日中韓 FTA 交渉会合が毎年のように開催されるも、「約束を守らない国」と関税交渉をする意義は問うべきだろう
日経新聞によりますと、11月27日から29日までの日程で日本・中国・韓国の3カ国による自由貿易協定の交渉会合が開催されていたとのことです。
ただ、隔たりが大きく締結についての見通しは立っていないと報じられています。ルールを決めても相手国が守らなければ意味がありません。その視点が欠けた現状では「締結」という成果を手にする意味はないと言わざるを得ないでしょう。
日本と中国、韓国の政府は29日、ソウルで3日間の日程で開いた自由貿易協定(FTA)交渉会合を終えた。電子商取引や知的財産などの専門分野で作業部会を開き、関税交渉の枠組みなどについて協議した。日本側の交渉関係者は「ルール分野全般で立場の隔たりが大きい」としており、FTA締結に向けてまだ曲折がありそうだ。
(中略)
次回会合は20年に中国で開く予定だが、具体的な時期は決まっていない。
中国や韓国との『自由貿易協定』を取り急ぐ必要性はあるのか
自由貿易が行われるのは消費者に「関税分の価格が引き下げられる」という恩恵があります。ただし、それは自由貿易体制が保障されている場合に限ります。
その点で中国は『自由貿易』がある状態とは言い難いでしょう。なぜなら、当局による締め出しが露骨に行われていますし、知的財産権が守られているとは言い難い状況にあるからです。
また、韓国は『条約不遵守国』という側面があります。日韓基本条約を無視しているのですから、そのような国と『協定』を締結したところで “協定破り” が発生するのは時間の問題です。
『自由貿易協定』を締結しようとしている候補の国がどちらも「不適切な事案」を抱えている状態であり、将来的にかなりの確率で発生することが見込まれるリスクを無視してまで『FTA 締結』に前のめりになるメリットは皆無と言わざるを得ないでしょう。
「交渉中との姿勢を示す」という “実績” が引き継がれるだけの代物
2013年に交渉が始まった『日中韓 FTA』ですが、交渉妥結に向けた見通しは立っていません。「市場へのアクセス」、「電子商取引」、「知的財産権」などで合意に達する必要があるためです。
これらは「どの国がどれだけ譲歩して “新基準” を策定するか」が問われているため、交渉参加国が安易に譲歩しにくいという背景にあります。
中国は「外資系企業が中国市場に自由にアクセスされる」という事態は避けたいでしょう。これは中国企業(≒ 国有企業)が外資系企の民間企業に太刀打ちできる確証がないため、市場を奪われると権力の陰りを招きかねないからです。
一方で、「知的財産権は厳しくしたくない」という思惑が中国(と韓国)にはあります。なぜなら、研究開発体制が確率済みの日本から先行技術を “合法的に” 取得することが可能になるからです。
しかし、盗まれる側が猛反発することでしょう。その多くは日本側ですが、ファーウェイなどの中華系 IT 企業の知財を(アメリカの息がかかった)日本企業や韓国企業が持ち出す可能性も否定できないため、交渉が拗れる要因はあちこちにある状態なのです。
したがって、「交渉中である」と各国政府が発表することだけが実績として積み重なる他は大きな進展がないまま時間だけが経過する事態を招いていると言えるでしょう。
次回の開催時期が決まっていない現状が重要度を物語っている
『日中韓 FTA』の発効に交渉参加国が強い意欲を示しているなら、次回の会合時期は決まっていたことでしょう。ですが、日程は決まっていません。
これは「交渉を行っても事態が前に進む見込みがない」との判断が背景にあるからだと考えられます。交渉を行う余地があるなら、次回の会合時期は決められるはずです。
しかし、それすら決められなかったのですから、交渉当事国の間で議論が完全な平行線になっているのでしょう。この場合においては「時間を置く」ことで、事態が(何らかの形で)動いてから、交渉を再開した方が合理的だからです。
したがって、シー・ジンピン(習近平)総書記が来日するまで大きな動きは起きないと考えられます。『日中韓 FTA』は交渉中というアリバイ作りで現状は十分すぎるほどと言えるのではないでしょうか。