中国の影響力拡大を牽制する新法がアメリカで成立し、両国の対立関係は続く

 日経新聞によりますと、アメリカで中国の安全保障や経済面での台頭を封じ込める目的の法案が成立したとのことです。

 アメリカの「中国に対して圧力をかける」という姿勢は変わる見込みはないと言えるでしょう。『中国主導のルール作り』に否定的な法案を全会一致で成立させており、2019年以降も方針が変わることはないと考えられます。

 

 トランプ米大統領は31日、アジア諸国との安全保障や経済面での包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保証推進法」に署名し、法律が成立した。

 (中略)

 新法は議会の対中強硬派が主導し、18年4月に上院に提出された。12月上旬の上院での法案採決では野党・民主党を含む全ての議員が賛成した。中国の安保・経済面での台頭に対する米議会の危機感を象徴する法律といえる。

 米中貿易協議の期限は3月1日です。そのため、トランプ大統領に「安易な譲歩は容認できない」とのメッセージを議会が全会一致で発したことと同じと言えるでしょう。

 

「上院での法案採決は与野党の全ての議員が賛成」という現実

 成立した法案に「中国を牽制する狙い」があると言える理由は以下の項目が明記されているからです。

  • 台湾への防衛装備品の売却推進
  • 南シナ海での『航行の自由作戦』の定期的な実行
  • 東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに今後5年間で最大15億ドル(約1650億円)を拠出

 中国を強く意識した内容となっており、この法案がアメリカ議会上院では全会一致で賛成された現実を把握しておく必要があるでしょう。

 「反トランプ」よりも「中国の台頭を懸念」した内容となっています。『親中』に方針転換をしようにも、成立した『アジア再保証推進法』を廃案にする必要が求められるため、親中派が発言力を強めるのは難しいと言わざるを得ないでしょう。

 

“シーレーン” が重要な日本も他人事では済まされない

 日本は石油や天然ガスといったエネルギー資源を輸入に頼っており、輸送経路である “シーレーン” を自由に航行できる状態を確保することが重要です。

 アメリカは東南アジア諸国への海洋警備や軍事訓練に資金を拠出する法案を成立させましたが、日本も他人事ではありません。なぜなら、シーレーンの航行が阻害されると、経済に大きなマイナス影響が生じるからです。

 少なくとも、海洋警備(= 海上保安庁の仕事)においては ASEAN などの東南アジア諸国に何らかの形で貢献する必要があるはずです。資金拠出でも、訓練でも、使用していた警備艇の譲渡という形でも良いでしょう。

 日本から距離のある場所で起きている出来事であるため、当事者意識を持ちにくい事案なのですが、「他国任せ」では済まされない事態にまで発展していることを認識しておく必要があります。

 

中国政府に擦り寄ることは日本にとってはリスクが大きいだけ

 アメリカが「覇権国」の地位を手放すなら、日本が中国政府に擦り寄る意味はあるでしょう。ただ、アメリカがそうする可能性はゼロに近い状況です。

 そのため、中国を友好国と位置づけた外交政策を採ることは「日本にとって安全保障的にも経済的にもリスクでしかない」と言わざるを得ません。

 日米同盟は最重要視されるべきですし、『法と秩序』を平気で無視する中国政府の方針を支持するメリットはないからです。日本の「安全保障」と「経済政策」を露骨に脅かす行為を続ける中国の姿勢を支持したところで、日本が得られるリターンは皆無に近いと言わざるを得ません。

 安倍政権が「日米同盟重視」の外交を行っているから、“逆張り” の意味で中国に接近するようでは話にならないのです。

 「アメリカと対等な二国間関係を前提にした『日米同盟』を重視」というスタンスを採ることも可能であり、“まともな政策” を野党やマスコミがどれだけ主張することができるかが注目点と言えるのではないでしょうか。