風邪の際に抗菌薬の処方を希望する患者には「保険適用範囲外(=100%自費負担)なら、処方可能」と制度の変更すべきでは?

 NHK によりますと、「風邪の症状を訴える患者からの希望があれば、6割の医師が “風邪には効かない抗菌薬” を処方している実態が調査で明らかになった」とのことです。

 「風邪に有効な抗菌薬は存在しない」という事実を患者が知らないことが原因の1つでしょう。ただ、安心感を求めるために「わざわざ医療機関を受診したのだから、薬を処方して欲しい」という強い要望があることも否定できません。

 そのため、安易な処方ができてしまう実態を回避するための仕組み作りが重要と言えるでしょう。

 

 かぜの治療の際、60%を超える医師が、患者が希望すれば抗生物質などの抗菌薬を処方しているという調査結果がまとまりました。抗菌薬は使用量が多くなるほど、薬が効かない「耐性菌」を増やすことにつながり、専門家は「かぜには抗菌薬が効かないことを広く知ってもらう必要がある」と話しています。

 (中略)

 調査では「患者や家族が抗菌薬の処方を希望した時」の対応について聞いていて、12.7%の医師が「希望どおり処方する」と答え、「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師も50.4%に上りました。

 健康保険を利用すれば、医療機関での窓口負担は最大でも3割です。そのため、気軽に「抗菌薬の処方」を求めることができてしまうという弊害が生じていると言えるでしょう。

 

風邪に抗菌薬を処方すると何が問題なのか

 患者としては「医師から処方された薬」が “安心材料” になるでしょう。なぜなら、多くの人が「医師から処方された薬で病状が回復した」という実体験を持っているからです。

 しかし、風邪に対して効き目のない抗菌薬を処方することによって生じる問題があることを見落とすべきではありません。

  • 抗菌薬が効かない『耐性菌』が生まれる土壌作りに貢献することに直結する
  • 社会保障費が増加する

 「必要な薬の処方を渋る医師」は問題です。しかし、実態は「抗菌薬の処方を強く要望する患者に医師が止むを得ず応じている」のです。これは現場の医師で対応できる問題の範疇を超えており、制度の見直しが求められることだと言えるでしょう。

 

「保険適用範囲外(=100%自費負担)なら、処方可能」と制度を変更すべき

 必要なのは現行制度の変更でしょう。国は「処方しない場合、診療報酬を加算する」との対策を打ち出していますが、これでは抜本的な対策にはならないでしょう。

 なぜなら、患者が(風邪に効果のない)抗菌薬の処方を強く要求しているからです。

 医師が患者側の要求に折れた場合、患者側は「医療保険を使った価格で抗菌薬を入手」します。その際、医師には「通常の医療報酬」が支払われる訳ですから、無理に処方を渋る理由はない状況なのです。

 したがって、風邪の症状を訴える患者に対し、医師が必要ないと診断した抗菌薬を患者が要求する場合は「保険適用の範囲外(=全額自己負担)とする」と変更を加えるべきです。

 この方式であれば、患者側が費用を全額負担しなければならないというデメリットが生じるため、抑止力が働くことが期待できます。「風邪に抗菌薬は効かない」との啓蒙活動と並行して、医療費抑制に動き必要があると言えるでしょう。

 

 とは言え、『混合医療』に該当しないように線引きすることが要求される難しい案件です。

 「医療費の抑制」が財政の大きなテーマであるだけに、「現場の医師」や「患者のマナー」に期待するのではなく、「効果の見込めない治療や処方に対する保険適用は認めない」という “線引き” をしなければならない時代になっていると言えるのではないでしょうか。