アメリカの GE (ゼネラル・エレクトリック)、ボーイング減産とコロナ禍の影響で全従業員の 25% を削減へ

 NHK によりますと、アメリカの大手メーカーであるゼネラル・エレクトリック(GE)が従業員の 25% に該当する1万3000人を削減するとのことです。

 航空機メーカーからの発注が減少していた局面に新型コロナウイルスの影響が加わったことが要因と考えられるものの、大きな衝撃と言わざるを得ないでしょう。

 

 発表によりますと、GEは、航空機エンジンの製造部門で、世界の従業員の25%に当たる人員削減を行うということで、アメリカメディアによりますと、1万3000人に達します。

 経営悪化に陥っている航空機大手ボーイングが先週、主力旅客機の減産を決めるなど、航空需要の大幅な減少の影響を受けた形です。

 

供給先であったボーイングが経営悪化に陥ったことで GE も苦境だった

 まず、新型コロナウイルスによる問題が発生する前の段階で GE (の航空機エンジン部門)は苦境に立たされていました。なぜなら、主要供給先であるボーイングの経営が悪化していたからです。

 航空機メーカーの大手はボーイング(アメリカ)とエアバス(フランス・EU 連合)の2社に対し、GE は航空機エンジンを合弁会社である CFM インターナショナルを通して納入しています。

 ところが、ボーイング社は 737 MAX の墜落事故で生産そのものが打ち切りとなり、経営が傾く発端となりました。GE にとっては航空機エンジンの需要そのものが消失することであり、そもそも厳しい状況にあったと言えるでしょう。

 

「(ボーイング社の)経営立て直しのための減産」に「(新型コロナで)航空需要の激減」というダブルパンチ

 ボーイング社の経営が傾いたことは痛手ですが、この時点では航空需要は存在していました。そのため、エアバス社への納品ペースを維持することができれいれば、GE の受ける損失は限定的だったことでしょう。

 しかし、新型コロナウイルスが世界中で広がったため、世界各国が実質的な「鎖国」を選択。これにより、航空機を利用した移動ニーズが激減してしまったのです。

 そうなると、航空機エンジンの需要そのものも吹き飛びます。いつ需要が回復するのか分からないのですから、生産するための人員を確保しておく必要はありません。だから、経営陣が解雇を選択するのです。

 航空機が利益を生み出すのは「人や物を輸送している時」です。地上で駐機している間は収益を上げることはできないのですから、従業員にとって厳しい判断が下されることになるでしょう。

 

コロナ禍が収束したとして、どれだけの需要が戻るのかは未知数

 コロナ禍が収束すれば、一定の航空機需要は戻るでしょう。ただ、コロナ禍が起きる前と比較してどのぐらいの割合になるかは不明であることがネックです。

 戻りやすいのは「国内移動」です。国内線では検疫をする必要はないため、国際線よりは需要が戻りやすいと言えるでしょう。

 一方で最も困難なのは「国際線を使った弾丸ツアー客」です。

 オンラインの比重や存在感が高まるとは言え、すべてを完結させることはできません。そのため、国際移動はビジネス客の需要から回復することでしょう。ただ、入国先で2週間の検疫期間が設けられることが一般的ですから短期旅行は実質的に不可能です。

 これまでは格安航空会社(LCC)を使った 3〜5 日の弾丸ツアーがありましたが、この部分が最も困難になると予想されます。

 つまり、LCC へのニーズが低い状況では GE を含む航空機の機材・部品を製造しているメーカーにとっては以前よりも逆風が吹いた環境下での経営を求められることになると考えられるのです。そのため、解雇の嵐が吹き荒れることになったのでしょう。

 

 製造業は雇用人数が多いため、国内の雇用情勢を大きく左右します。「サービス業で食べて行くことが可能」と知識人は言いますが、“販売先” が存在しなければ行き詰まるのは時間の問題です。

 政策が行き詰まるの原因を作ることは本末転倒ですし、雇用維持と税収確保を上手く両立させることができなければ解雇どころでは済まない事態にもなり得るとの認識が必要と言えるのではないでしょうか。