風疹の撲滅には予防接種が重要だが、ワクチン数の限りがある現実を考えると「抗体検査」を促す自民党の姿勢は許容範囲内だろう
NHK によりますと、風疹患者が大幅に増加していることを受け、自民党・小泉進次郎厚労部会長が党所属の国会議員や都道府県連に対して「風疹の抗体検査および予防接種」を受けるよう通達を出したとのことです。
「風疹の撲滅」という点では『抗体検査』を飛ばして、『予防接種』を求めるべきでしょう。ただ、1度に供給できるワクチン数に上限があることを考えると、『抗体検査』を受ける意義はあるはずです。
自民党の二階幹事長と小泉進次郎厚生労働部会長は「国民全体の意識と関心を高めるためにも、風疹の撲滅に率先して取り組みたい」として、7日、党所属の国会議員と各都道府県連に対し、通達を出しました。
通達では、風疹への免疫が十分あるか調べる「抗体検査」を受けるよう促すとともに、検査の結果、免疫が不十分だった場合には、速やかに予防接種を受けるよう求めています。
風疹の病状と感染対策
風疹はウイルス性の発疹症です。病状は「感染したことに気づかない」から「重篤な合併症を発症する」まで幅広いことが特徴です。
風疹の病状で最も厄介なのは「妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性がある」という部分でしょう。妊婦が風疹を罹患すると、出生児が先天的な障害を抱えて生まれる可能性が高くなるからです。
もちろん、女性が妊娠前の段階で感染予防に必要な免疫を保持していれば、先天性風疹症候群を持った出生児となることはありません。しかし、これを実現をすることは難しいことです。
なぜなら、すべての女性が “妊活” に向けた万全の準備をする訳ではないからです。予防接種を受けていても、妊娠が判明した時点で風疹ウイルスの感染予防に必要な免疫がなければ、予防接種を受けなかったことと同じ状況になってしまいます。
そのため、男女に関係なく『風疹ワクチン』を摂取し、風疹の流行を抑制することが大前提になるのです。また、これと並行する形で妊娠を希望する女性は「必要な免疫の確保」にも注力することが理想形と言えるでしょう。
出産適齢期にある “小泉進次郎議員の世代” がワクチン接種から漏れている
風疹はワクチン接種で予防できるのですから、希望者には積極的にワクチンを打つべきでしょう。ただ、全国の医療機関にあるワクチン数には上限数があると考えられるだけに、優先順位を決めることは重要であるはずです。
- 「妊娠を希望する女性」と「その配偶者や同居する家族」
- 未成年者(= 将来の妊婦と配偶者)
- 上記の条件を満たさない風疹ワクチンの接種希望者
「妊娠を希望する女性」が最優先であるべきですし、妊婦と接触する頻度が多い人(配偶者や同居する家族)が2番手に位置しているべきでしょう。ただ、風疹ワクチンの定期接種が義務化されたのは最近のことです。
そのため、小泉進次郎議員の世代がワクチン接種から漏れている現状が国立感染症研究所の報告で明らかになっています。
成人では男性の30代(73~84%)、40代(81~86%)では、女性(97~98%)と比較して11~25ポイント抗体保有率が低かった。20代は男性90%、女性95%と男性がやや低く、50歳以上は男性88%、女性89%で男女差はなかった。
30代や40代の男性配偶者を持つ妊婦は多いと予想されます。そのため、「風疹の抗体検査や予防接種の通達」を受けた議員は事務所の若手スタッフに対し、「風疹の予防接種」を指示することが必要と言えるでしょう。
「最大で4人に1人が抗体を持っていない」なら、『抗体検査』をする意義はあるのでは?
風疹の予防で効果があるのは「抗体を持っていない人にワクチンを接種すること」です。“抗体を保持していない人” を見つけ出す上で『抗体検査』は有効なのですから、使い方次第と言えるでしょう。
「抗体を持っていないが、妊娠を希望する女性」に対して使用すべきワクチンが不足することは本末転倒ですし、そうした女性の配偶者がワクチン接種を希望した場合も同様です。
また、実際にワクチン接種を行う医療機関から「希望者にはワクチン接種」と「希望者には抗体検査をした上で、ワクチン接種」のどちらを推奨した方が効率的・倫理的なのかを調査した上で、対応を求めるべきだとも言えるでしょう。
「安易に薬を処方すること」への批判があるのですから、「安易なワクチン接種」に否定的な見解もあると予想されます。
ただ、「抗体を持っていない人にワクチンを接種すること」を否定する医療関係者はいないはずですから、この点は “落としどころ” を見つければ、問題は比較的スムーズに改善される方向に向かうと言えるのではないでしょうか。