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ヤマハや河合楽器が運営する音楽教室って今まで著作権料払ってなかったの?

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽教室での演奏に対し、著作権料を徴収する方針を固めたと朝日新聞が伝えています。

 このニュースに対し、反発の声が上がっています。しかし、これまでヤマハや河合楽器など大手の音楽教室ですら著作権料を支払っていない方が驚きと言えるでしょう。

 

 ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、著作権料を徴収する方針を固めた。徴収額は年間10億~20億円と推計。教室側は反発しており、文化庁長官による裁定やJASRACによる訴訟にもつれ込む可能性もある。

 (中略)

 作曲家の死後50年が過ぎて著作権が切れたクラシック曲も使われる一方、歌謡曲や映画音楽などJASRACが管理する楽曲を使っている講座も多いとみて、著作権料を年間受講料収入の2・5%とする案を検討している。

 

 JASRAC があまり良い印象を持たれていないことは確かですが、ヤハマや河合楽器という大手の音楽教室を展開する企業が著作権料を支払っていない方が驚きです。

 他者の著作物を利用してビジネスを展開しているのですから、著作権の支払いには応じなければなりません。「音楽教育の一端を担っており、著作権料のディスカウントに応じて欲しい」という要求であれば、ヤマハや河合楽器など音楽教室を展開する事業者の意見に賛同します。

 しかし、大手の音楽教室を展開する企業が「著作権料の支払いに応じていない」のであれば、JASRAC の主張が通るべきでしょう。

 

 ヤマハは「音楽教室は製品の販売に寄与しています」と楽器事業説明会で述べています。収益性も国内では採算が取れていることを認めており、自社製品の販促活動を行う場として音楽教室を利用していることを認めているのです。

 営利事業を行っていますし、“教育目的” であれば、電気代や水道代が免除される訳ではありません。他人の著作物を使用・利用していることは確かなことであり、受講料の 2.5% を著作権料として支払うことは妥当な範囲と言えるでしょう。

 また、河合楽器が『教育関連事業』で記録している売上高は下表のとおりです。

表1:河合楽器教育関連事業の売上高推移(単位:百万円)
 '14/3'15/3'16/3
売上高 17,027 16,633 16,603
営業利益 1,205 875 894
営業利益率 7.1% 5.3% 5.4%

 『教育関連事業』の位置づけは『楽器事業』に次ぐ2番手。セグメント別では 24.0% を占める優良事業の1つと言えるでしょう。

 2016年3月期の売上高は16,603百万円(=166億円)、営業利益は894百万円(8億9400万円)で、利益率は 5.4% と2年前の水準からは下がりましたが、河合楽器の中では高い水準を保っている現状があります。

 

 音楽はタダではありませんので、大手が経営する音楽教室は著作権料の支払いに応じるべきでしょう。

 「子供たちには無料で提供したい」と権利者が考えても、“悪い大人たち” がその考えを逆手に取ることが想定できるため、都合良く線引きでない事情があります。そのため、権利そのものを放棄するか、「払い戻し」という形で実質的に無料にするという形態を取らざるを得ないと考えられます。

 子供たちや音楽教室のために権利を放棄するのは素晴らしいことです。しかし、権利を放棄していない著作権保有者には相応の対価を支払わなければなりません。大手の音楽教室が他人の著作物を無料で使って良い理由にはならないでしょう。

 「読書習慣を身につけるため」という理由で人気書籍をコピーすることが認められるのか、「表現能力を身につけるため」という理由で人気ドラマや映画をコピー配布することが容認されるのかという点で論じるべきなのではないでしょうか。