真夏の高校野球大会を主催する朝日新聞が運動部の中高生に「熱中症のリスク」を指摘する偽善
朝日新聞の中小路徹編集委員が「熱中症の危険」を指摘する記事を書いています。
これほど欺瞞的な記事はないと言えるでしょう。なぜなら、朝日新聞は真夏の炎天下で全国高等学校野球選手権大会(= 夏の甲子園)を主催しており、高校生などに熱中症のリスクを強いている立場だからです。
中高生の運動部員にリスクを伝えるだけでなく、甲子園の大会主催者にリスクを伝え、大会フォーマットを見直すことが朝日新聞の責務と言えるでしょう。
熱中症の危険が高まる季節が今年もやってきました。この記事は、主に中高の運動部員のみなさんに読んでもらいたいものです。大人の方は、周囲にいる子どもたちに危険を伝えてください。去年も書きましたが、今年も同じことを書きます。
(中略)
「それは無理」と感じた時、「もうダメだ」と体に異変を感じた時、仲間の様子がおかしい時、自分や仲間を守るために、声を上げましょう。とても勇気がいることです。でも、みなさんの方が正しい場合がきっとあります。(編集委員・中小路徹)
中小路編集委員の記事に書かれた内容は間違いではありません。“正しい指摘” の含まれたものと言えるでしょう。
ですが、対象者を間違っているのです。これでは記事の効果は限定的に留まってしまうことでしょう。
高校球児に炎天下でのプレーを強いているのは朝日新聞
まず、朝日新聞は運動部員などを熱中症の危険にさらしている立場です。夏の高校野球を主催している訳ですから、その自覚を持たなければなりません。
猛暑が記録されている7月14日〜16日の3連休では全国各地で甲子園出場を賭けた『地方大会』が行われており、プレーをする球児や応援に駆けつけた(≒ 駆り出された)生徒が熱中症のリスクに直面しているのです。
なぜ、朝日新聞から「真夏の屋外球場での大会開催はもうダメだ」との声があがらないのでしょうか。
“児童虐待” のような環境を強いる大会を主催している以上、対策を講じることは不可避と言えるはずです。「熱中症のリスク」を啓発する記事は単なるアリバイ作りに過ぎないとの批判を受けることになるでしょう。
「ドーム球場での開催」や「開催時期の変更」など対応策は存在する
仮に、中高の運動部員から「もうダメだ」との声があれば、夏の甲子園に対する朝日新聞の姿勢は変わるのでしょうか。
おそらく、変わらないでしょう。なぜなら、既得権益を手放すことは考えられないですし、『伝統』を理由に変革を拒むと予想されるからです。
以前から、夏の甲子園は『過密日程』が問題視されています。しかし、主催者は複数球場での同日開催に乗り気ではなく、連投を余儀なくされる高校球児が出てくることになります。怪我のリスクを高めることに直結しますので、「要改善事項」と言えるでしょう。
ドーム球場で開催すれば、真夏の炎天下でプレーすることから解放されます。また、開催時期を移行することも、熱中症のリスクを下げる有効な改善策です。
これができる権限を持つのは主催者であり、中高の運動部員やその周囲にいる大人ではないのです。問題点を指摘する声は以前から出ていましたが、主催者である高野連や朝日新聞が取り合っている様子はありません。「 “悲劇” が起きてからでは遅い」という認識を持つべきでしょう。
とは言え、『感動』を追い求める朝日新聞は高校球児の健康など気にもしないでしょう。なぜなら、“悲劇” のエピソードを持ったチームにスポットを当てることで、『感動的ストーリーの題材』に利用できるという立場にあるからです。
『感動的なストーリー』を演出したことで、損害賠償を強いられるなどの “痛手” を朝日新聞が被らないかぎり、現状の大会形式が変更される議論すら起きないと思われます。
自分の身近にいる中高の運動部員などが “身勝手な大人たち” の都合にとって、『感動エピソードの題材』とされないように自衛するための術をアドバイスするしか対抗策が見当たらないと言えるのではないでしょうか。