山梨県知事選で「与党が推薦する新人候補」が「野党が推薦する現職候補」を破って初当選を果たす
1月27日に投開票が行われた山梨県知事選挙で “与党が推薦する新人候補” が “野党が推薦する現職候補” を破って初当選を果たしたと NHK が伝えています。
これは野党にとって痛手と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、「地方自治体の首長選挙は現職候補が圧倒的に有利」だからです。また、民主党政権時に幹事長として辣腕を振るった政治家のお膝元での選挙で敗れたという事実も重く受け止める必要があります。
統一地方選挙や参議院選挙の前哨戦となる山梨県知事選挙はきのう(27日)投票が行われ、自民党と公明党が推薦した新人で元衆議院議員の長崎幸太郎氏が立憲民主党と国民民主党が推薦した現職らを破って初めての当選を果たしました。
新人の長崎幸太郎氏が約20万票で初当選を果たし、現職の後藤斎氏は約17万票でした。
与党が長崎氏を推薦していたとは言え、現職候補が知事選で敗れたことは推薦していた野党にとって痛手です。また、山梨県は野党(≒ 民主党)が強い地域なのですから、世論の風当たりは厳しくなっていると見る必要があるでしょう。
1人区の参議院・山梨選挙区で自民党の候補が勝利したのは直近5回で1度だけ
まず、山梨県は「自民党が弱い選挙区」です。
これは山梨県全域が選挙区となっている参議院選挙で、自民党の候補が勝利したのは前々回の1度だけ。その1回も野党候補が分裂したことによる “漁夫の利” を得た形で、当選者の得票数は15万票に届いていません。
それ以外の4回はすべて野党・民主党系の候補が当選し、得票数は17万票を超えています。
その代表例が民主党政権時に党の幹事長を務め、“参院のドン” と言われた輿石東です。輿石氏の地盤に加え、支持組織も残っているであろう地域の選挙で現職知事が敗れたのです。
「この影響を軽視することはできない」と言わざるを得ないでしょう。
野党候補の敗因は「米長晴信氏への期待票が与党候補(= 長崎氏)に流れたこと」
よもやの現職候補が敗戦となった山梨県知事選ですが、原因は「米長晴信氏が獲得していた “期待票” が自公候補の長崎氏に流れたこと」と言えるでしょう。
第24回参院選(山梨選挙区) | 2019年山梨県知事選 | ||||
---|---|---|---|---|---|
候補者 | 得票数 | 候補者 | 得票数 | ||
当 | 宮沢由佳 (所:民進) |
173,713 | 当 | 長崎幸太郎 (推:自公) |
198,047 |
高野剛 (所:自民) |
152,437 | 後藤斎 (推:野党) |
166,666 | ||
米長晴信 (無所属) |
67,459 | 米長晴信 (無所属) |
17,198 |
米長晴信氏は『みんなの党』に所属する現職候補として第23回参院選に臨むも、4位で敗れて失職。第24回参院選(2016年)にも再び山梨選挙区から出馬するも当選とはなりませんでした。
その時、米長氏は6万7000票の得票だったのですが、今回の県知事選では1万7000票と5万票を減らしています。
一方で自民系候補に目を向けると、前回の参院選では15万票だった得票数が今回の知事選では約20万票と5万票弱も票を伸ばしているのです。これは「米長氏に票を投じていた有権者が与党系候補に乗り換えた」と言える十分な根拠になるでしょう。
一方で、票の上乗せができなかった野党にとっては逆風になる可能性が高いのです。
“第三極” の政党に期待していた有権者が「与党支持の姿勢」を打ち出しつつある状況
『みんなの党』と言えば、『維新の会(当時)』と並び、“第三極” という立場で政界に新たな風を持ち込んだ政党です。ただ、全国的に展開するのは組織規模が乏しく、党勢は衰退傾向になっています。
問題なのは「与野党から議員が集って誕生した政党を支持していた有権者が与党を支持する傾向が見られること」です。
この状況を野党は重く受け止めるべきでしょう。野党が政権交代を狙うなら、党勢の拡大が必須であり、そのためには「与党支持層の切り崩し」や「与党を上回るペースでの無党派層の支持拡大」を図る必要があります。
しかし、政党の新たな支持層となってくれる可能性がある有権者が与党に流れている傾向が山梨県知事選では起きてしまったのです。このことに危機感を持って対応しなければ、現状の “安倍1強” を揺るがすことすらできないと言わざるを得ません。
「政策論争で安倍政権を上回る」という正攻法を採るのではなく、言いがかりを付けることによるイメージダウン戦略を採っている姿が有権者から見放されているのでしょう。国会に臨む姿勢そのものを野党は変える必要があると言えるのではないでしょうか。