時系列と法体系を無視した朝日新聞が「5日夜に行われた『赤坂自民亭』が災害対応の遅れを招いた」と “デマ” を飛ばす

 朝日新聞が『11万人避難指示の夜に「赤坂自民亭」適切だったか検証』との記事を掲載しています。時系列および法体系を無視した内容であり、「5日の時点で災害がしており、その中で宴会をしていた」との誤った心証を抱かせる問題ある記事と言えるでしょう。

画像:朝日新聞の記事に対するファクトチェック

 

■ 朝日新聞が報じた記事の内容

 朝日新聞は岡本智、山岸玲、藤原慎一の3名による記名記事を報じました。

画像:記事を報じる朝日新聞社のツイート

 「軽率な振る舞い」などと印象操作をしていますが、この主張は後付けです。なぜなら、5日の時点で朝日新聞を含めたマスコミ自身が「軽率」と認識していなかったからです。

 時系列および法体系を無視し、“言いがかり” に基づく批判は災害復興を遅らせる原因であることを自覚しなければなりません。該当の記事は以下のものです。

画像:朝日新聞が報じた記事の内容

 

■ 事実

1:7月5日(木)に発令されていた避難指示の対象は「京都・大阪・兵庫」の3府県

 まず、朝日新聞が批判する「11万人に避難指示の夜」の具体的な対象を確認する必要があります。

 7月5日の夜に避難指示が発令されていたのは(大阪北部地震で被害を受けた)大阪・京都・兵庫の3府県・11万人です。つまり、7日(土)以降に河川の氾濫や土砂崩れで大きな被害が出た3県(岡山・広島・愛媛)ではありません。

 したがって、「『赤坂自民亭』への出席で、政府の中国・四国地方に大きな被害をもたらした災害への対応が遅れた」との主張は難癖以外の何物でもないのです。

 

2:安倍総理が『赤坂自民亭』に出席した時間は50分、その直後に「報道各社からのインタビュー」に応じている

 次に、7月5日の時点でマスコミは安倍総理の動きに理解を示しています。その根拠は時事通信が発表している『首相動静』です。

 同30分、公邸着。アロヨ元フィリピン大統領ら同シンポジウム出席者との首相主催の夕食会。同8時19分から同22分まで、アロヨ氏ら見送り。同23分、公邸発。

 午後8時28分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。同党の若手国会議員と懇談。上川陽子法相、同党の竹下亘総務会長、岸田文雄政調会長ら同席。

 午後9時19分、報道各社のインタビュー。「懇談はどうだったか」に「和気あいあいでよかった」。同20分、同所発。

 「避難指示が出ている中、懇親会に出ることは不謹慎」との認識があるなら、総理に直接その旨を伝えていたでしょう。

 総理の返事も「和気あいあいで良かった」ではなく、「関係各所に必要な指示は出している」などになっていたはずだからです。朝日新聞が主張している内容は “後出しジャンケン” による難癖に過ぎないと言えるでしょう。

 

3:時系列のまとめ

 なお、主な出来事の時系列を整理すると、以下のようになります。

2018年7月5日(木)
14:00 気象庁が「西日本と東日本における8日頃にかけての大雨について」を発表
17:00 広島県が災害対策本部を設置
20:28 安倍総理が『赤坂自民亭』に出席。(21:20 に報道各社のインタビューに応じ、退席)
23:00 桂川(京都・淀川水系)が計画高水位を超過する恐れから、国交省・近畿地方整備局が風水害対策本部を非常体制に移行
2018年7月6日(金)
10:30 気象庁が「8日まで猛烈な雨が降り続き、大雨特別警報を発表する可能性がある」と発表
13:00 オウム事件での死刑執行に対する上川法務相が会見。マスコミがオウム事件関連の報道に注力
16:00 岡山県が災害対策本部を設置
18:00 国交省・近畿地方整備局が会見で「桂川上流の日吉ダムの貯水量がほぼ満杯で、桂川の水位がさらに上昇する恐れがある」と発表
→ 京都市内で桂川が氾濫した様子を朝日新聞が報道
17:20 気象庁が福岡・佐賀・長崎に大雨特別警報を発表
19:50 気象庁が広島・岡山・鳥取にも大雨特別警報を発表
20:00頃 江の川(島根県)が氾濫
2018年7月7日(土)
01:00頃 沼田川(広島県)と小田川(岡山県)が氾濫
07:00 愛媛県が災害対策本部を設置
08:00頃 肱川(愛媛県)が氾濫
10:00 政府が関係閣僚会議を開く
2018年7月8日(日)
08:00 政府が『非常災害対策本部』を設置

 『赤坂自民亭』と『災害対応』に何の関連性がないことは明らかです。マスコミ自身が「オウム事件の死刑執行」や「桂川(京都)の氾濫』を追いかけていたのですから、政府を批判する前に、自分たちの報道内容を総括する必要があると言えるでしょう。

 また、「安倍政権が『非常災害対策本部』を設置することが遅い」との批判をしていますが、これは法体系を無視した批判であることを指摘しなければなりません。

 

4:政府が『非常災害対策本部』を設置できるのは災害発生後

 時事通信が行った “レッテル貼り” を朝日新聞も繰り返していることは「救いようがない」と言わざるを得ません。政府が『非常災害対策本部』を設置できるのは「災害発生後」と災害対策基本法に明記されているからです。

第二十四条 非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。

 「応急対策をするために特別な必要がある」と認めた場合に限り、政府は『非常災害対策本部』を設置できるという規定なのです。

 “災害発生前” の時点で、総理が『非常災害対策本部』を設置することは違法行為です。そのため、「死者が出てから、『非常災害対策本部』を設置した」との批判を政府にすることは論外です。

 避難の呼びかけなど、災害発生の恐れに対処するのは「都道府県・市町村の災害対策本部」です。法で定められた内容を無視した対応を要求するマスコミこそ、猛省する必要があると言えるではないでしょうか。