日本の芸能人が海外(主にアメリカ)と比較して政治的な発言を自重し続けるのには合理的な理由がある

 タレントのローラさんが「辺野古の埋め立て反対」をアメリカ・ホワイトハウスに嘆願するための署名を自身の SNS で呼びかけたことに端を発する騒動が起きています。

 日本の芸能人は海外(= 主にアメリカ)と比較すると、政治的な発言を自粛していると言えるでしょう。なぜなら、「自重した方がメリットが大きい」という理由があるからです。その理由を順を追って説明することにしましょう。

 

政治的な発言に積極的なタレントの “商品価値” は下落する

 まず、積極的に政治的な発言をするタレント・芸能人の商品価値は下落します。なぜなら、顧客対象を狭めている行為をしていることと同じだからです。

 政治問題では賛否両論が起きることが普通です。つまり、ある政治問題で自らの意見を表明すると、その意見を支持する人々以外から反感を持たれるリスクがあるのです。

 もちろん、『言論の自由』が保証されているのですから、タレントや芸能人が「政治問題に対して自らの意見を表明する自由」はあります。そのため、ローラさんには「辺野古の埋め立て反対」があると言えるでしょう。

 しかし、忘れてはならないのはスポンサーである企業側にも『言論の自由』の権利が保証されているのです。要するに、「いかなる政治的意見と距離を取る」という価値観を持つ企業の存在も認めなければならないのです。

 特定の政治的思想に共感する姿勢を鮮明にするほど、政治団体と変わらなくなります。この認識を持っておく必要があります。

 

「アメリカの市場規模は日本より大きい」という現実

 次にアメリカで芸能人やセレブが政治的な発言を積極的に行うのは市場規模が大きいからです。

  • 日本市場:
    • 人口:約1億2000万人
    • 言語:日本語
  • アメリカ市場:
    • 人口:約3億2000万人
    • 言語:英語
      • カナダ:約3600万人
      • イギリス:約6600万人

 アメリカの市場は日本の約3倍です。また、英語圏のカナダやイギリスもカウントすると、その規模は4倍になります。

 リベラル派、保守派の支持率はどちらも約4割は固く、絶対値では約1億2800万人です。つまり、アメリカで政治的発言をしても、日本の人口と同じだけの市場規模が残っているのです。

 また、都市部やハリウッドという “日本のメディアが良く取り上げるアメリカではリベラル派” がほとんどです。そのため、「アメリカではリベラル派の政治的主張が一般的に行われている」という幻想が映し出される結果になっているだけなのです。

 

海外ではリベラルやセレブによる “アピール合戦” が熾烈になっている

 リベラル派が(アメリカなどで)持つ市場規模は大きいのですが、競合相手が数多くいます。そのため、リベラルを名乗るセレブやタレントが挙って「自分はリベラル的な活動にどれだけ邁進しているか」をアピールする競争が起きているのです。

 最近では「移民への理解」が “トレンド” と化していると言えるでしょう。「海洋プラスチック問題」もその1つに過ぎません。

 問題解決に取り組んでいるリベラルは少ないでしょう。なぜなら、ほとんどのセレブやタレントはアクセサリー感覚で歩調を合わせているだけで、問題解決に向けてプロジェクトを立ち上げ、進捗や成果を報告している人はほとんどいないからです。

 アメリカより市場規模が小さく、言語が日本語で海外展開が難しい環境で人気商売をする芸能人が政治的発言をするメリットは存在しないも同然です。自らの商品価値を下げる行為なのですから、自重するという判断が働くのは当然と言えるでしょう。

 

「自然保護」を訴えながら、「野生動物への餌付け」をしたローラは自らの商品価値を下げた

 今回の騒動で『ローラさんの商品価値』は下がったと言わざるを得ません。ただ、商品価値が下がった理由は「政治的発言」ではなく、「自然保護を訴える人物が野生動物に餌付けをして生態系の破壊を助長した」という行為が原因です。

 「言っていること」と「やっていること」に矛盾が生じていることをタレント本人が気づいていないのですから、リスクが高いと判断されるでしょう。

 「友人の懐妊祝いで乾杯したよ」と友人とのツーショットをアップするというやらかしをする恐れがあるのです。現行契約が満了すると同時にスポンサーが距離を取り始めることが予想されます。

 また、スポンサー企業から締め上げられるのは『広告代理店』でしょう。「タレントが政治的発言をすることで弊社の企業価値は上がるのか」と “説明” を求められることが見えているからです。

 

 タレントや芸能人にも政治的意見を表明する自由はあります。ただ、“人気商売” である以上、市場規模を自ら小さくする行為をするほどスポンサーから敬遠される事態を招きます。

 「スポンサーは黙って金だけを出せ。CM 契約中のタレントがどのような政治的発言をしようが一切の口出しをするな」という身勝手な主張は通用しないという現実を認識する必要があると言えるのではないでしょうか。