酷使で先発と中継ぎエースの “マイレージ” を使い切りつつある巨人、首位キープに黄信号が灯る
プロ野球のペナントレースが佳境を迎えていますが、マジックナンバーを点灯させた巨人が大きく失速し、優勝の行方が混沌として来ました。
2位の横浜に 2.5 ゲーム差を付けているとは言え、直接対決は6試合残っています。しかも、巨人は投手陣が酷使による疲労から崩壊状態にあります。したがって、チーム状態を立て直せずに優勝を逃すケースはあり得ると言えるでしょう。
原監督は中川について「ストライクを取ることに一生懸命じゃ、なかなか抑えられない」と苦言。ここまで16セーブとチームを支えてきたが、今後はリードしていない場面など、配置転換の可能性もありそうだ。
巨人は5日に行われた中日戦で手痛い逆転負けを喫し、原監督は負け投手となった中川投手を批判しています。また、宮本コーチも配置転換を示唆しており、テコ入れが行われる可能性は十分にあると言えるでしょう。
宮本投手総合コーチは「(役割を)替えたくはないけど、田口も調子がいい。いい投手から投入したい」と話した。
確かに、直近の中川投手の出来は良くありません。しかし、それは「首脳陣がシーズン前半戦から酷使して来たこと」が理由です。中川投手だけに責任を押し付けることは間違いと言わざるを得ないでしょう。
8月上旬で “今シーズン分のマイレージ” を使い切っていた中川皓太投手
まず、中川投手の起用は明らかに「酷使」と呼べるものです。
防御率 | 試 | 回 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
3・4月 | 0.00 | 11 | 11 | 1W4H |
5月 | 0.75 | 10 | 12 | 3S4H |
6月 | 2.92 | 13 | 12.1 | 1W1L7S |
7月 | 1.64 | 12 | 11 | 2W5S5H |
8月 | 6.75 | 9 | 8 | 1L1S1H |
9月 | 10.13 | 3 | 2.3 | 1L |
合計 (9月5日現在) |
2.53 | 58 | 57 | 4W3L16S14H |
中川投手は8月から成績が急降下していますが、これは8月上旬に「コンディション不良」でベンチ入りができない状況が10日ほど続きました。しかし、8月上旬の時点で中川投手は50試合に登板しており、明らかに登板過多な状況だったのです。
もちろん、上位に付けるチームで『勝ちパターンの投手』として起用される投手は登板機会が多くなります。ただし、それはクローザーや守護神に専念した投手がいる場合の話です。
今シーズンの中川投手のように「セットアッパー」から「クローザー」に転向し、その後に「試合終盤で相手打線の最も強力なイニング」を担当するピッチャーは疲弊して当然です。明らかに投手起用を誤ったと言えるでしょう。
巨人・澤村投手や阪神・ジョンソン投手の起用方法が理想
どのような起用方法が理想であるかと言いますと、澤村投手(巨人)やジョンソン投手(阪神)が起用方法が参考例です。
澤村 拓一 | P・ジョンソン | |||||
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防御率 | 試 | 回 | 防御率 | 試 | 回 | |
3・4月 | 12.00 | 1 | 3 | 0.00 | 11 | 12.1 |
5月 | 3.60 | 5 | 5 | 1.29 | 15 | 14 |
6月 | 1.74 | 8 | 10.1 | 0.00 | 3 | 3 |
7月 | 1.69 | 9 | 10.2 | 1.69 | 11 | 10.2 |
8月 | 0.79 | 13 | 11.1 | 2.00 | 9 | 9 |
9月 | - | - | - | 3.86 | 2 | 2.1 |
合計 | 2.45 | 36 | 40.1 | 1.23 | 51 | 51.1 |
1ヶ月あたりの登板数は10試合前後で、イニングも10回前後に収めるべきです。なぜなら、このペースをシーズン全体で維持すると60試合・60イニングになるからです。
しかも、公式戦として記録されない「オールスター」や「ポストシーズン(= クライマックスシリーズや日本シリーズ)」での登板機会を考慮すると70試合近くにまでなるのです。
したがって、中継ぎ投手が持っている “シーズンあたりのマイレージ” は「50試合前後」と言えるでしょう。
ところが、巨人の原監督(や宮本投手総合コーチ)は中川投手のマイレージを8月前半に使い切ってしまったのです。チャージ期間を満足に設けていないのですから、ガス欠でストレートが走らずに相手打線に捕まるのは当然です。
後先を考えない『マシンガン継投』による負債が一気に表面化したと言わざるを得ないでしょう。
負試合でイニングを消化する “ロングマン” が準備されていないのが不思議
巨人の投手陣が崩壊状態にあるのは「起用方法に適した人選ができていないから」です。
野手出身の原監督は先発投手を早いイニングで降板させる試合が少なからず存在します。その場合、『第2先発』として登板した投手が「(少なくとも)先発投手が本来投げるイニングまで消化すること」がノルマとなります。
また、大差が付いた負試合でも “1人で最後まで投げ切る投手” の存在が不可欠です。これはブルペン陣の消耗を避けるために必要不可欠なことです。
しかし、巨人は「ロングマンとしての起用を念頭に置いた投手」をベンチ入りさせていません。2軍で先発投手として経験を積んでいる若手を「ロングマン要員」として1軍登録し、チャンスが巡って来なければ抹消というやり方もあったはずです。
中5日で先発と中継ぎを消耗し続けたことで大事な最終盤に息切れを起こすよりはマシと考えられます。投手起用という点で巨人の優勝が厳しくなっているのは否定できないと言えるのではないでしょうか。