台湾の半導体大手・TSMC がファーウェイ(華為技術)からの新規受注を停止、最先端技術の確保が困難になった中国の出方が気になるところ

 日経新聞によりますと、台湾の半導体メーカー・TSMC が中国・華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたとのことです。

 最先端の半導体製造技術を持つ企業は TSMC とサムスン(韓国)に限られます。したがって、TSMC が「ファーウェイへの基幹半導体の提供」から手を引いたことは中国にとって大きな痛手となります。

 中国政府の『5G 技術を使った影響力拡大』を頓挫させる意味もあるため、今後の出方次第で騒動はより大きくなると言えるでしょう。

 

 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたことがわかった。米トランプ政権が求める禁輸措置に対応した。ファーウェイはスマートフォン市場で世界2位だが、基幹半導体の供給が断たれれば次世代通信規格「5G」向けの端末開発などで影響が出る。

 

最先端の CPU を “作ること” が可能なのは TSMC (台湾)とサムスン(韓国)の2社が現状

 まず、最先端の CPU を製造することが可能なのは TSMC とサムスンの2社が現状です。他の半導体企業でも製造は可能ですが、最先端の製造ラインから 1〜2 世代は遅れているため、ハイテク産業においてはハンデを背負うことになります。

 そのため、最先端の製造ラインに投資できる資金力を持った上述の2社に受注が集まり、他の半導体製造メーカーとの差が拡大する要因になっているのです。

 半導体分野で日本の名前が出てくるのは「製造」ではなく、“製造に欠かせない物資” を供給することが可能な数少ない国だからです。だから、輸出規制管理強化の対象に『フッ化水素』などがなった際に韓国が猛反発をしたのです。

 ファーウェイへの基幹半導体の供給が絶たれたのですから、中国政府はいずれ “報復” に動くことでしょう。ただ、最優先は「基幹半導体の供給先の確保」です。そのため、どのような出方をするかが最初の注目点となるはずです。

 

「青瓦台を脅してサムスンに基幹半導体を上納させる」が現実的な選択肢

 半導体の製造ラインを自前で用意することは可能です。ただ、10年単位で研究・開発費を投じ続ける必要があるため、その間に “最先端の製造ラインで作られた半導体を使用する企業” の後塵を排する結果にもなります。

 要するに、「自前の最先端製造ラインが用意できた時には市場は他社に占有済み」という事態が起こり得るのです。

 このような事態を避けるには「現状で使える最先端の製造ラインを用いた商品を出し続けること」が必須です。そのためには「『TSMC』か『サムスン』からの供給」が不可欠であり、中国政府は “その場しのぎ” で結果を出しに来るでしょう。

 中国政府にとっては「TSMC を翻意させること」が理想ですが、これは非現実的です。TSMC はアメリカ・アリゾナ州への工場建設で前向きな姿勢を示すなど、アメリカに対する “誠意” を見せているからです。

 「(台湾に)軍事的な圧力をかける」という選択肢もあるものの、コロナ禍の責任を押し付けられるリスクがある以上は下手に動くことは致命的です。したがって、当面の基幹半導体の供給先として使えるのは「サムスン」とならざるを得ません。

 中国政府が韓国を動かすことは「容易い」ため、様々な形での圧力がかけられることになるでしょう。

 

アメリカと中国という “両方の巨大市場” を相手に商売ができれば理想的だが、どちらかを選ばなければならない状況

 日本だけでなく、多くの国にとっては「アメリカ市場」と「中国市場」の双方を相手にした商売をすることが理想的です。その方が経済が潤う上、販売先の選択肢も多いからです。

 ただ、理想が現実世界で長く続く保証はありません。現に「アメリカと中国のどちらに付くのか」が迫られているからです。

 日本は『アメリカ(=自由主義・民主主義)側』を選択しており、この判断は適切でしょう。『中国側』は封建主義ですし、“中国の決定事項” を遵守することが至上命令である秩序が築かれているからです。

 選ばなければならない状況になったのであれば、『自由主義陣営』を選択すべきです。そうしないと「民族の自治」すら困難になりますし、伝統や文化も消え去ってしまうことも起こり得ます。

 いいとこ取りができなくなる状況に備えておくことを再認識しなければなりませんし、実行に移す必要が生じてしまったとも言えるのではないでしょうか。