大砂嵐のかち上げを禁止した一方で、白鵬のかち上げを容認してきた相撲協会の姿勢こそ問題だ

 1月14日から平成30年(2018年)の初場所が始まりましたが、その中で横綱・白鵬の立ち合いに注目が集まっています。

 近年、白鵬は立ち合いで「張り差し」や「かち上げ」を多様する取り組みが目立っています。そのため、横綱審議委員会からの苦言が出て注目されているのですが、これは欺瞞と言えるでしょう。

 なぜなら、同様の取口を見せていた大砂嵐は批判を受け、「かち上げ」を “禁じ手” とするように指導された経緯があるからです。

 

 白鵬は立ち合いに何をするのかーー。騒動後にもかかわらず満員御礼になった新年の初日。結びの仕切りの間、観客から「かちあげはダメだぞ」「張り手もだ」と声が飛んだ。

 張り手とかちあげが多い取り口を横綱審議委員会(横審)に「見たくない」とまで言われた白鵬は場所前、戸惑いを見せていた。初日の朝には師匠が場所中の部屋での取材を拒否する意向を示すなど、ピリピリした雰囲気が包んでいた。

 

 

1:大砂嵐はダメで、白鵬は OK の理由を述べられるのか

 白鵬の立ち合いで目立つのは「張り差し」と「かち上げ」です。これらの技を使う目的は「対戦力士が突進して来る勢いを弱め、自分に優位な形で組む」というものでしょう。

 勝つためには必要な戦術であることには間違いありません。

 しかし、横綱は白星だけではなく、内容も問われる特別な地位です。白鵬の場合は「かち上げ」が “本来の目的” から逸脱していることが明らかであり、そのことを批判を招く原因となったのです。

 過去に大砂嵐が「かち上げ」を禁止するよう指導されています。同じことを横綱である白鵬がやっているのですから、「なぜ相撲協会は今まで白鵬を指導しなかったのか」と批判されて当然なのです。

 

2:大砂嵐のかち上げが禁止された理由

 大砂嵐は平成26年(2014年)の夏場所で「かち上げ」を禁止されています。夕刊フジに掲載された理由は次のとおりです。

 「いや、全面的にやっていけないと言ったんじゃないんです。相手を浮かすように下から上にカチ上げるのはいい。でも、大砂嵐のカチ上げは明らかに顔面狙いで、横から狙いすまして叩き込んでいる。あれだと当たりどころによっては大ケガする。だから、師匠はああいうのはやっちゃダメだと言っているんです」と世話人の友鵬さんは補足説明する。

 さて、白鵬が使っている「かち上げ」の内容・狙いが大砂嵐とは異なると言い切れるでしょうか。

 「相手を浮かすように下から上にかち上げる」のではなく、立ち合いに “顔面狙い” で対戦力士をひるませる狙いで使っています。大関・高安が使う「かち上げ」と見比べると、その差は歴然と言えるでしょう。

 なぜ、横綱・白鵬だけが野放しにされてきたのかを親方衆は説明しなければなりません。

 

3:白鵬の実力は「張り差し」と「かち上げ」で偽られたものかが明らかになる初場所

 藤島審判長(元大関・武双山)は「張り手」や「かち上げ」が反則ではないこと理由に使うことまでには否定的ではありません。

 ただ、「内容の求められる地位だからね」と朝日新聞にコメントしていますが、白鵬が弱くなったとの批判が起きた際に「円熟味が増し、総合力では今が最高」とフォローしていた経緯があります。

 本当にそう思っていたなら、「張り差し」と「かち上げ」を使って勝星を積み重ねる白鵬にその時点で苦言を呈していたことでしょう。しかし、そうした行動には出ていないのです。白鵬の取口への批判を招いた要因は相撲協会にもあると言えるでしょう。

 「張り差し」や「かち上げ」の使用を自粛した白鵬が立ち合いで自らが優位となる形で相手力士を組むことができるのか。これができなければ、限界説が一気に広まる場所になると言えるのではないでしょうか。