トランプ大統領、事前の合意事項を反故にしようとする中国に対して「関税の引き上げ」を表明

 日経新聞によりますと、米中貿易協議が続く状況下でアメリカのトランプ大統領が「中国製品の関税引き上げ」を表明したとのことです。

 経済戦争が本格化する恐れがある決定ですが、アメリカ側が態度を硬化させた原因は「中国側の姿勢」です。当初に提示していた譲歩内容を土壇場で撤回することで交渉を優位に運ぼうとした姿勢が裏目に出る形となりました。

 騙し合いをした際のカードはトランプ大統領の方が強力なのですから、中国側の交渉方針は良いとは言えないでしょう。

 

 トランプ米大統領が中国製品の関税を10日に引き上げると表明し、9日再開する米中貿易協議は制裁回避に向けたぎりぎりの交渉となる。米国の態度を硬化させたのは、中国の産業補助金を巡る問題だ。補助金は中国の「国家資本主義」の根幹をなすが、米国は撤廃を求める。中国は高関税を受け入れるか、弱腰批判も覚悟して譲歩するかの選択を迫られる。

 (中略)

 米企業に技術移転を強要するのを禁じる法制度や、クラウドコンピューター事業の市場参入、医薬品のデータ保護など細かい分野で折り合っていないという。

 

制裁で「安価な商品の入手は困難になる」が、「国内製造業は守られる」という現状

 米中貿易協議は『制裁』が発動するかが注目点です。現状は大量の中国製品がアメリカ市場に流入しており、その流れが制限されることで中国企業と取引関係にある企業にも影響が生じることで「経済の低迷」が起きると懸念されているのです。

 ただ、経済への悪影響は限定的でしょう。なぜなら、アメリカ市場での購買ニーズは維持されるはずだからです。

 鉄鋼製品に関税がかけられましたが、アメリカで鉄鋼製品に対する需要は変化していません。商品単価が上がったことでコストや価格は増加しますが、国内製造業は守られるのです。

 “純粋な市場競争” において価格面や品質面で太刀打ちできない国内産業を守るために関税を引き上げることは愚策と言わざるを得ません。しかし、国家が補助金を投入し、市場に「ダンピング価格の製品」を出してくる相手と競争を強いられていることを放置する方が問題です。

 したがって、市場の競争環境を歪めている姿勢を改めようとしない中国に対するトランプ大統領の方針は間違ってはいないと言えるでしょう。

 

技術移転の強要や知財保護に消極的な中国の態度は批判されるべき

 日経新聞が記事で報じている内容を確認しますと、中国は「譲歩せずに制裁解除を狙う」という強行姿勢に出ていることが見えて来ます。

  • 産業補助金の撤廃に難色
  • 技術移転を禁じる法整備の骨抜きを狙う
  • クラウドサービスや医療データ保護で隔たり

 「国家による補助金」、「技術移転の強要」、「知財保護に消極的」といった中国が批判されてきた “本丸” に該当する項目に対して米中両国での合意が形成されていません。

 中国政府の方針がアメリカの関税引き上げを起こした大きな要因なのですから、現状維持の姿勢を保っている以上は「さらなる関税の引き上げ」が起きることは当然の成り行きと言えるでしょう。また、中国姿勢の方針を支持することも難しい状況です。

 「経済に悪影響が出る」とアメリカ側を批判したところで、「市場の不公平な競争環境を維持するのか」との突き上げを受けることになるからです。この批判に正面から反論できない時点で結果は見えていると言えるでしょう。

 

 中国には強大な市場がありますが、当局が「(企業が自らの資本で研究・開発した)技術の開示および移転」を強要しているのです。その一方で政府からの補助金を得た中国企業が国外市場に攻め込んでいるのです。

 不公平な状況が是正されることを歓迎する人が多いと思われます。米中両国が “落とし所” に着地するのか、それとも互いに強硬な姿勢を貫き通すのかが注目点と言えるのではないでしょうか。