朝日新聞、土地売却の合意内容を撤回した所有者を「国に縁を切られた」との肩入れ記事を掲載する

 アメリカ軍空母艦載機の陸上離着陸訓練は主に硫黄島で行われていますが、距離があるため移転が検討されています。

 移転先として馬毛島(鹿児島県西之表市)が有力となっており、2019年1月には地権者との合意が形成されていました。ところが、地権者の代表が変わったことで関係が悪化。これに対し、朝日新聞は「国に縁を切られた」と地権者側に肩入れする記事を掲載しています。

 合意内容を反故にした側に理解を示す姿勢は批判を呼ぶ行為であることを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

朝日新聞が報じた記事の内容

 朝日新聞は5月8日付の記事で次のように報じました。

画像:朝日新聞が報じた記事

 米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地とされる馬毛(まげ)島(鹿児島県)について、島の大半を所有するタストン・エアポート社(東京都)が、防衛省との間で進めていた売却交渉を打ち切ると同省に通告したことが分かった。両者は1月、160億円で売買すると合意したが、2月に同社の社長が交代した後、関係が悪化。今春ともされていた正式契約は見通せなくなった。

 なぜ、合意に達していた案件が「交渉打ち切り」になったかと言いますと、地権者である企業内で “お家騒動” が起きたからです。

 今年1月に防衛省と土地売却で合意に達した当時の社長は2月の臨時株主総会で解任。“当時の社長の前任者” が社長に復帰したことで防衛省との関係が悪化し、交渉そのものが打ち切られる結果となったのです。

 「前任者の決定は無効」とする “韓国式外交戦術” が用いられた事案だと言えるでしょう。

 

馬毛島の地権者は “橋下徹氏が沖縄に推奨する交渉戦術” を使っている

 ちなみに、馬毛島の土地購入に関する時系列は下表のとおりです。

1995年 立石建設(現ダストン・エアポート:立石勲社長)が馬毛島の大半を所有地とする
2007年 硫黄島に代わる訓練地として検討との報道が出る(国の評価額は40億円)
2012年 立石勲社長が「島を中国資本に売却する」、「滑走路を作るのに140億をかけた」と主張
2019年1月 立石薫社長が「160億円で防衛省に売却する」ことで合意
2019年2月 臨時株主総会で立石薫社長が解任。立石勲氏が社長に復帰
2019年5月 国が(400億円台の買取を求める)立石勲社長に対して「交渉打ち切り」を通告

 馬毛島の大半を購入したのは立石建設(現ダストン・エアポート)を率いる立石勲社長です。「FCLP の代替候補」として持ち上がると、転売を目論んだ開発を行い、揺さぶりをかけたという経緯があります。

 その中で「中国資本に島を売却する」と脅すことで交渉を有利に進めており、沖縄に対して「中国を持ち出して国との交渉を有利すべき」と主張する橋下徹氏はここからヒントを得たのでしょう。

 ただ、売却交渉が停滞する中でダストン・エアポートが破産。債権者から免責されたことで企業活動は継続できましたが、社長は立石薫氏へと交代しました。この時に防衛省と売却で合意に達したのですが、1ヶ月後の臨時株主総会で薫氏が失脚立石勲氏が社長に返り咲いたのです。

 立石勲社長は「(自社債務の肩代わりも含めた)400億円」を打診するも、防衛省側は地権者の提案を拒否。その結果、「交渉打ち切り」が通告されたのだと考えられます。

 

「合意内容を反故にした側」に理解を示す朝日新聞の一貫した姿勢は “ある意味で” 称賛に値する

 前任者が決定した合意事項に対する事務手続きを継続していれば、「交渉打ち切り」を通告されることはなかったでしょう。しかし、地権者側は当時の社長を失脚させることで “ちゃぶ台返し” を狙ったのです。

 「パク・クネ前大統領が結んだ慰安婦合意はムン・ジェイン現政権が覆しても良い」と主張していることと同じです。

 合意事項を覆した側に対し、「相手から縁を切られた」と同情を煽っている時点でメディアとして問題と言わざるを得ないでしょう。ただ、朝日新聞が “合意の内容を反故にした側” に一貫して肩入れしている姿勢は褒める必要があります。

 なぜなら、新聞社としての方針が堅持されているからです。「日本政府が損失を受ける裏切り・背任行為は支持する」とのメッセージを送っているのですから、そういう編集方針を基に掲載された記事ばかりであることを世間に知らしめているからです。

 

 自らの経営方針によって交渉が頓挫したのであり、自業自得であると言わざるを得ないでしょう。ゴネ得を狙ったものの、相手が席を立ったに過ぎません。

 これに対し、ゴネた側に理解を示す朝日新聞の本性が現れた記事と言えるのではないでしょうか。