災害報道や政見放送を理由に「NHK のスクランブル化」を否定するなら、『放送法の改正』か『NHK の分社化』を行うべきだ

 NHK によりますと、石田総務相が「NHK スクランブル化は民法との二元体制を崩す」との理由で現状維持の方針を示したとのことです。

画像:NHKスクランブル化を強く否定した石田総務相

 視聴すらしていない番組の受信料を強制的に支払うように定められている放送法が “諸悪の根元” なのです。現在の受信料制度を定めた放送法を改正するか、公共放送とそれ以外の分社化のどちらかをすべきと言えるでしょう。

 

 今回の参議院選挙でNHKから国民を守る党は、NHKの放送を受信料を支払っている人だけが見られるように「スクランブル化すべきだ」などと主張し、比例代表で1議席を獲得しました。

 これに関連して石田総務大臣は記者団に対し、「NHKには災害報道や政見放送など公共放送の社会的使命を果たすことが求められる中で、その財源は広く国民・視聴者に公平に負担してもらう受信料で支える制度となっている」と述べました。

 

『公共放送』に該当する分野は「国が税金で無料放送しても問題はない」と断言できるはず

 石田総務相は「NHK には公共放送としての使命がある」との理由で受信料制度を正当化しています。これは “NHK の言い分” を代弁しているだけであり、政治の怠慢と言わざるを得ないでしょう。

  • 石田総務相が言及する公共放送の内容
    • 災害報道
    • 政見放送
  • 公共放送には “該当しない” と考えられる番組
    • スポーツ中継(= 大相撲、野球、テニスなど)
    • ドラマ(= 朝ドラ、大河ドラマなど)
    • 情報番組(= ニュースウォッチ9など)
    • ドキュメンタリー
    • バラエティー
    • 育児・教育番組

 NHK の問題は「『公共放送』を名乗りながら、“公共” には該当しない番組も放送していること」でしょう。

 公益性の高い「報道番組」や「政見放送」が公共放送の対象であることに文句を言う人はほとんどいないはずです。これらは「時の政権に関係なく放送される内容は変わらない」のですから、国が税金を投入する形で運営しても問題にはなりません。

 「ごく一部の『公益性が高い番組』を放送していること」は NHK の現状を容認する理由にはならないのです。『受信料を定めた放送法』と『NHK の体制』の両方に問題を抱えているのですから、是正に乗り出すことが政治の責務と言えるでしょう。

 

「『報道番組』と『政見放送』を除いてスクランブル化」が最も容易な解決策

 石田総務相は「災害報道と政見放送には公共性がある」と言及しています。これは「災害報道と政見放送以外は公共放送の対象外」と同義ですから、“線引き” の基準として利用すべき発言です。

 つまり、「『災害報道が含まれる報道番組』と『政見放送』以外は速やかにスクランブルをかけるべき」との主張を後押ししてくれていることと同じなのです。

 “番組キャスターの個人的な見解” を垂れ流すことは「公共放送の社会的使命」には合致しません。そのような番組は「見たい人だけが料金を支払って視聴する」という形態であるべきです。

 しかし、現状は「視聴の実態に関係なく、受信設備が存在すれば問答無用で受信料の支払いを要求される」のです。現状の不公平を解消できる現実的な解決策があるにも関わらず、既存の政党が是正に消極的だったから『NHKから国民を守る党』が参院選で議席を獲得する要因になったと言えるでしょう。

 

NHK に公益性があるなら、受信料で製作された NHK の番組は公益性の観点から無料での利用を認めるべき

 「NHK に公益性がある」との主張し、受信料制度を正当化するなら、“受信料で製作された番組にも公益性” があるはずです。

 つまり、『公益性が高い番組』を製作・放送しているのであれば、番組を無料で利用しても問題ないと言えるでしょう。しかし、現実には『NHK エンタープライズ』という子会社がコンテンツ管理を行っています。

 これは「公益性」ではなく「収益性」を追い求めていることと同じです。したがって、『公共放送であるNHK』と『民放と同じ収益性を求める NHK エンタープライズ』に分社化することも解決策の1つです。

  • 『新 NHK』
    • 役割: 公共放送を担う
    • 資金: 「国会が承認した税金」か「受信料収入」
    • 放送内容: 報道番組(= 災害報道)や政見放送
  • 『新 NHK エンタープライズ』
    • 役割: NHK にルーツを持つ営利目的の民放
    • 資金: 広告収入および視聴料金
    • 放送内容: 旧 NHK が報じていた番組全般

 『新 NHK』に『現 NHK』と同じ受信料収入は不要です。「巨額の制作費をつぎ込んだドラマ」などは持たない上、『新 NHK エンタープライズ』に「NHK を名称を使いたいなら、ネーミング・ライツを払え」と要求することも可能です。

 少なくとも、NHK を取り巻く現状を容認し続ける意味もありませんし、ネット受信料を認める動きも論外と言えるでしょう。政治家が自らの保身も含めて NHK を甘やかし続ける限り、ネットを中心にした不満は燻り続けることになると言えるのではないでしょうか。