ユーザー情報へのアクセスを他社企業に許可する facebook に規律を求めるだけでは不十分だろう

 日経新聞によりますと facebook (フェイスブック)がアップルやアマゾンなどテクノロジー系を中心にした約150社とユーザー情報を共有していたことが明らかになったとのことです。

 「規律が求められる」と記事で主張していますが、それだけでは不十分でしょう。なぜなら、現行のルールや規律では「ユーザー情報のやりとりが行われていた」のです。

 プライバシー情報を流出させていた疑惑がある訳ですから、規律を守る気のないテック系企業に対する処分を科すプロセスを考えなければならない時期に来ているはずです。

 

 米フェイスブック(FB)が、アップルなど約150社とユーザーデータを共有していたことが判明した。ユーザーの知らない間に個人情報が第三者に悪用されていれば問題だ。FBはデータ融通で他社と協調しながら支えあう経済圏を築いてきた。20億人のユーザーを抱える巨大な情報交差点になった今、そこに規律が求められている。

 どの企業も「ユーザーの詳しい情報」を欲するでしょう。なぜなら、販促活動の効率性が上がり、予算を効果的に使うことが可能になるからです。

 飲酒をしない消費者に「ビールのプロモーション」をしても効果はありません。“商品を購買してくれる可能性が高い消費者” に重点的な働きかけが可能になれば、それだけ予算の無駄が削減できるのです。

 今後もユーザー情報を “交換” する企業は後を絶たないと断言できると言えるでしょう。

 

ユーザー情報に “第三者の企業” がアクセスできる時点で、情報流出が起きていることと同じ

 フェイスブックでは「承認した友人まで」や「友人の友人まで」などという形で『情報の公開範囲』を設定することが可能です。ただ、入力された情報にユーザーやフェイスブック以外の第三者がアクセスできている点で問題と言えるでしょう。

 なぜなら、プライバシー情報を覗き見していることと同じだからです。

 『ユーザー情報』を他の企業と “共有” するなら、共有相手の企業名を「プライバシー規約への合意を要求する時点」で視覚的に明示すべきです。長々と文書で記載された利用規約の中に「研究開発のために第三者企業と秘密保持契約を締結した上でユーザー情報を提供する場合がある」と書くだけでは不十分です。

 これは「サービス向上」や「利便性の改善」との理由でユーザーの個人情報を他社と交換仕放題となってしまうからです。現行のビジネスモデルそのものを見直すべき時期に来ていると言えるでしょう。

 

“姑息な手口” を使う IT 企業は “キレイゴト” を述べ続けることで『実態』を隠して来た

 “姑息な手口” を使うのは IT 企業だけではありません。様々な業種の企業がこれまで使って来たことであり、IT 業界のプラットフォーム企業だけに限った話ではないのです。

 ただ、理想論を掲げて『実態』を隠蔽してきたことが問題なのです。これは既存メディアが「自分たちのことを棚にあげて他者を批判してきたこと」と同じです。

 IT プラットフォーム企業の『実態』が既存メディアが有していた性格と似たようなものであることが徐々に明らかになってきており、利用者からの目線は厳しくなるでしょう。

 フェイスブックは「実名登録」を呼びかけておきながら、情報を第三者と “共有” していたのです。「フェイスブックのユーザーアカウントで利用できるサービス」とは立ち位置が明らかに異なっており、この違いを周知徹底する気がないなら、制裁を科されたとしても世間の同情は寄せられないでしょう。

 

 “ユーザー情報を紐づけられても良いと考える範囲” の決定権は各ユーザーが有しているべきです。フェイスブックなどは「その決定権は企業にある」と考えているから、ユーザー情報の “共有” を平然と行えるのでしょう。

 「街中でメディアからの取材に応じたら、マスコミ間で個人情報が共有されていた」という事態が発生すれば、ほとんどの人が異様と感じるでしょう。アメリカの IT 企業がやっている “共有” はそれと同じであると言えるのではないでしょうか。