企業健保が「保険料率 30% の時代が来る」と懸念しても、政治はコロナ禍を理由に「料率 35〜40% 」にまで平気で上げるだろう

 日経新聞によりますと、健康保険組合の財政が新型コロナウイルスの感染拡大によって一層圧迫されることによる問題が懸念される状況にあるとのことです。

 企業活動が止まった状態ですから、所定の保険料を支払うことが重荷になります。保険料率は労使折半で約 30% ですが、新型コロナウイルス対策で多額の医療費を投じる必要が出た以上は(政治は)料率の引き上げに動くでしょう。

 それによって健保そのものが破綻するリスクは極めて高い状態に置かれていると言えるでしょう。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大により、大企業の社員が入る健康保険組合の財政が一段と圧迫されそうだ。企業活動が収縮し、一部の組合は企業と従業員による保険料の支払いを先延ばしせざるを得なくなっているためだ。全国約1400組合のうち、給付費など一般的な支出を賄える余力が3カ月分を下回る組合も90程度ある。収支の悪化に拍車がかかり、保険料のさらなる引き上げや解散の増加が懸念される。

 

社会保険料率が労使折半で 30% に迫っている現状は限界に近い

 まず、社会保険料率は現時点で約 30% に達しています。2022年度には平均で 30% を超えることでしょう。

  • 2020年度の社会保険料率: 30.1%
    • 健康保険料率: 9.8%
    • 介護保険料率: 2.0%
    • 厚生年金料率: 18.3%

 労使折半であるため、“サラリーマンに見えている社会保険料” は「払っている分の半分」です。残りは雇用者側が負担しているため、見ることはできません。

 しかし、雇用者が負担している社会保険料は「雇用するための人件費」として計上されているのですから、サラリーマン側が負担していることと同じと言えるでしょう。

 問題は社会保険料の負担が年々増えていることです。2010年度の保険料率は 25% と高い水準でしたが、それが2022年度には 30% を超えるのです。

 限界に達しつつある状況でさらなる料率引き上げが現実味を帯びているのですから、健保の運営が行き詰まるのは時間の問題と言わざるを得ないでしょう。

 

コロナ禍で経済が止まると、支出を賄うだけの保険料収入を確保できなくなるのは自明

 健康保険組合の先行きに大きな不安が生じている理由は「経済活動が止まっているから」です。

 売り上げがなければ従業員の給与も(企業が負担する)保険料を支払うことができません。その結果、健保の収入が極端に落ち込み、運営資金が枯渇する事態に見舞われてしまうことになるのです。

 その先に待っているのは「健保の経営破綻」です。新型コロナウイルスの蔓延度に関係なく、他の疾患は平年並みの頻度で発生しています。また、年金負担も変わりません。

 つまり、社会保険の支出分は新型コロナウイルスの感染拡大による影響とは無関係で変化はしないのです。一方で社会保険の収入分は「料率の元となる収入が経済活動の停止による影響が直撃」しているのですから、保険組合の解散が現実味を帯びていると言えるでしょう。

 

健康保険料の半分は高齢者の医療費に回されている

 健康保険料率は現時点で約 10% ですが、その半分が「65歳以上の高齢者の医療費」に拠出されていることを無視すべきではありません。

 会社員が払う健康保険料には、65歳以上の高齢者にかかる医療費を賄うための拠出金が含まれている。18年度の拠出金は3兆4537億円になり、健康保険組合に加入している会社員や家族への給付費約4兆円と比べると「仕送り」の重さがよくわかる。

 加入している本人や扶養者が保険による恩恵を受けるのは正当です。その結果、保険料率が 10% であるなら、理解はできるでしょう。

 しかし、収めた保険料の半分は “赤の他人” である65歳以上の高齢者の医療費として使われているのです。これにより、5% で済むはずの保険料率が倍の 10% になっている状況なのです。

 高齢者が消費する医療費は今後も増加する一方です。ほどんどの政治家が選挙での得票のために「高齢者の生活向上」を主張して現役世代からの所得移転に熱心なのですから、現役世代の負担額は増える一方でしょう。

 

 健保組合が「30% では現役世代が持たない」と声を上げたところで、「新型コロナ対応のための医療予算が必要だ」との詭弁が勝つのは目に見えています。その結果、保険料率が 40% に達したとしても驚きはありません。

 なぜなら、日本は「高齢者の要望」が何よりも優先される『シルバー民主主義国家』だからです。

 新型コロナウイルスは高齢者にとって不安の種ですから、日本経済を止めることに躊躇はありません。高齢者にとっての最優先事項は「自分たちが逃げ切ること」であり、『経済』や『少子化問題』ではないのです。

 70歳以上が2000万人もいるのですから、医療費負担が重くなるのは当たり前です。後期高齢者に3割負担すら求めない政治のツケを払うのは今後も現役世代です。

 国の財政が崩壊する前に社会保険制度だけを崩壊させた方が傷は浅くて済む可能性を本気で検討し、実行に移すべきと言えるのではないでしょうか。