「シリア=北朝鮮」の関係強化によるマイナス面を欧州諸国に向けて積極的に訴える必要がある

 NHK によりますと、北朝鮮の友好国であるシリアのアサド大統領が「北朝鮮を訪問し、キム・ジョンウン委員長に会う決心だ」と発言したとのことです。

 日本政府は北朝鮮の動きを逆に利用しなければなりません。「シリア=北朝鮮」の関係強化によるマイナス面をヨーロッパ各国に自覚させることが日本の国益となるからです。

 

 3日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、友好国のシリアに新たに着任した北朝鮮の大使が先月30日、アサド大統領に信任状を渡したことを伝えました。

 この中で、アサド大統領が「今後、北朝鮮を訪問してキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長に会う決心だ」と述べたとして、北朝鮮との首脳会談に意欲を示したということです。

 また、アサド大統領は「キム委員長の指導により、最近、朝鮮半島で大きな肯定的な出来事が起こっている」としたうえで、「シリア政府は今後も北朝鮮指導部のすべての政策と措置を全面的に支持する」と述べ、両国の友好関係を強調しました。

 「アサド大統領の発言は北朝鮮の駐シリア大使就任時に出たものである」と『労働新聞』が伝えています。

 社交辞令という意味合いもありますが、外交の場で出たものであり、信憑性は高いと言えるでしょう。つまり、シリアは今よりも北朝鮮との関係を強めると宣言したに等しいのです。

 

シリアに化学兵器の開発支援を行った疑惑のある北朝鮮

 シリア・アサド政権は「化学兵器を使用したこと」を批判されています。北朝鮮は「シリアに化学兵器を供与・支援した」との疑惑を持たれており、“黒い関係” にあると言えるでしょう。

 アサド大統領は「関係の強化」を北朝鮮の新任大使に述べたのです。

 両国がさらに親密になると、“化学兵器以外の支援” も手にすることは時間の問題です。シリアが「北朝鮮経由で核兵器を手にする可能性を持っている」とヨーロッパ各国に自覚させる必要があると言えるはずです。

 

「北朝鮮製の核兵器をシリアが保有する」という現実に起こり得るリスク

 「核兵器」や「核兵器を製造できる技術者」がシリアに流出すると、中東やヨーロッパの力関係が大きく変化することでしょう。今は想像の域を出ませんが、現実となる可能性は十分にあるのです。

 周辺国と敵対中のアサド政権にとって、核兵器は状況を一変させる『切り札』となります

 「核兵器を持っている」と宣言するだけで強大な抑止力になります。なぜなら、「空爆など武力行使に対しては核による報復を行う」と恫喝すれば、リスクを負ってまで行動を起こす国はほとんどいなくなるからです。

 特に、シリアなどアラブ諸国から “恨み” を買っている自覚のある国ほど気が気でない状況と言えるでしょう。

 

日本政府が「ヨーロッパ諸国を上手く脅し、北朝鮮の非核化は不可避」と自覚させられるかだ

 核兵器が闇市場を経由するなどの形で世界中に拡散することは歓迎できません。北朝鮮は国連決議に反する形で核開発を行い、核兵器の保有を宣言したのです。

 国際社会から見れば、「極東の小国がクレイジーなことをしている」という認識でしょう。

 日本政府はそのような認識を持つヨーロッパ諸国の態度を変えさせるために働きかけを行う必要があるのです。「 “ならず者国家” と見られているシリアが北朝鮮の支援で核兵器を保有するとどうなるか」という点を啓発すべきです。

 外務省がそうした働きかけを EU 各国に行い、国際世論の形成に汗をかく責務があるのです。少なくとも、現実的に起こり得るシナリオに対する懸念をヨーロッパ諸国と共有するために動いておく必要はありますし、その成果をいつでも報告できる状況を作っておくべきと言えるのではないでしょうか。