赤羽国交相の「JR が車椅子使用客に事前予約を求めるのはけしからん」との答弁は『質問主意書』で追求されるべき内容

 12月3日に行われた参議院・国土交通員会で赤羽国交相が「JR が車いす用スペースの利用に規制を設けるのはけしからん」と答弁したと NHK など各メディアが報じています。

 『れいわ新選組』の木村議員の質問に答えたものですが、質問者および答弁者の双方が事実関係を誤認していると言わざるを得ません。安倍1強で緩んでいるのは自民党だけでなく、公明党も同じでしょう。

 悪しき見解となる恐れがあるだけに JR や私鉄の労組が支援する野党議員が『質問主意書』で見解を問いただす必要があるはずです。

 

 JRの新幹線や在来線の特急列車には、車両によって車いすで利用できるスペースがあり、利用を希望する場合には、2日前までに、みどりの窓口か電話で申し込むことを求めています。

 3日の参議院の国土交通委員会では、重度の障害があるれいわ新選組の木村英子参議院議員がこうしたJR各社の対応について「現状では車いすの人が緊急に新幹線に乗る際に、スペースを利用できない場合がある。当日でも車いすの人が優先的に購入できるようにするべきではないか」と質問しました。

 これに対し赤羽大臣は、「JRの対応は残念に思う。交通機関のバリアフリーに関する国のガイドラインは、車いす利用者が確実に利用できるよう意図されてつくられていて、このスペースの利用に規制をもうけるのはけしからん話だ」と述べました。

 

木村英子議員(れいわ新選組)の質問内容がおかしい

 まず、指摘する必要があるのは木村英子議員の質問内容でしょう。木村議員は「新幹線の利用当日でも車いすの人が優先的に『車いす用の利用スペース』を購入できるようにすべき」と主張していますが、ここに事実誤認があります。

 JR 各社が用意している『車いす用のスペース』を健常者が購入することはできないからです。

 要するに、該当のスペースは「健常者との共用スペース」ではありません。JR 東日本は「車いす対応座席」という名の “スペース” を事前予約する形が基本ですし、JR 東海・西日本・九州は「多目的室の事前予約」を採用しています。

 つまり、切符を当日に購入できない大きな理由は“車いすの利用者同士” で座席の争奪戦が起きているからです。したがって、優先購入権の話が質疑されること自体がおかしいことなのです。

 

「JR はけしからん」と寄り添った赤羽国交相の答弁は問題視されなければならない

 木村議員の質問に対する赤羽国交相の答弁は「委員の指摘はすでに JR 各社が満たしている」との趣旨でなければならないはずです。

 もし、“車椅子利用者の乗客に提供しなければならないサービス” が規定を下回っているなら、それは国交省が鉄道事業者を指導しなければならない案件です。しかし、そのような訴えではありません。

 にも関わらず、赤羽国交相は「けしからん」と口走り、言いがかりに理解を示したのです。これは厳しい批判が向けられるべきと言わざるを得ないでしょう。

 新幹線には物理的なスペースの制約があります。また、どのようなタイプの車椅子利用者でも乗車できるという訳ではありません。扉幅・通路幅や転回性能による制限があるからです。健常者であっても “自分のスペース” が確実に必要な場合は予約が必須であることを忘れてはなりません。

 「急遽申し出のあった当日の障害者利用にも柔軟に対応すべき」との主張は『バニラ・エア』に対して “差別の当たり屋” のパフォーマンスをした木島英登氏と同じものです。そのような活動にお墨付きを与える答弁をした赤羽国交相の責任は厳しく批判されるべきと言わざるを得ないでしょう。

 

「利益追求よりも障害者への配慮を優先すべき」と主張するなら、「配慮の際に必要なコストはどこから捻出するのか」も同時に言及すべき

 おそらく、世間には木村議員が質問した前半部分(=車いすの人が緊急に新幹線に乗る際にスペースを利用できない場合がある)に共感し、「国が JR 各社に対応を指導すべき」との主張をする人がいることでしょう。

 その主張を支えるのが「利益追求よりも障害者への配慮をすべき」との価値観と考えられます。しかし、そうした人々が考えなければならないのは「障害者に対する配慮を行う際に必要となるコストを誰がどこから捻出するのか」という視点です。

 「車椅子を設置するスペースを広げるべき」との主張を受け入れると、通常の座席を削ることが必要になります。そうすると、座席数が減少することで JR 各社の利益は減少するのです。

 また、「新幹線乗車中にトイレに行ったりする際のサポートが得られない」との不満を出ているでしょうが、新幹線の乗務員は障害者の介護者ではありません。この視点が欠落しているから、「(全員に還元されるべき)収益を障害者に優先的に配分せよ」との主張が後を絶たないのでしょう。

 

 木村議員の質問は的外れなレッテル貼りですから、その事実を指摘するだけで十分なはずです。しかし、管轄する大臣が “誤った認識に基づく質問” に対して賛同することは以ての外です。

 JR や私鉄の労働組合からの支援を受ける議員が『質問主意書』で赤羽国交相の答弁に対する公式見解を政府に要求する必要があると言えるのではないでしょうか。