インドネシアが人口集中を理由に首都機能移転を閣議決定、カナダやオーストラリアのように分散できるかが課題

 NHK によりますと、「インドネシア政府が首都機能を10年ほどかけて移転する」と閣議決定したとのことです。

 計画を具体化させるのはこれからですが、実行に移される可能性は大いにあると言えるでしょう。なぜなら、首都ジャカルタに人口が極端すぎるほど集中している弊害が無視できないレベルになっているからです。

 

 インドネシアの首都ジャカルタは人口が1000万余りで、周辺を含めた首都圏では3000万を超え、人口の過密や交通渋滞、それに地下水のくみ上げによる地盤沈下なども大きな課題になっています。

 こうした中、インドネシア政府は29日、ジャカルタの首都機能を移転させることを閣議決定し、今後、移転先の選定や経費調達についての基本計画を作成し、10年ほどかけて移転させるとしています。

 インドネシアの人口は約3億人弱ですが、首都ジャカルタがあるジャワ島に半分が住んでいます。

 人口密度が高いことで昔から過剰人口が問題になっており、限界に達しつつあることから首都機能移転の計画が持ち上がったのでしょう。スマトラ島などへの移住促進も効果を産んでいない状況では止むを得ないと思われます。

 

地下水のくみ上げすぎによる地盤沈下はかなりの問題

 人口が流入しすぎたことで交通渋滞が起きることは世界中で起きています。これは日本国内でも起きていることであり、沖縄(= 那覇)が同様の問題を抱えていると言えるでしょう。

 ただ、「地下水のくみ上げで地盤沈下が起きている」という現状は大きな問題です。

 これはジャカルタの人口が自然に供給できる生活用水の量を上回っていることを意味しており、限界を迎えていることは否定できません。地下水以外の水源を確保できれば良いのですが、それにも多額の費用が必要となります。

 政策で首都圏の人口増加に歯止めをかけることができないなら、首都機能移転で「増加のペースを緩和させる」ことは合理的な判断です。どのような移転計画になるのかが注目点と言えるでしょう。

 

「最大都市 = 首都」ではない先進国は複数存在する

 国内の最大都市に首都が置かれる国が大多数であることは事実です。ただ、そうではない先進国も複数存在するのです。

  • アメリカ
    • 首都:ワシントン(約70万人)
    • 最大都市:ニューヨーク(約862万人)
  • カナダ
    • 首都:オタワ(約94万人)
    • 最大都市:トロント(約275万人)
  • オーストラリア
    • 首都:キャンベラ(約41万人)
    • 最大都市:シドニー(約523万人)

 アメリカ、カナダ、オーストラリアは「政治の中心」と「経済の中心」がそれぞれ別の都市に置かれています。これらの国々を参考にして首都機能の移転計画を立案すれば、成果を得ることは十分に可能でしょう。

 『計画都市』を上手く具体化させられるかが成功の鍵です。

 

首都機能が移転したとしても、ジャカルタが重要な都市であることに変わりない

 仮に、インドネシアの首都機能がジャカルタから移転したとしても、重要度にそれほどの変化は生じないでしょう。

 まず、世界でも屈指の人口を抱えていますし、それだけで巨大な市場があるからです。イスタンブール(トルコ)のように重要性は保たれることが予想されます。

 したがって、水不足に対応する淡水化工場や上下水道の整備という点での商機はあると言えるはずです。日系企業が新たに進出できる余地はある訳ですから、有望な市場であることに変わりはないでしょう。

 また、ジャカルタには ASEAN (= 東南アジア諸国連合)の本部が置かれていますし、国連本部のあるニューヨークの立ち位置を東南アジアで確立することが現実的な目標になります。

 

 首都機能移転は無謀な要求ではありませんし、政治的に解決することが可能な課題と言えるでしょう。インドネシア政府がどれだけ現実的な移転計画を提示するのかが大きな注目点になると言えるのではないでしょうか。