定の個人に利益を与えることになるとし、「負担しないことが社会通念上著しく妥当性を欠くとはいえない」と結論づけた。

 

 

1:処理費負担は個人の土地所有者には重すぎる

 大阪市の繁華街・難波で発見された不発弾の処理費用を負担したのは以下の3者です。

  • 国:自衛隊の人件費(不発弾の処理を担当)
  • 大阪市:交通規制などチラシ作成など(約190万円)
  • 土地所有者:土嚢による防護壁、周辺警備費(576万円)

 裁判で国や市は「土地所有者が負担すべき」とは明確に主張していなかったと報じられています。

 これは責任を土地所有者に押し付けると、負担が増すだけの土地所有者は安全対策を最小限に留めることが目に見えているからです。野次馬が押し寄せる中で、万が一の事態が発生すれば大きな損害が発生します。最悪の事態を避ける点で、誰かが費用を負担しなければならないのです。

 

2:沖縄に注ぎ込まれている年間3000億円の『地域振興予算』を不発弾処理費用に回すべき

 不発弾の処理費用は負担する適切な予算が日本政府には存在します。このニュースが最初に報じられた際にも言及したのですが、沖縄県に与えられている『地域振興予算』から拠出すれば良いのです。

 日本は「国土の均衡ある発展」を掲げ、経済政策を行ってきました。沖縄はアメリカ統治の影響もあって発展から取り残されていたことや地上戦が行われたなどの戦争関連を理由に、現在も地域振興予算を受け取っています。

 当然、このロジックはすべて不発弾処理にも言えることです。

 不発弾の存在によって、地域振興が妨げられていることは自明です。また、「不発弾の存在」は戦火に巻き込まれていた決定的で揺るぎようのない証拠であり、戦争損害と言えるでしょう。沖縄だけが戦争損害における給付金を現在も受け取る論理的な根拠はないのです。

 したがって、『沖縄県への振興予算』ー『不発弾の処理費用』=『沖縄県に給付される実際の地域振興予算』という形にすべきなのです。

 

 大阪・難波で見つかった不発弾は “繁華街の土地を持つ所有者” だったから、600万円弱の自己負担が比較的容易だったに過ぎません。

 予算に余裕がない地方自治体が所有する道路工事の際に不発弾が発見されるケースもあるのです。そうなれば、しわ寄せは行政サービスに行くことになりますし、弱者が大きな不利益を被ることになるでしょう。

 「国民が等しく受忍しなければならない」というなら、国が処理費用を税金で負担すべきです。全額負担は難しいのであれば、半額分は負担すべきと言えるはずです。

 沖縄県が毎年3000億円超を受け取っている『地域振興予算』から、不発弾の処理費用を差し引いても誤差の範囲内に止まることは確実です。

 “弱者の味方” を自称する朝日新聞は「地域振興予算から不発弾の処理費用を拠出せよ」とのキャンペーンを展開すべきと言えるのではないでしょうか。