金融証券取引法違反に端を発したカルロス・ゴーン元会長による問題、本命の特別背任でも容疑が固まり始める

 2018年の11月末に日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)が金融証券取引法違反の容疑で東京地検特捜部に逮捕されました。

 当初から「本命は特別背任なのでは」との見立てが出ていましたが、日経新聞などの報道によりますと特別背任問題でも大まかな構図が明らかになりつつあるとのことです。メディアが報じている情報から判断すると有罪となる可能性は高いと言えるでしょう。

 

 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長がサウジアラビアの知人側への約16億円に加え、別の中東の知人2人の会社にも日産から計50億円超の資金を支出させていたことが3日、関係者への取材で分かった。ゴーン元会長が自ら使途を決められる予備費から捻出され、日産内部でも不透明さを指摘する声が上がっていた。

 ゴーン元会長が逮捕された当時は「擁護論」が一部から出ていました。また、特別背任容疑で再逮捕されたことで保釈がなくなった12月末でも「擁護論」は存在しました。

 ただ、特別背任の捜査が進むほどゴーン元会長の立場は苦しくなっており、メディアが擁護論を取り上げる頻度が極端に低下していると言えるでしょう。

 

ゴーン元会長が特別背任容疑で無罪となる可能性は低い

 金融証券取引法違反では「勝てる可能性」は残っているでしょう。ただ、特別背任容疑では勝てる見込みがほとんどない状況なのです。

2008年秋 リーマンショックが発生。ゴーン元会長はスワップ取引で約18億5000万円の “個人的な” 評価損を抱える
同年10月 評価損を含むすべての権利を日産に付け替える
→ 特別背任(= 会社法違反)の容疑
同年12月 日産社内で『機密費』の創設を指示(読売新聞)
2009年6月〜 サウジアラビアの知人の会社に日産側の『機密費』から約16億円を送金。他の知人の会社にも計50億円を送金
→ 特別背任(= 会社法違反)の容疑

 まず、「被った損失を会社に付け替えた行為」が特別背任に該当します。「実質的な損害はなかった」という主張で事件化を免れることができる可能性は低いと言えるでしょう。

 また、ゴーン元会長が直轄する『機密費(= 予備費)』を知人の会社に流した行為も有罪となる恐れがあります。これは「友人の会社」から「ゴーン元会長が管理する口座」に資金を還流させている疑いがあるのですから、そのことが証明されると背任の動かぬ証拠となってしまうためです。

 

“特捜部の暴走” という種類の批判がメディア上からほとんど姿を消した

 韓国海軍が自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題が発生したため、メディアの注目度が下がったことは否定できません。

 しかし、世界的に注目される案件であることを踏まえると、「ゴーン元会長を擁護する声」が皆無に近い状況になっていると言えるでしょう。検察側は “普段どおり” に捜査情報を小出しにリークを続ける一方、弁護側や擁護派からの「リーク情報への批判」があまり発信されていないからです。

 特に、特別背任容疑がかけられている問題では歯切れが悪くなっており、それが世間に「有罪」と印象づける形となっています。

 8日に東京地裁が拘留延長を説明する際にゴーン元会長は出廷し、自身の考えを述べることを表明済みです。おそらく、海外メディア向けに「自らの無実」を主張し、「拘留に正当性がない」と訴えることが予想されるため、事態は何らかの形で動くことになるでしょう。

 

「現状よりも多い報酬を得る資格がある」と考えたゴーン元会長らが『予備費』に手をつけたのが原因なのでは?

 ゴーン元会長らによる特別背任問題は「現在の報酬額よりも多くを受け取る資格がある」との考えが根幹にあるからでしょう。

 経営陣は報酬額を決定する権限がありますが、高額な報酬は反発を招きます。“コストカッター” の手法でしか結果が残せていないゴーン元会長の場合は社内やグループ内での恨みを買っている可能性が高く、表立って報酬を上げることは難しい状況だったと考えられます。

 そのため、裏工作をすることで “自らが納得するだけの報酬額” を得ようとしたことが否定できないのです。

  • 有価証券報告書に記載される額を少なく記載させる
  • 『予備費』を「友人の会社」に回し、自らが管理する口座に振り込ませる

 これらの行為に手を染めた証拠が着実に固められているのですから、会社の資金を私物化していたことが証明されつつある状況です。判決の行方が見えた裁判にメディアが失い始めるのは自然なことだと言えるでしょう。

 勾留中のゴーン元会長がそのまま収監されるようなことになるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。