「イ・サンファ(李相花)を勝たせるための追い風作戦」の実施は現実には難しい
スピードスケート女子 500m の金メダル本命は日本の小平奈緒選手でしょう。
対抗の1番手は韓国のイ・サンファ選手なのですが、イ・サンファ選手を勝たせるために「送風設備を使った “追い風作戦” を敢行するのかではないか」と ZakZak が主張しています。
しかし、実際には難しいでしょう。なぜなら、イ・サンファ選手と小平奈緒選手は最終組での同組スタートとなる可能性が極めて高いからです。
人が機械を動かす以上、“手心”も技術的には可能だ。「500メートルで五輪3連覇を狙う韓国の李相花が滑るときは装置を動かして、小平のときは止めるのでは」と懸念する向きもある。
技術的に「追い風状態」を作ることは可能です。
ただ、スピードスケートは1組2選手で滑りますので、イ・サンファ選手に “手心” を加えると、イ・サンファ選手と同組の選手も恩恵を受けるという欠点が存在するのです。
1:小平奈緒とイ・サンファは「最終組で同組」になる可能性が大
スピードスケート 500m は一発勝負でメダルが決まる方式となりました。そのため、実力者があるほど出番が後ろになる傾向があります。
今季(2017-18シーズン)の ISU W杯での小平奈緒選手とイ・サンファ選手の成績は下表のとおりです。
イ・サンファ | 小平 奈緒 | |
---|---|---|
11月10日 (ヘーレンフェン) |
37.60 (6組:Out、2位) |
37.29 (9組:In、1位) |
11月11日 (ヘーレンフェン) |
37.53 (10組:Out、2位) |
37.33 (10組:In、1位) |
11月17日 (スタバンゲル) |
38.08 (10組:Out、7位) |
37.08 (10組:In、1位) |
11月18日 (スタバンゲル) |
37.95 (10組:Out、3位) |
37.07 (10組:In、1位) |
12月3日 (カルガリー) |
36.86 (10組:Out、2位) |
36.53 (10組:In、1位) |
12月8日 (ソルトレイク) |
36.71 (10組:Out、2位) |
36.50 (10組:In、1位) |
12月9日 (ソルトレイク) |
36.79 (10組:Out、2位) |
36.54 (10組:In、1位) |
自己ベスト | 36.36 (2013年:ソルトレイク) |
36.50 (2017年:ソルトレイク) |
ランキング1位の小平奈緒選手は「最終10組インスタート」が指定席。同2位のイ・サンファ選手は「最終10組アウトスタート」でW杯を戦っています。
両選手はオリンピックでも最終組に入るでしょう。イ・サンファ選手が「最終組の1つ前でインスタート」、小平奈緒選手が「最終組でインスタート」のような別組に振り分けられないかぎり、送風機を使った “手心” は加えられない状況なのです。
2:IOC が “スタートコースの配分” で韓国に忖度する可能性は十分にある
小平奈緒選手とイ・サンファ選手が最終組で同組になることが確定的であり、『送風機作戦』を実行しても両選手が恩恵を受けてしまいます。したがって、こちらは気にする必要はないでしょう。
むしろ、スタートコースで地元・韓国のイ・サンファ選手に配慮がされるシナリオの方が高いはずです。
500m はインスタートの方が有利です。これはインスタートはゴールに近い2回目のカーブは外側のレーンを走行するため、スピードを維持したまま通過できるというメリットがあるからです。
そのため、イ・サンファ選手に「最終組のインスタート」の資格が与えられる可能性は残されていると考えられます。
『送風機による追い風』よりも、『スタート位置での配慮』の方が現実的に考えられる “手心” だと言えるのではないでしょうか。