日中間の急激な関係改善は「中国政府の意向次第で急激に変化する」ことを意味している 日本政府は適切な距離感を保つべきだ

 NHK によりますと、中国を訪問している安倍首相がシー・ジンピン(習近平)国家主席と会談を行ったとのことです。

 会談そのものは珍しくありませんが、「厚遇を受けたこと」が異例と言えるでしょう。両国関係が「良好」であることは望ましいことです。

 ただ、中国政府の意向次第で関係は簡単に悪化するだけに、“擦り寄り” に対して有頂天にならないことが重要と言えるはずです。

 

 会談の冒頭、習主席は「世界の主要な経済大国で重要な影響力を持つ国として、中日関係が長期にわたって健全で安定的に発展することは両国の国民の根本的な利益であり、地域と国際社会の普遍的な期待でもある」と述べました。

 これに対し、安倍総理大臣は「日中関係を競争から協調へ、新しい時代へと押し上げていきたい。互いに脅威とはならないという合意を再確認し、自由で公正な貿易体制を発展、進化していかなければならない」と述べました。

 中国側は「日本を持ち上げる発言」を行い、日本側は「中国への空手形」を見せたという状況です。

 現状は「両国が関係改善に向けて互いに1歩ずつ歩み寄った」に過ぎないでしょう。今後、どれだけ懸念事項を解消することができるかが争点になるはずです。

 

安倍首相の示した方向性は悪いものではない

 安倍首相が習総書記との会談で述べた3つの原則は悪いものではありません。

  1. 『競争』から『協調』の関係へ
  2. 「互いに脅威とはならない」という合意を再確認
  3. 「自由で公正な貿易体制」の発展・進化

 “言うべきこと” を中国に告げていますし、この3原則に基づく行為ができている限りは問題とはならないでしょう。

 ただ、懸念点がない訳ではありません。それは「中国にどう約束を守らせるか」という問題です。知財問題や貿易問題、南シナ海への海洋進出など中国は過去に様々な分野でルールを破ってきたのです。

 この懸念は無視できるものではないだけに、どう対処するかが最大の課題と言えるはずです。

 

「中国は地理的にも歴史的にも切り離せない国」という現実

 中国に対して言えるのは「韓国よりも地理的・歴史的に切り離せない国」ということです。この現実を見据えた上で両国関係を構築する必要があると言えるでしょう。

  • 地理的・歴史的に切り離せない国
    → 韓国は中国の “バーター” という立ち位置
  • 『日米同盟』に勝る安全保障は存在しない

 日本は中国と「一線を画す」ことはできるでしょう。これはイギリスが大陸の国々との間で「線引き」をしていることと同じだからです。

 しかし、地理的・歴史的にそれらの国々を切り離すことは不可能です。そのため、ある程度の “付き合い” は絶対に生じるため、良い距離感を保ち、対等な関係を構築できるかが鍵になるのです。

 ただ、安全保障面では中国と良好な関係になることはないでしょう。なぜなら、“中国共産党政権が提供する安全保障” が『日米同盟』を上回ることはないと断言できるからです。

 

日本政府は『一帯一路』への参加には “条件” を突き付けるべき

 中国が期待しているのは「日本が『一帯一路』に参加し、アメリカとの貿易戦争での損害を緩和すること」でしょう。この狙いが透けて見える訳ですから、日本は “理解” を示すのではなく、“条件” を提示しなければなりません

 これまで、日本政府は中国に対して多額の ODA (= 政府開発援助)を行って来ました。ですが、受け取った側の中国からの「感謝」が社交辞令という形でさえ述べられなかったのですから、同じやり方では失敗を繰り返す結果になってしまいます。

 この反省を活かすためにも、日本側は “条件” を提示すべきだと言えるはずです。

 インフラ開発は「元請け」であることが儲けを計上するためには重要ですので、日系企業が収益を得やすい条件を『参加条件の1つ』として飲ませるべきです。また、「知財問題が横たわった状態では良好な関係を築くことは難しい」との懸念を示すべきでしょう。

 少なくとも、北京で “プレゼント” を約束しなかったことはプラスです。一筋縄では行かない日中関係をどのようにマネージメントしていくのかが注目点と言えるのではないでしょうか。