NHK、政府答弁の「受信料の支払い義務とスクランブル化に否定的」を大きく取り上げるも「ネット受信料」が質問されていた事実は伏せる

 NHK が15日に「NHKと受信契約結んだ人は受信料支払う義務がある」との答弁書が閣議決定されたニュースを報じていましたが、質問主意書と答弁書が衆議院の公式ウェブサイトで公開されました。

 現行法を解釈した答弁となっており、『NHK から国民を守る党(= N国)』に票を投じた有権者の不満を解消するまでには至っていないと言えるでしょう。

 

 政府は15日の閣議で、NHKの受信料をめぐる質問主意書に対し、NHKと受信契約を結んだ人は、受信料を支払う義務があるとする答弁書を決定しました。

 (中略)

 一方、今後の受信料負担の在り方については、「放送をめぐる環境変化や、国民・視聴者から十分な理解が得られるかといった観点も踏まえ、中長期的に検討すべき課題だ」としています。

 

質問主意書を提出したのは立憲民主党の中谷一馬議員

 NHK のあり方に対する質問主意書を提出したのは立憲民主党の中谷一馬衆院議員です。全11項目に及ぶ内容ですが、主要な内容は以下の3点と言えるでしょう。

  1. N国の代表や松井大阪市長・吉村大阪府知事が「受信料の支払いに否定的な見解」を示しているが、 政府としてどう対応するのか
  2. スクランブル化への見解
  3. 『ネット受信料』の導入について

 「受信料の支払い義務」に言及した答弁書が閣議で承認されたことを NHK が大きく取り上げています。

 これは「『N国』の立花代表が「受信料を踏み倒す」と宣言したことに対し、政府としてどう対応するのか」との質問への答弁です。現行法では「受信契約を締結する義務」が明記されており、それに沿って受信料を支払うべきとの回答になるのは当然と言えるでしょう。

 しかし、注目すべきは『スクランブル化』や『ネット受信料』に対する質問が行われている部分です。

 

中谷議員は「NHK の一部スクランブル化」を質問している

 中谷議員は「『災害時の緊急報道やEテレの教育・教養番組、政見放送など公共性の高いコンテンツや社会的に必要ではあるが民間では採算が合わないコンテンツ』をノンスクランブルで提供し、それ以外はスクランブル化で民放とコンテンツを競い合うべきでは?」と質問しています。

 これは妥当な主張でしょう。なぜなら、上述の主張を堂々と掲げる政党が現れると、『N国』に流れた有権者の大部分を吸収できるからです。

 しかし、政府の答弁は「日本全国で受信できるよう、豊かで良い放送番組による国内基幹放送を担う公共放送としての社会的使命を果たしていくことが適当」との内容でした。

 答弁書は NHK の主張を代弁しているだけであり、『N国』の主張内容に正当性を付与するだけでしょう。「部分的なスクランブル化」にさえ否定的な NHK の姿勢に理解を示しており、利権の存在を感じさせる状況となっています。

 

『ネット受信料』に関する質問への答弁は避けた安倍政権

 また、中谷議員は「テレビ離れ、スマホ・ファーストが進む時代の受信料」や「ネット受信料」に対する見解も質問しています。

 これらの質問に対する答弁は「中長期的に検討すべき課題」と “逃げ” が打たれており、『ネット受信料』については「諸外国の徴収方法は各国ごとに公共放送が果たすべき役割やサービスによって異なる」と明言を避けました。

 要するに、安倍政権は「(現時点では)NHK を取り巻く環境を変更する検討は不要」との立場なのです。

 NHK 公共放送でありながら、子会社を保有して受信料で制作したコンテンツを囲い込んでいるのです。受信料を負担した契約者に還元していないのですから、現行制度が時代に合致していないことは否定できないでしょう。

 『完全スクランブル化』はナンセンスですが、災害報道などのストレートニュースや政見放送などを除いて『一部スクランブル化』を導入することを検討するにさえ消極的な NHK の姿勢は論外と言えるのではないでしょうか。