プラスチック海洋投棄の主要発生源である ASEAN、プラごみ削減に向けた行動指針を採択
NHK によりますと、ASEAN (=東南アジア諸国連合)が6月22日に行われた関連会議でプラスチック等の海洋ごみの削減に向けた行動指針を採択したとのことです。
“プラごみの海洋投棄” は東南アジアが主要な発生源になっています。そのため、削減に向けた方向性が決まったことは評価されるべき点と言えるはずです。
ASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議は22日、タイの首都バンコクで、加盟10か国の首脳や閣僚が出席した関連会議が開かれ、プラスチックなどの海洋ごみの削減に向けて加盟国の連携強化をうたった「バンコク宣言」と行動指針を採択しました。
この中では、加盟各国が海洋ごみの削減に向けて法規制を強化していくことや、プラスチックごみの削減、再利用、それにリサイクルを推進することを盛り込んでいます。
中国と東南アジアがプラスチックごみの海洋投棄の主要発生源
欧米のセレブなどが社会問題として取り上げたことで注目された「プラスチックごみの海洋投棄」ですが、主要発生源は中国や東南アジアです。
データの元ネタは『Plastic waste inputs from land into the ocean』というレポートで、海洋に流出したプラスチックごみ発生量は2010年の推計値(PDF)です。
- 中国:132〜353 万トン
- ASEAN 加盟国:140〜373 万トン
- インドネシア:48〜129 万トン
- フィリピン:28〜75 万トン
- ベトナム:28〜73 万トン
- タイ:15〜41 万トン
- マレーシア:14〜37 万トン
- ミャンマー:7〜18 万トン
- アメリカ:4〜11 万トン
- 日本:2〜6 万トン
上位20位までに入っている国の海洋投棄量を計算すると、ASEAN 諸国から投棄される海洋プラスチックごみの方が中国よりも多いのです。対策を講じる必要があるのは当然と言えるでしょう。
「20位のアメリカ」や「30位の日本」を吊るし上げたところで海洋投棄問題は解決しない
プラスチックごみの海洋投棄問題ではアメリカ(20位)や日本(30位)が “槍玉” に挙げられていますが、アメリカと日本の推定投棄量は合算してもミャンマー(17位)の推定量に満たないのです。
また、北朝鮮が 5〜12 万トンの推定投棄量で19位に付けています。問題として本気で取り組むのであれば、こうした国にも対策を強く要求する必要があると言えるでしょう。
しかし、そうした要求はほとんどない状況です。
「プラスチックごみが管理されていない割合の高い国」からの海洋投棄量が多くなっている傾向があるのですから、「ごみを適切に管理・処分せよ」とデータを根拠に批判をする必要があります。
それをせずに「プラスチックの利用を減らせ」と主張するのであれば、第2・第3の海洋プラスチック投棄問題が起きることになるでしょう。環境問題に取り組むなら、“場当たり的” は避けるべきだと言えるでしょう。
ASEAN で決まった行動指針がどれだけ遵守されるかが注目点
海洋投棄量が少ない国に対策を求めたとことで問題が改善することはありません。“対策を求めた人たち” が「活動の成果」として誇ること以外の効果が得られることはないでしょう。
プラスチックが不使用になることで生じる “しわ寄せ” が消費者に行くだけで、海洋に大量廃棄されている現状はほとんど維持されているからです。
「世界的な問題」と位置付けるなら、中国や ASEAN に対策を強く要請し続けることは不可欠です。また、南アジア諸国にも対応を要求する必要があります。
「日本も取り組むべき問題」とするなら、中国や韓国・北朝鮮による海洋投棄を厳しく批判することが絶対条件です。それすらできていない現状で、日本だけがプラスチックの利用を制限することは “間抜けな結果” となるでしょう。
データの伴わない環境問題への取り組みを積極的に行うことは経済成長を妨げる恐れがあります。
「科学」より「感情」が優先されるのは問題です。行動指針を決定したプラスチックごみの海洋投棄の主要発生源である ASEAN が状況を上手く改善させることができるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。