武漢を封鎖した中国政府の対応を称賛した WHO テドロス事務局長、中国人の渡航制限を設けた国々の対応に懸念を示す

 2月3日にスイス・ジュネーブの WHO (世界保健機関)本部で行われた執行理事会でテドロス・アダノム事務局長が中国からの渡航制限をする各国の姿勢に懸念を示す発言をしたと NHK が伝えています。

 国のトップが自国内の衛生状態を守るために、疑惑が持たれる人物を排除するのは当然です。WHO の『緊急事態宣言』が宣言された国が関わる渡航が制限されることは一般的であり、中国経済への配慮を示す姿勢は論外と言わざるを得ないでしょう。

 

 スイスのジュネーブにあるWHOの本部では3日、執行理事会が始まり、5月に開かれる総会に向けた提案などについての議論が始まりました。

 冒頭で、テドロス事務局長は、新型のコロナウイルスの感染が世界に広がる中、中国から渡航する人の入国を禁止する国が相次いでいる現状について、「渡航や貿易を不用意に妨げる必要はどこにもない。証拠に基づいた決定をするようすべての国に求める」と述べました。

 

テドロス事務局長は中国マネーが投下されているエチオピアで2012年から16年まで外相を勤めていた人物

 テドロス事務局長が「中国の渡航や貿易」を懸念する理由は「自らも経済的な痛手を受けるからでしょう。

 テドロス事務局長はエチオピア出身の政治家で2005年から12年まで保健相を勤めていました。この経歴が彼を WHO の事務総長にしたですが、彼は2012年から16年までは『エチオピアの外務大臣』でした。

 エチオピアは中国からの資金を受け、『一帯一路』の重要拠点となっています。チャイナ・マネーが国内経済に大きな影響を与えている国であり、外相という立場で資金援助を引き出した政治家が国内に与える影響は大きいものでしょう。

 それだけにテドロス・アダノムという “エチオピアの政治家” は中国政府と利害が一致するのです。

 中国との渡航や貿易が制限されると中国経済が失速しますし、その影響は「エチオピアへの投資額の減少」という形で現れます

 そうした懸念が現実にあるのですから、テドロス・アダノムは “WHO の事務局長” という肩書きを使って中国のために奔走していると言われても止むを得ないでしょう。

 

「武漢を封鎖した中国政府」を讃えるなら、「中国からの渡航を閉ざす各国」にも理解を示さなければならない

 WHO の役割は「ウイルスの感染拡大を止めること」であり、それはテドロス事務局長も1月28日に習近平総書記と会談した際に言及しています。

 会談を終えたテドロス事務局長は、声明で「中国、そして世界的にウイルスの感染拡大を止めることがWHOの最優先事項だ。中国のリーダーシップや透明性に感謝する」と述べています。

 中国政府は1月23日から武漢の封鎖に踏み切りました。公共交通機関の運行が停止され、26日には許可された車両のみが通行する形で移動が大きく制限されています。

 「 “感染の中心地である武漢” からウイルスの拡散を防ぐ」という点で中国政府の方針は適切なものです。感染拡大を防ぐために『移動の自由』を一時的に制限することは止むを得ませんし、テドロス事務局長も理解を示しています。

 しかし、各国が「 “感染の中心地である武漢” からウイルスが持ち込まれることを未然に防ぐこと」に踏み切る対策には否定的なのです。

 WHO の存在価値は「ウイルスの拡散を防止すること」です。「ウイルスが世界中に拡散する手助けをして各国からの指示を仰ぐ立場になること」ではありません。また、WHO が世界各国の衛生管理費用を捻出する訳ではないのですから、各国の衛生管理基準に口出しする資格はないと言えるでしょう。

 

未だに調査団を現地に派遣すらしていない WHO に「証拠に基づく対応」を要求されることはナンセンス

 テドロス事務局長は『証拠に基づく対応』を要求していますが、これは世界各国に聞き入れられることはないでしょう。なぜなら、WHO はまだ調査団を現地に派遣していないからです。

 中国が発症例の隠蔽に走っていたことは事実ですし、『裏付けされた確固たる証拠』が存在しないことが実情です。“武漢を封鎖した中国政府” が発表した公式情報を鵜呑みにして『検疫フリー』にすることはあまりに杜撰です。

 『十分な証拠』が中国政府や WHO など複数ルートから上がっているにも関わらず、中国との渡航や貿易が制限されているのであれば、こうした行為は問題視されていなければなりません。しかし、現状はそれ以前の問題なのです。

 中国人観光客が “新型コロナウイルスの運び屋” となり、観光先の国々で新たな感染者を生み出す結果となっているのです。少なくとも、感染のペースが衰退傾向となるが、インフルエンザのように世界中に根付いてしまうかのどちらかでなければ状況の改善にはならないでしょう。

 専門家が多く在籍しているはずの WHO であってもトップが恣意的な発表をしたり、危険度を取り違えて発表するレベルなのです。自国内で危険度を算出し、その算出の根拠となったデータなどを世間に公表できる体制を構築することは重要なことと言えるのではないでしょうか。