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記者2000人超の朝日新聞が「調査報道」できない理由は単に能力がないからでは?

 『ワセダクロニクル』で編集長を務める渡辺周氏が「記者2000人を超える朝日新聞が調査報道ができない理由」を語ったインタビュー記事が Yahoo に掲載されています。

 「(調査報道の)能力はあるが、組織として注力していないことが問題だ」と主張していますが、これは新聞記者の能力を高く買いすぎていると言えるでしょう。なぜなら、専門分野に関する知識が欠けているサラリーマン記者がスクープ記事を連発することは不可能だからです。

 

 朝日新聞は2000人以上も記者がいるのに「調査報道ができない」というのは、どういうことなのか。なぜできないかといえば「フォロー取材」ばかりしているからなんですよね。(他社が書いた記事を)落とさない。特オチ(他社に特ダネを書かれること)をしない。

 <中略?>

 調査報道ができるかどうかは発想の問題で、規模の問題とかでは全然ないわけです。「調査報道ができるのか」と言えば、(その気になれば)当然できるということですね。

 

 

“調査報道” のハードルは極めて高くなっている

 調査報道で結果を出すにはその分野で生計を立てている人々と同等の知識を有していることは必要不可欠です。その条件を満たしている新聞記者はどれほど存在するのでしょうか。

 インターネットが普及したことで、“記者が持つ知識” の大部分が上っ面なものであることが露呈することとなってしまいました。情報伝達経路をマスコミが独占していた時代ではそのことは問題とはなりませんでした。なぜなら、一般大衆に気づかれなかったからです。

 しかし、ネット上で誰でも情報発信が可能になったことで、読者が一次情報源(=マスコミの取材対象)から直接情報を入手することが可能になりました。これにより、新聞・テレビが報道している内容に問題があることが明るみに出ることになったのです。

 「自社の報道姿勢に合致しないニュースは自粛する」というケースや、「専門家のインタビュー内容を都合良く切り取る」というケースが読者・視聴者に可視化されている時代なのです。

 この環境で調査報道で結果を出すことができる新聞記者はごくわずかだと言えるでしょう。

 

マニアやヲタクに「落ち度」を指摘されたら、“調査報道” への信頼は失墜する

 スポーツでも、経済でも、実務に携わっている人が1番知識を持ち合わせています。外部から取材する記者が “調査報道” を行うには全体像を把握することが不可欠ですが、短期間でカバーすることは非現実的です。

 予備知識を持っていれば、ハードル自体は下がります。ですが、ほとんどの分野は日進月歩で新しい技術などが生まれており、記者が持っている知識は常に価値自体が下がり続けているのです。

 そして、記者にとって厄介になるのは専門家だけでなく、マニアやヲタクといった準専門家も情報発信をする術をネット上などで確立させていると言えるでしょう。

 新聞がどれだけ華々しく “調査報道” を発表したところで、マニアやヲタクから「報道内容の落ち度」を指摘されれば、炎上することになるでしょう。また、取材における調査手法が批判されるのことも確実で、マスコミへの信頼が失われることにも直結するのです。

 

“調査報道” で加点されるなら、特オチを防ぐことは無失点を意味する

 では、専門家やマニア・ヲタクに太刀打ちできない記者はどうするのかと言いますと、“失点” を防ぐことに専念すれば良いのです。

 勝つために必要なポイントを調査報道で稼ぐことができないなら、負ける要因となる失点を防ぐことに専念し、“引き分け” を狙うのです。「保守的」と見られるでしょうが、年功序列の人事色が強い企業では珍しいことではありません。

 調査報道は内容が事実であれば、大きく加点されることが期待できます。しかし、調査対象となるネタがいつも存在する訳ではなく、調査をしたものの、「問題が発見された」という結論に達しない(=失点になる)場合もある訳です。

 “勝てる” と思って調査に乗り出したネタだったが、“敗戦濃厚” であることが現実となった。このままでは “引き分け” 狙いの記者より悪い評価を付けられそうだ。事前に描いていた結論に沿った事実を探し、記事にしよう。『調査報道』であることには変わりない。

 “調査報道” にのめり込むと、上記のような考えを持った記者が続出することでしょう。期待した結果が出ないことの方が多いという前提でなければ、誤報・捏造を連発するデマ発信源に成り下がることは明らかなのです。

 

朝日新聞に調査報道するだけの能力がないことは編集委員が認めている

 朝日新聞の記者が調査報道を実施する能力を持ち合わせていないことは上丸洋一編集委員のツイートから判断して問題ないでしょう。

画像:上丸洋一編集委員のツイート

 「調査報道ができる能力がある」と考えているなら、「大阪本社のデスクは記事を書いた記者たちを中心としたチームを作り、調査体制を万全すべきだ」と記者が持つ能力を最大限発揮できる環境を周囲が整えるべきとの論調を述べているはずだからです。

 自社の記者を信頼するどころか、「誰でもいいから事態を掘り下げるべきだ」などと他人任せになっているのです。

 他人が調べたことを自分の手柄のように報じることが “日本のジャーナリズム” なのでしょうか。この姿勢こそ、典型的なフォロー取材と言うべきものです。

 

“調査報道” をやりたいなら、仮想チームか期間限定で行うべき

 大手新聞では “調査報道” をやることはできないということはありません。マネジメント次第で可能になります。

 ただし、“調査報道” を行うだけの専門部署は作ってはいけません。なぜなら、結果を追い求めることしか見えておらず、誤報・捏造をやらかすことは朝日新聞の吉田調書問題から明らかだからです。

 そのため、指揮系統を一時的に離れる仮想チーム(バーチャルチーム)を構成することを前提に期間を定めて動くプロジェクトを中心に取材活動を行うべきでしょう。

 経済ネタであれば、経済部の記者を数ヶ月〜半年などのスパンで従来の “フォロー取材” ではなく、“調査報道” の担当として取材に当たらせるのです。ボーナスなどのインセンティブは通常のフォロー取材から算定された額をベースにし、“調査報道” の結果が出た場合のみ、その分を上乗せする形とすべきです。

 国から一等地を格安価格で払い下げられた新聞社は “調査報道” で社員が暴走しないようにする賃金・人事体系を作れるだけの資金力はあるのです。それをどう運用するかは経営陣の腕の見せ所と言えるのではないでしょうか。