TPP と EPA の発効でワイン・チーズ・牛肉などの輸入量が対象国から大幅増となったことは効果がある証拠
NHK によりますと、TPP や EPA を締結した国からのワイン・チーズ・牛肉などの輸入量が大幅に増加する貿易統計が発表されたとのことです。
経済連携協定による効果が明らかに出ていますし、関税が引き下げられることは消費者にとってのメリットが大きいと言えるでしょう。また、アメリカに対する “強烈な揺さぶり” にもなりますので、良い成果が示されていると言えるはずです。
財務省が発表した3月までの品目ごとの貿易統計によりますと、EUからの輸入品では、2月と3月の2か月間でワインが去年より32%増えたほか、チーズも14%増加しました。
また、TPPに参加するカナダやニュージーランドからの牛肉の輸入も、1月から3月までの3か月間で、どちらもおよそ2倍に増えています。
経済連携協定が発効したことで幅広い品目で関税が下がり、卸売業者などが輸入を増やしていることが背景のひとつになっています。
「良い商品が安く手に入る」は消費者にとって大きい
TPP や EPA で関税が撤廃されることは消費者にとって朗報です。なぜなら、「良い商品が安く入手することが可能になる」からです。
ワイン・チーズ・牛肉などの農産物が「以前よりも安価」になっているのです。「これを機に一度試してみよう」と考える消費者が商品を手にするのですから、消費活動の喚起にもなっていると言えるでしょう。
どの商品を選ぶかは消費者が決めることであり、生産者は「消費者のニーズを捉えること」が最大の自衛策になります。
消費者の口に合わない商品は「叩き売りであっても購入してもらえない」のです。「ニーズを捉えた商品をリーズナブルな価格で提供する」か「ブランド化するなどの差別化を図る」かのどちらに比重を置くことが重要と言えるでしょう。
「TPP と EPA による効果」は「アメリカ政府への牽制」として大いに活用できる
発効した TPP や EPA による効果は年数が経過するごとに大きくなります。これは「関税が段階的に引き下げられるから」です。
一方、TPP から脱退したアメリカ産の農産物には従来と同じ関税が適用されています。牛肉には 38.5% の関税がかかったままであり、市場での競争力を失っている状況です。
アメリカの農家が TPP 離脱による影響を最も大きく受けており、アメリカとの二国間交渉が進行中の日本政府にとっては “カード” になります。なぜなら、TPP と同程度の関税にまで引き下げられなければ、日本市場での競争力を失ったままだからです。
2019年4月以降は「2段階目の 26%」に関税が引き下げられているのですから、アメリカ側は「遅れを取り戻すこと」が必要になります。遅れたままでは「ハンデを背負ったままでの競争を強いられる」ことになるのです。
この点については「TPP や EPA の関税水準まで追いつかせる」という “譲歩カード” を日本政府が交渉で使えるため、切り札として交渉に臨むべきでしょう。
関税を使って国内の産業を守ることは重要です。しかし、過剰に保護されている場合は損害を被るのは消費者なのです。
生産者の過剰な保護は是正に向かうべきですし、「コストパフォーマンス」は農業にも問われるべきでしょう。TPP や EPA を機に日本国内の農業もアップデートすべき時期が訪れていると言えるのではないでしょうか。