メルケル首相が『院政』の確立に成功、与党 CDU の党首に子飼いのクランプ=カレンバウアー氏が就任
NHK によりますと、ドイツの与党 CDU (キリスト教民主同盟)の党首選挙が行われ、メルケル首相の路線を継承する可能性が高いと目されるアンネグレート・クランプ=カレンバウアー氏が選出されたとのことです。
メルケル首相は『院政』を行うことができる状況が整ったと言えるでしょう。ただ、その一方で「メルケル路線の継続」を選択したことになるのですから、支持率が下げ止まる可能性は少ないと言わざるを得ないでしょう。
ドイツの中道右派の与党「キリスト教民主同盟」は7日、北部ハンブルクで党首選挙を行い、メルケル首相の路線を継承するクランプカレンバウアー氏(56)が決選投票の末、得票率52%の僅差で新しい党首に選ばれました。
クランプカレンバウアー氏は2011年から西部ザールラント州の首相を務め、その手腕が高く評価されて、ことし2月、党の幹事長に抜てきされたメルケル首相の側近です。
メルケル首相は首相の職については任期が終わる2021年まで続ける意向で、党大会の演説で「首相として最後に、国の利益を守りながら党の新たな成功につながるような働きをしたい」と決意を述べました。
“メルケルの操り人形” に期待できることは少ない
クランプ=カレンバウアー氏は2018年2月に CDU の幹事長に抜擢された「メルケル首相の秘蔵っ子」です。中央での経験が圧倒的に不足しているのですから、メルケル首相のサポートが欠かせない状況と言えるでしょう。
要するに、メルケル首相の『院政』が起きただけなのです。
メルケル政権は「難民政策」で有権者からの反発を招き、与党 CDU の支持率を大きく減らす失態をしました。事態を速やかに是正する必要があるのですが、リベラル派に配慮する一方で抜本的な解決策に着手することができていません。
「国の利益を守る」と主張するのであれば、「自称・難民を無制限に受け入れたこと」は失政以外の何物でもありません。この現実を受け入れて改善策を打ち出すことが難しいと目されるクランプ=カレンバウアー氏が党勢を回復させる見込みは低いと言わざるを得ないでしょう。
『自国(= ドイツ)・ファースト』を公言できない国政政党が有権者から支持されるのかを考えるべき
自国のために働くことができない政治家・政党が有権者から見放されるのは当然です。なぜなら、「納税者のほとんどを占める自国民のために働く」という当たり前の部分を見落としているからです。
外国人に示されるのは「一定の配慮」であり、「出身国と同等の行政サービスへのアクセス保証」ではありません。ところが、一部のリベラル派は「外国人への配慮」を主張しているのです。
内容は言語学習サポートに始まり、外国語での行政サービスの提供など多岐に渡ります。この要求は大きな問題です。
移民や自称・難民が現地語を覚える気がないのは放漫に他なりません。「地元住民の価値観を理解する気はない」と宣言していることと同じであり、「共存・共栄を望むのであれば、受け入れ国が移民や難民の価値観に理解を示して変化しろ」と要求していることになるからです。
このような移民・難民にリベラル派は理解を示しているのです。有権者である受け入れ国側の住民が『移民や難民に厳しい姿勢を鮮明にする政党』を支持するのは当然の結果と言えるでしょう。
「メルケル首相に引導を渡せるか」がポイントだが、クランプ=カレンバウアー氏にはできないだろう
与党 CDU (キリスト教民主同盟)が党勢を回復するには「難民政策の責任はメルケル首相にある」と明確にし、方針転換を図る必要があります。これは『難民政策』が原因なのですから、不可欠なことです。
しかし、党首選挙ではクランプ=カレンバウアー氏が(僅差とは言え)勝利しました。
これは「メルケル路線の継続」を意味するのですから、AfD など難民に厳しい姿勢を採る政党にとっては追い風です。また、CDU の姉妹政党である CSU も「CDU のほぼ半数はメルケル路線に NO と言っている」と批判を強めることでしょう。
現状維持を選択すれば、ドイツ・メディアが「極右政党」とレッテル貼りをする AfD が第2党に躍進することは時間の問題です。クランプ=カレンバウアー氏がメルケル路線を踏襲する可能性が高いだけに、支持率低迷の状態から脱することは難しいものと考えられます。
ドイツは「メルケル首相のレームダック化」がこれから急速に進行することでしょう。議院内閣制が採用されている国で『首相』と『第1党の代表』が別人物という「異例の事態」が起きているからです。
CDU の代表がメルケル首相では持たないから、不出馬となったのです。ただ、党首選挙では「メルケル路線の継承」が支持されることになりました。
そのため、CDU/CSU の受難は今後も続くことになると言えるのではないでしょうか。