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安倍政権は「民主党の “負の遺産” である福島第一原発事故の処理問題」に本腰を入れよ

 東日本大震災による福島第一原発での事故による賠償や廃炉に要する費用が総額20兆円を超えそうだと試算が経産省で示されていると毎日新聞などが報じています。

 事故処理には多額の費用が必要となるのですが、それほど注目されておらず、責任の所在も不明確なままです。現状が放置されたままだと費用がさらにかさむことになることは明らかです。

 安倍政権は民主党の “負の遺産” の1つである福島第一原発事故の「損切り」を速やかに開始しなければなりません。

 

 東京電力福島第1原発事故の賠償や廃炉などにかかる費用が総額20兆円超に上り、従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算していることが27日、分かった。政府は拡大する費用の一部を東電を含めた大手電力と新電力(電力自由化で新規参入した業者)の電気料金に上乗せする方針で、国民負担の増大は必至だ。

 

 毎日新聞が報じた費用の内訳は下表のとおりです。必要ではなかった部分も負担していることもあり、事故処置に必要な費用が増加していることが浮き彫りとなっています。

表1:福島第一原発事故での処理費用(見積もり値)
区分現行見直し案
賠償 5.4兆円 8兆円
除染 2.5兆円 4〜5兆円
中間貯蔵施設 1.1兆円 1.1兆円
廃炉 2兆円 5〜6兆円
合計 11兆円 20兆円超

 費用総額の半分以上を賠償と除染で占められています。東京電力に無限責任を押し付けた上、不必要な除染作業の経費まで負担させているのですから、費用はいくらあったとしても足りなくなることでしょう。

 そもそもの原因は当時の民主党政権にあるのです。いい加減な政策を行ったツケを現在の安倍政権が支払わさせられている状況となっているだけなのです。

 

 福島第一で原発事故が発生した際、事故処理には2つの選択肢がありました。

  1. 東京電力が有限責任で対応する
  2. 原賠法3条を適応し、国が無限責任で対処する

 要は、1企業である東電が可能な範囲で対応するか、国が全面に出るかの2つに1つだった訳です。

 ただ、国が全面に出るには原賠法3条に書かれている「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない」を認める必要がありました。

 福島第一原発事故の原因は巨大津波でしたので、損害が “異常に巨大な天災地変” によって引き起こされたことは明らかです。これは震源地に近い位置にあった女川原発(東北電力)や福島第二原発(5・6号機)・福島第二原発では運転を停止できたことから否定はできないでしょう。

 ところが、「地震で事故が起きた」とメディアが騒ぎ、責任の追求を恐れた民主党政権や経産省が「東電に無限責任を負わせる」という自らの保身のためだけの “第3の選択肢” を作り出したのです。

 

 この “第3の選択肢” が抱える問題は責任の所在が不明確になっている点です。支援機構が東京電力を金銭的に支援しており、メディアがどれだけ東電をバッシングしようとも、実質的な決定権は東電には存在しません。

 民主党政権や経産省にとって、事故を起こした施設を持つ東電は格好のスケープゴートであり、サンドバッグです。「事故を起こした企業が責任を取るべき」という主張内容は最もですが、有限責任ではなく無限責任とした部分に民主党政権(当時)の根本的な失政が含まれているのです。

 つまり、「東電が原因だ!」と主張すれば、いくらでも賠償を得られるシステムが構築されたのです。これほどの “カモ” は滅多に現れないことでしょう。

 その結果、言いがかり的な内容の賠償訴訟が乱発され、自主避難者は生活費を東電に要求し、マスコミは意味のない除染を声高に要求するという事態に陥ってしまったのです。

 自らの批判を避ける目的で東電を “パブリック・エネミー(社会の敵)” としてレッテル貼りを行った人物・組織の責任は非常に重いと言わなければなりません。

 

 安倍政権に求められていることは、無責任な状況の東京電力に会社更生法を適用し、破綻処理を行うことです。

 責任の所在が不明確な組織を放置したままでは資金の流出が止まらないことは明らかであり、早急に対処しなければなりません。政権与党は過去の政権が原因で起きた問題に対しても、是正する責務を負っているはずです。速やかに行動に移す必要があると言えるでしょう。

 東京電力については、発電・送電事業と原発(特に廃炉)事業を行う会社に分割することは不可避となっています。

  1. 東京電力 A:(存続する組織)
    • 火力・水力など既存設備を使った発電事業
    • 既存送電網を使った送電事業
  2. 東京電力 B:(清算する組織)
    • 福島第一原発の廃炉作業
    • 賠償訴訟に対処
    • 東電の既存原発(柏崎刈羽など)を使った発電事業

 存続させる目的の東電Aは民間企業として活動がベースとしており、ある程度のダウンサイジングを行えば、優良企業に戻れる現実味はあることでしょう。特に、入社して経験の浅い若手社員にとっては、仕事のモチベーションを継続させる要因になるはずです。

 

 分割をする目的は「国が投入する資金の用途を透明化することであり、東電Bが対象であること」を明確にする狙いがあります。

 国の予算がつぎ込まれることになるのですから、自称・被害者による賠償範囲の拡大解釈抑制にも貢献することでしょう。例えば、「福島から自主避難することによる家賃補助」の打ち切りといった形などにおいてです。

 廃炉作業については、東電が保有する既存の原発施設を国有化し、東電Bの保有とすることで人材を確保・育成する形となることが予想されます。

 いずれ、対応年数が上限に達した原発施設は廃炉かリプレースとなるのです。福島第一での廃炉経験やノウハウを原発施設で働く社員に蓄積しておくことは将来の資金源となることでしょう。

 廃炉作業だけでは、他の原発での廃炉作業がいつ起きるかが不透明で人材確保が困難となりますが、原発施設で働く社員にローテーションを組ませることで、社員に廃炉作業に携わった経験があるという付加価値が付きますので、人員確保のハードルは下がることにつながると考えられます。

 

 福島第一原発の廃炉作業には30年ほどかかり、費用も20兆円を要するとメディアは盛んに煽っていますが、原発の運転を停止したことによる追加の火力燃料費は1年で3兆円を費やしていることを無視してはなりません。

 東電をスケープゴートにして、逃げている当時の政権・経産省の担当者を野放しにするのではなく、問題点を現実的な解決策を用いて是正することが安倍政権に求められていることなのです。民進党がその役目を全うできるのであれば、政権交代も再び起きることになるでしょう。

 大きすぎて社会があまり実感できない問題に対し、現実的な解決策を提示できる政党が存在するのかがポイントとなります。そのような政党があるのであれば、その政党を中心とした長期政権ができることは当然と言えるのではないでしょうか。