まとめ:加計学園の特区申請が通り、京都産業大学の特区申請が通らなかった理由

 「安倍首相が長年の友人に便宜を図ったため、京都産業大学ではなく加計学園になった」というシナリオに基づき、マスコミはネガキャンを展開しています。

 しかし、国家戦略特区のワーキンググループが公開している議事録を確認すれば、それがデマであることは一目瞭然です。時系列で整理すると、なぜ、加計学園だけが選ばれたのかが浮き彫りになります。

 

画像:獣医学部新設における国家戦略特区の流れ

 

 『加計学園』は『京都産業大学(京産大)』より約1年早く特区申請を行っています。30年近く前から誘致に乗り出し、環境を整備してきました。むしろ、後から申請を行った京産大だけが認定された方が不自然と言えるはずです。

 また、議事録を確認することで文科省が仕事をサボってきた事実が分かります。また、“1校に限り” 認めることにしたのは安倍政権ではないことも自明になるのです。

 

1:今治市が獣医学部新設の特区申請を行ったのは2015年6月

 今治市が国家戦略特区の提案申請を行ったのは2015年6月4日です。このことは今治市のホームページから確認することが可能です。

 四国が『獣医学部の空白地域』であること、獣医学部の誘致に長年取り組んでおり、鳩山内閣(民主党)時代に特区認定を得ています。ただ、文部科学省が学部新設を認めてこなかったという経緯があります。

 文科省は「獣医師需要に基づており、規制緩和は認められない」との立場でしたが、それが国家戦略特区のワーキンググループで行われたヒアリングで “主張の根拠” を示すよう求められたのです。

 

2:ワーキンググループで “規制の根拠” を示せなかった文科省

 2015年6月8日に行われた国家戦略特区ワーキンググループ(WG)のヒアリング(議事録)で文科省は「規制の根拠は需要に基づくもの」と主張しています。

 しかし、WG 委員から「根拠になっていない」と以下の理由を基に批判されています。

  • 小泉内閣の時に『需給調整条項』は廃止となっている
    → 需要は役所ではなく市場が判断するから
  • 安全のためであるなら需要は多い方が良い
  • 日進月歩の分野であり、質の問題であることが考慮されていない

 このヒアリングでは規制緩和を推進する WG 側の意見が勝ったことは明らかです。文科省が “規制の根拠” としている需要予測を提示し、規制を保つ根拠を示すことができなかったのですから、対応する責任は文科省にあるのです。

 

3:石破4要件が加わったのは2015年6月30日の閣議

 ワーキンググループで審議された内容を基に閣議決定されます。「獣医学部新設」という方向性が固まった6月8日のワーキンググループを経て、6月30日の閣議(PDF)で “石破4要件” と呼ばれる条件が世に出ることとなりました。

  • 石破4要件
    • 既存獣医師養成でない構想が具体化
    • 獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らか
    • 既存の大学・学部では対応困難な場合
    • 近年の獣医師需要動向も考慮
  • 本年度内(=2016年3月31日まで)に検討を行う

 “石破4要件” に注目が集まっていますが、文科省が本年度内に「獣医学部新設の是非についての検討を行う」と明記されていることです。

 これにより、文科省は「需要動向を示し、獣医学部新設が不要である判断する」か「需要動向を示さず、獣医学部新設を認める」のどちらかを選択しなければならなくなったのです。

 

4:京都産業大学が2016年3月24日に特区申請を行う

 今治市(および加計学園)から遅れること約1年。2016年3月に京都産業大学が国家戦略特区の区域会議に規制緩和の申請(PDF)を行います。

 「獣医学部の新設・定員増は、文部科学省により抑制されている」と理由を記載し、この抑制解除を求めています。この時点で京産大は申請した段階であり、今治市と加計学園から遅れをとっていることは事実です。

 しかし、特区の審査はコンペではありません。「条件を満たせば、認定される」という形式であり、ワーキンググループによるヒアリングを待つ必要がありました。

 

5:「文科省が仕事をサボっていたこと」が2016年9月の国家戦略特区ワーキンググループで叱責される

 2016年9月16日に行われた国家戦略特区のワーキンググループの議事録(PDF)から、「文科省が期日までに結論を述べていなかったこと」と「今治、京都の両案件に WG が前向きだったこと」は明らかです。

  • 2015年度内に検討を行うはずであり、需要あるなしの結論が遅きに失している
  • バイオ研究分野の人材が不足しているが、医学や獣医学からの供給が少ないことが一因
  • 今治だけでなく、京都からも要望が出ている

 特に問題なのは「2016年3月31日までに需要動向を示し、獣医学部新設の是非についての結論を出す」との閣議決定があったにもかからず、文科省が仕事をしていなかったことでしょう。

 “やらなければならない仕事” を期日までに終えていなかったのです。時間的に無理なスケジュールではなかったのですから、文科省のサボタージュ以外の何物でもありません。

 「スピード感を持って規制改革を断行するように」と安倍首相は述べており、仕事をサボった文科省の姿勢は論外と言えるはずです。仕事をしない官僚が権力を私物化することを容認する方が大きな問題と言えるはずです。

 

6:京産大は1度目のヒアリングで「現状案では文科省が難色を示す」との指摘を受ける

 “拒否権の根拠” を期日内に示せなかった文科省が槍玉にあげられてから1ヶ月後の2016年10月17日に行われたワーキンググループのヒアリング(議事録)で京都産業大学の現状を読み取ることができます。

  • 京都産業大学の主張
    • 文科省から「門戸は開かれてない」と言われ、取り合ってもらえない
    • ライフサイエンスと北近畿・北陸での鳥インフル対応で力を発揮できる
  • WG の主張
    • 文科省は「現状で対応できる」と主張するので、議論が平行線のまま
    • 研究ニーズと獣医師の数はもう少し議論が必要で、特区認定に向けた戦略を互いに練る必要がある

 特区による規制緩和を求める京産大ですが、WG が示した見解は「現状のプランでは文科省が拒否するだろう」というものです。“獣医学部の空白地域” に新たに獣医学部を新設し、鳥インフルエンザ対策の有効性をアピールした今治市・加計学園の申請ですから文科省が難色を示しているのですから妥当な意見と言えるでしょう。

 ただ、上手く戦略を練ることで条件である『石破4要件』を突破できるとの希望的観測を示しています。この時点では2校(今治・京都)ともに可能性があったことが確実です。

 

7:1校のみに限定させたのは日本獣医師会

 国家戦略特区で文科省が規制緩和せざるを得ない状況になったことを苦々しい感じていたのは日本獣医師会です。「獣医師が増えること」は競争相手が増えることになるため、獣医学部新設に断固反対の立場を表明してきた経緯があります。

 自らの利権を守るために政治活動を本格化させ、2017年1月30日の会報で次のように成果を報告しています。

  1. 獣医学部新設決定を撤回を要求
  2. 撤回が無理なら、せめて1校にするよう陳情
  3. 政治活動が実を結び、「1校に限り」と修正された改正公示が公布・施行
  4. 『石破4要件』を厳格に適応すべき

 獣医学部新設決定の撤回を求め、無理は場合はせめて1校にするように多くの国会議員に働きかけを行ったと報告しているのです。獣医師問題議員連盟への陳情はもちろんのこと、献金を行った玉木雄一郎議員や福山哲郎議員に対してもお願いに上がったはずです。

 その上で、『石破4要件』を厳格に適用するよう要求しているのです。もし、現時点で「加計学園は『石破4要件』を満たしていない」と主張する政治家がいれば、獣医師会との関係を疑って見る必要があるでしょう。

 

8:「1校しか認められない」という条件では『要改善』の評価だった京都(京産大)が落とされる

 獣医師会からの働きかけを受け、「 “1校に限り” 認める」としたのは文科省です。この条件となると、10月に行われたワーキンググループのヒアリングで『要改善』と指摘された京産大の提案が通ることはないでしょう。

 別枠で審査されていた国家戦略特区が「1校に限る」という形で1枠を争うことになったのです。

 京産大より1年も前に申請を行い、提案内容をより洗練している今治市・加計学園が選ばれることは必然と言えるでしょう。この状況では京産大が選ばれていた方が不自然なことですし、規制緩和を進める安倍政権が1校のみとするメリットは存在しないのです。

 しかし、京産大の申請が許可される見込みが完全に潰えた訳ではありません。文科省は「1校に限る」とした根拠を示せていないのですから、WG で言及された戦略を練り直すことで規制を突破できるチャンスはあるのです。

 “族議員” が妨害を企てることが予想されますが、「利権を守る文科省・日本獣医師会と対決している」とアピールすることで道は開けることでしょう。京産大の申請が通らなかった理由は文科省の官僚など既得権益者が抵抗したからと断言できるのではないでしょうか。