北朝鮮がケソン(開城)の南北共同連絡所から撤退を開始、瀬戸際外交に戻る可能性が高まる

 CNN によりますと、北朝鮮がケソン(開城)にある南北共同連絡所からの撤退を始めたとのことです。

 北朝鮮は韓国に「外貨(=ドル)獲得事業の再開」を強く要求しており、それが実現されなかったことに対する反発の面もあると言えるでしょう。瀬戸際外交に戻ることが予想されますが、従北派の韓国政府がどのような対応を行うかも注目点だと言えるでしょう。

 

 韓国統一省は22日、北朝鮮の開城(ケソン)に昨年開設した南北共同連絡事務所から北朝鮮が撤退を始めたと発表した。

 統一省によれば、撤退は北朝鮮の上層部が決定した。ただ、韓国側が事務所に残ることに問題はなく、実務的な事項は追って連絡するとも伝えてきたという。

 同事務所は昨年の歴史的な南北首脳会談の後に創設され、両国の和解と和平プロセス継続の象徴となっていた。

 韓国ムン・ジェイン政権は外交リソースのほとんどを「対北朝鮮外交」に費やしています。そのため、それ以外の案件は基本的に軽視されている傾向にあります。

 南北共同連絡事務所は北朝鮮に理解を示すムン・ジェイン大統領の “肝入り” であり、これが頓挫することは韓国政府にとって避けたい事態だと言えるでしょう。

 

北朝鮮には「制裁解除」と「外貨獲得」の思惑があり、『融和政策を掲げる韓国』は利用価値がある

 北朝鮮の狙いは「制裁解除」と「外貨獲得」です。韓国との関係性はそれほど重要視されておらず、キム・ジョンウン委員長の権力基盤が盤石であることが重要なのです。

 したがって、『融和路線を掲げるムン・ジェイン大統領』は「北朝鮮の利する働きをするカード」と見なされているに過ぎないでしょう。

 ムン・ジェイン大統領は自らが掲げた政策を実現するために、「北朝鮮に動いてもらう必要」があります。一方の北朝鮮には「ムン・ジェイン大統領のために自分たちが汗をかく必要はない」のです。

 そのため、韓国側は北朝鮮に足元を見られる結果となり、北朝鮮の揺さぶりに右往左往する状況を招いてしまっているのです。

 

「韓国を “テコ” にした交渉」で効果を得られなかった以上、北朝鮮には『瀬戸際外交』しか残されていない

 北朝鮮は「非核化の段階に応じた制裁解除」を要求していますが、過去に合意事項を何度も反故にしてきたことが理由でアメリカが認めず、交渉は決裂しました。

 『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』を北朝鮮が実現すれば、制裁は解除されます。しかし、これは北朝鮮側が飲むことはないでしょう。

 その結果、「北朝鮮は『瀬戸際外交』に戻る」と予想されるのです。ただ、瀬戸際外交に戻ったところで、得られる効果はほとんどないと言わざるを得ません。

 以前は「話し合いで解決できるのでは」との “希望的観測” があったからです。現状は「米朝首脳会談で北朝鮮は非核化の意思がないことを示した」上で、『瀬戸際外交』で自らの利益を要求しているのです。

 「話し合いをしても時間の無駄」なことが明らかな相手の『瀬戸際外交』に慌てふためく政府はいないでしょう。「経済制裁」を解除する理由もありませんし、逆に制裁を強化する理由となるだけです。

 

 北朝鮮の首が絞まるだけであることを認識できていないのは致命的と言えるでしょう。アメリカは「北朝鮮の制裁破り」に対して厳しい姿勢を鮮明にしており、「アメリカと北朝鮮のどちらに付くのか」という “踏み絵” を迫られていると言っても過言ではありません。

 日本政府はアメリカの方針に習い、「北朝鮮の制裁破りに加担する韓国企業に対する二次制裁」を行わなければなりません。そのような厳しい姿勢を実際に採り続けない限り、北朝鮮や韓国の横柄な態度が続くことになると言えるのではないでしょうか。