WeWork で “ババ” を引く形になったソフトバンク、孫社長のサウジアラビアでの登壇に人が集まらずビジョンファンド2に不安が生じる

 共同ワーキング・スペースを提供する WeWork への投資で「巨額の損失」を抱え込む現状となっているソフトバンクが苦境に立たされている模様です。

 「サウジアラビアで行われた投資会議『未来投資イニシアチブ(FII)』に登壇した孫正義氏の話を聞く人の姿がまばらだった」とブルームバーグが報じており、ソフトバンク・グループのビジョンファンド2の先行きに大きな不安が生じていると言わざるを得ないでしょう。

 

 ソフトバンク・グループの孫正義社長は、サウジアラビア最大の華やかな投資会議「未来投資イニシアチブ(FII)」でパネリストとして登壇したが、話を聞く人の姿はまばらだった。

 孫氏は人工知能(AI)と起業家精神を中心に短く語るにとどめ、1000億ドル(約10.9兆円)規模のビジョンファンド(VF)2号にサウジアラビアが出資するかどうかには一切触れなかった。

 (中略)

 今回と2年前の会合では、孫氏の存在感の違いが歴然としている。孫氏は2年前、満面の笑みを浮かべてサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の隣に座り、皇太子が建設を計画する新しい都市「NEOM」に出資することを約束。ソフトバンクGはそのわずか1カ月前、サウジアラビア電力公社の一部株式を取得する合意に署名していた。その後、この合意に関する最新情報は何も提供されていない。

 

「WeWork での失敗」で投資家が敬遠し始めた

 ソフトバンク・グループは「ビジョンファンド」などの投資会社へと変貌を遂げていますが、経営を維持していくには出資者を募り続けることが重要です。なぜなら、投資した効果が出るまで間に別の投資先を探して投資をすることが前提のビジネスだからです。

 ところが、「投資先の選定」というビジネスの根幹部分で疑念を抱かれる事態が発生してしまいました。

 それが WeWork での失敗です。WeWork は「共同ワーキング・スペースを提供する企業」ですが、黒字化を達成することはできていません。しかし、黒字経営をしている同業他社よりも WeWork の評価額が高いという奇妙な状況にありました。

 ソフトバンクは WeWork にガバナンスなどの問題が指摘され出していた時点で巨額の追加投資を行っており、WeWork が(予定価格で)上場すれば、ソフトバンクは収益を手にすることが見込める状況でした。だから、上場に向けた動きを黙認していたのでしょう。

 ただ、WeWork の評価額の落ち込みは大きく、上場すらできない状態となってしまいました。

 問題が指摘されている企業に多額の出資を行い、それが原因で損失を計上すれば投資家からの評価は著しく低下することでしょう。ソフトバンク・グループが直面しているのは「投資の判断ミスによる投資家離れ」だと言えるでしょう。

 

大口の出資者から距離を取られている事実は重いのでは?

 多額の広告宣伝費を使ってくれるソフトバンクのネガティブなニュースを積極的に取り上げる日本のマスコミは少ないと思われます。これは先陣を切ったメディアに対して「宣伝広告費を絞る」という “報復” が行われると考えられるからです。

 とは言え、『ビジョンファンド2』の出資者を募っている段階で(大口の出資者となる可能性がある)サウジアラビアから距離を取られている状況に見受けられることが報じなければなりません。

 なぜなら、極めて危ない橋を渡ろうとしている可能性が高いからです。

 WeWork の損失分を抱えた状態であるソフトバンクは「一発逆転」を狙って大きなリスクを取ることでしょう。つまり、それだけ「失敗のリスク」も高くなることを意味しています。

 ソフトバンクが経営の立て直しに定評がある投資企業なら話は別ですが、その能力がないことはスプリント社や WeWork の事例で示されている状況です。したがって、投資先を世界中から探しているアラブの産油国から「出資先を選定する目を持っていない」との烙印が押されつつあるソフトバンクは『要注意銘柄』とすべきと言わざるを得ないのです。

 

 日本国内の携帯事業を(メインに)営むソフトバンクにさらなる成長を期待することは酷でしょう。そのため、ソフトバンクの集めた資金をビジョンファンドに出資し、そのリターンを得ることで成長を継続する経営戦略を採っているものと考えられます。

 ただ、投資の目利きがなければ行き詰まることが濃厚なビジネスモデルであり、現状は好ましくありません。「経営的なアプローチ」を用いて現在の苦境をソフトバンク・グループが脱することができるかが注目点になると言えるのではないでしょうか。