「警備員の人件費高騰は問題である」と読売新聞が “ブラック企業” を助長する記事を掲載

 読売新聞が『警備員人件費上がり、花火上がらず』とのタイトルで、各地で花火大会が中止になっていると報じています。

 群衆が集まるイベントでは警備体制を構築することは主催者の責務であり、警備員の人件費は必要経費です。その準備ができない主催者のために、賃金報酬を受け取る側が泣き寝入りを強いられることは問題視しなければなりません。

 箱根駅伝の沿道警備に “ボランティア” を駆り出している読売グループの本音が如実に現れた記事と言えるでしょう。

 

 労働現場での人手不足が深刻化する中、各地で警備員の人件費が高騰し、花火大会が中止に追い込まれるケースが相次いでいる。「低賃金」「きつくて危険」と敬遠されがちな警備員の仕事は若者が集まりにくく、高齢化も進む。夏の風物詩を維持しようと、インターネットで寄付を募る動きも出てきた。

 (中略)

 「これまでと同じ給料では人が集まらない。警備員1人につき警備費用を2000円上げてほしい」

 1953年から続く大阪府岸和田市の「岸和田港まつり花火大会」。主催する市の担当者は今年、地元の警備会社からこう求められたという。

 

人手不足で人件費が高騰する中で、請求価格を据え置きにする意味はない

 警備員のような「肉体的に厳しい上、危険も伴う業務」にまで人手不足の波が押し寄せているのは複数の要因があるためでしょう。

 “敬遠されがちな仕事” は他業種よりも高給が提示されなければ、応募する人は少なくなります。今のネット時代は「割に合う仕事かどうか」を誰もが簡単に調べることができます。

 そのため、低賃金でこき使われるとの印象を持たれる職種は人員確保が極めて難しいのです。それでも人員を集める必要があるなら、待遇を改善することが不可避です。

 もし、依頼主が警備費の引き上げに難色を示すのであれば、会社側は警備員の派遣を拒否すれば良いだけです。請求価格を据え置きにすることで警備会社側の利益が目減りすることになるのですから、依頼主に配慮する意味はないと言えるでしょう。

 

『警備員の人件費』がバカにならないから、『ボランティア』を前提にした計画を立案するのだろう

 「読売グループは『警備員の人件費高騰』を嫌う立場にある」と言えるでしょう。巨人軍の主催試合や箱根駅伝で大量の警備員を確保しなければならない立場にあるからです。

 東京ドームでの巨人戦は「球場内の警備員」と「最寄り駅までの誘導警備員」がメインですので、金額は限定的と思われます。

 一方、「沿道警備」が必要となる箱根駅伝は警備費用がシャレにならない額になる可能性があります。そのため、“大学生のボランティア” に中継所の警備や雑用することでコストダウンを図っているのです。

 この手法は「正当な対価を支払っていない」ため、経済活動を停滞させる原因となります。また、明らかな労働力の搾取であり、『ブラック企業問題』をして槍玉にあげられるべきものでしょう。

 それを誤魔化すために「ボランティア」の名で美化しているという実情が横たわっている問題を指摘する必要があるはずです。

 

 必要な経費を用意できないイベントは開催されない方が良いに決まっています。予算不足の中で開催が強行されると、安全対策が軽視されることになり、事故発生時に被害が予想以上に拡大するという悲劇を招きがちになるからです。

 警備の重要性が世間に強く認識されたのは「明石市の歩道橋事故」であり、今回の記事を書いた読売新聞・大阪本社も取材をしたことでしょう。

 景気回復の波が “人件費の高騰” という形で地方にまで到達することは一般庶民にとっては朗報です。「警備員の仕事はボランティアでもできる」という誤った認識に基づくような記事を書く読売新聞の姿勢は容認できるものではないと言えるのではないでしょうか。