読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

スー・チー氏、ロヒンギャ族への対応で “人権派” の化けの皮が剥がれる

 ミャンマーの新たな独裁者となったスー・チー氏が少数民族であるロヒンギャ(イスラム系)への対応で苦境に立たされています。

 「民族浄化ではないか」との指摘に対し、「表現が強すぎると否定した」と AFP通信などが伝えています。ロヒンギャ族の問題はスー・チー氏が権力の座に就く前からあったことであり、就任時にこの問題への対応を確認しておかなったマスコミの落ち度とも言えるでしょう。

 

 スー・チー氏は「民族浄化が行われているとは考えていない。現在起きていることを指すのに、民族浄化という表現は強すぎる」と述べた。

 ミャンマーでは昨年10月、西部ラカイン(Rakhine)州でロヒンギャを名乗る武装勢力が国境検問所の警官9人を殺害する事件が発生。容疑者を追及する国軍の作戦で、これまでに約7万5000人が隣国バングラデシュに脱出した。逃げた人々は軍の弾圧に関する凄惨な証言を口にしており、人権団体は既にロヒンギャ数百人が軍の作戦で殺害されたとしている。

 国連人権理事会(UN Human Rights Council)は、ミャンマー国軍がロヒンギャに対しレイプや殺人、拷問を行っているとの疑惑をめぐり、独立調査団の派遣を決めた。

 

 

安住の地が存在しないロヒンギャ族

 日本でロヒンギャの件が報じられるようになったのは2010年前後からのことでしょう。“ボート難民” となっていたロヒンギャ族が人道上の観点から注目を集めることとなったからです。

 ロヒンギャ族はミャンマーとバングラデシュ両国から「自国民ではない」と見なされています。

 ロヒンギャはベンガル系ムスリムであり、これは仏教徒が多数派のミャンマーではマイノリティです。「宗教が異なれば、自国民ではない」とされるのはヨーロッパ等でも見られることであり、実質的な “国教” が存在する国のことを考えれば、特筆事項とは言えません。

 バングラデシュ側から見ても、ベンガル系ムスリムという点は大きな共通事項ですが、ミャンマーに以前から住んでいる時点でバングラデシュの自国民と見なすことは不可能です。外交問題になる要素が含まれており、下手に介入することを避けることは当然の判断と言えるでしょう。

 

新たな独裁者、スー・チーにロヒンギャ問題への対応を質問しなかったマスコミ

 マスコミはスー・チー氏を過大評価しているに過ぎません。軍事政権下で自宅軟禁に置かれていたにもかかわらず、それに屈しなかったことは “民主化運動のアイコン” として、非常に際立った存在でした。

 ですが、トップの座に着いた以上、国家が抱える様々な問題を解決するために奔走しなければなりません

 「途上国であるミャンマーを経済発展させること」と合わせ、「イスラム系少数民族ロヒンギャの問題をどう解決するか」がスー・チー氏が権力を得た際の当面の課題であったはずです。

 日頃から「人権」に強い関心を示すメディアですが、スー・チー氏へのインターネット等でロヒンギャの問題を取り上げたマスコミは皆無だったでしょう。ほとんどが自宅軟禁に屈しなかった過去の業績を褒め称え、ミャンマーへの投資を呼びかけることに協力する “提灯記事” ばかりだったからです。

 これでは “人権派” の化けの皮が剥がれ落ちるのは時間の問題です。

 

「政情が不安定な国への民間投資は消極的になる」とマスコミは警告を発するべき

 気前の良い日本政府であれば、援助という形で国外に資金をばら撒くことでしょう。しかし、社会保障関連で予算編成に支障を来たし始めており、従来のような形で資金を出すことが難しくなっています。

 民間企業が工場を建設することが有力な代替案となりつつありますが、これも絶対的なものではありません。

 ビジネス(=儲け)にシビアである企業ほど、世界基準で経営戦略を立て、最適地に工場を置くことが当然となっています。政情が不安定であれば、生産ラインが止まるリスクがありますので敬遠することも十分にあり得るでしょう。

 また、世間体も強く気にせざるを得ないため、人道的に問題のある国への進出にも消極的になるはずです。したがって、マスコミはスー・チー氏に対し、「ミャンマーへの投資を呼び込みたいなら、マイノリティに配慮した政策を採っていることを示し、少数派である外国籍保有者を安心させよ」と論説を展開する必要があるのです。

 

 現状ではミャンマー軍に代わり、スー・チー氏という “新しい絶対権力者” が誕生したに過ぎません。これでは投資意欲が掻き立てられる人の方が少ないままです。

 「軍政=ファシズム」のような決め付けが根強いマスコミが軍政にピリオドが打たれることを称賛することはあり得ることでしょう。しかし、その後に起きていることに対しても、継続的に見守り、続報を出さなければ事態が悪化することも十分に起きることなのです。

 人道面を訴えてきたのであれば、スー・チー氏のミャンマーがそれを達成しているのかを評価しなければなりません。化けの皮が剥がれ落ちる前に、方針転換を行うよう紙面などを通して “ご注進” することがリベラルメディアの責務なのではないでしょうか。