『あいちトリエンナーレ』のヘイト作品は擁護した大村知事、逆の政治的立場の民間団体へは法的措置を匂わせるダブルスタンダード

 朝日新聞によりますと、愛知県の施設で民間団体が主催したイベントに対して愛知県の大村秀章知事が「展示内容はヘイトスピーチに該当する」と述べ、主催者に法的措置も検討する方針を明らかにしたとのことです。

 この姿勢はダブルスタンダードと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、愛知県が主催した『あいちトリエンナーレ』では「表現の自由」を理由にヘイト作品の展示を擁護したからです。

 『昭和天皇の写真を焼き、その灰を踏みつける映像作品』や『間抜けな日本人の墓』などの展示物はヘイトには該当しないと大村知事などは主張しているのです。同様の論理に基づく作品群も「表現の自由」を理由に展示を容認しなければならない立場にあるはずです。

 

 「反移民」などを掲げる政治団体が愛知県の施設「ウィルあいち」(名古屋市東区)で開いた催しに対し、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)に反対してきた市民団体などが抗議した問題で、愛知県の大村秀章知事は29日の記者会見で、催しでの展示内容はヘイトスピーチに当たるとして、当日に施設側が催しを中止させなかった対応を「不適切だった」と述べた。

 (中略)

 大村氏は「法的手段が講じられるのかも含めて検討するよう指示した」とも話し、催しを開いた政治団体への法的措置も視野に対応を考える方針も明らかにした。

 一方、大村氏は「こういう活動をされる方々は故意にやってくる」と述べ、「どう防いでいくかは正直言って難しい課題で、いろんな方から知恵を頂きたい」と求めた。

 

『あいちトリエンナーレ』を皮肉るための “政治的な展示会” が愛知県の施設で開催された

 大村知事が法的措置を視野に入れている “催し” は愛知県が主催した『あいちトリエンナーレ』に対する皮肉で行われたイベントと言えるでしょう。

  • あいちトリエンナーレ
    • 主催:愛知県など(公的機関+補助金)
    • 会場:愛知県が保有する施設
    • 「天皇」や「日本人」を対象にしたヘイト作品が問題視
  • あいちトリカエナハーレ
    • 主催:桜井誠氏が党首を務める政治団体
    • 会場:愛知県が保有する施設
    • 「在日」を対象にしたヘイト作品が問題視

 イベントのタイトルから見ても、『あいちトリエンナーレ』で炎上した問題を意識していることは明らかです。

 「昭和天皇」や「日本人」に対するヘイトスピーチを「表現の自由」を理由に主催者である愛知県の大村知事や津田大介氏は容認しました。それなら、ヘイトの対象が「日本や日本人以外」であっても同様に容認しなければなりません。

 そのための踏み絵を迫るためのイベントであると言うこともできるでしょう。

 

大村知事が法的措置に出ると、『あいちトリエンナーレ』を擁護したロジックで反論される

 大村知事は法的措置を匂わせていますが、実際に行動を起こすことは難しいでしょう。なぜなら、『あいちトリエンナーレ』で展示した作品群が “炎上” した際に擁護したロジックで反論される形になるからです。

画像:ヘイト作品展示の正当性を主張する津田大介氏

 芸術監督の津田大介氏は「表現をする権利もある表現をした」と主張し、検証委員会もこれに賛同しています。このロジックは『あいちトリカエナハーレ』の主催者も使えるため、批判に対して真正面から反論すると予想されます。

 なぜなら、『あいちトリカエナハーレ』主催者の主張が「詭弁」であるなら、『あいちトリエンナーレ』主催者の主張も「詭弁」となるからです。

 「日本や日本人へのヘイトは『表現の自由』で保証される」が、「在日へのヘイトは『表現の自由』では保証されない」はダブルスタンダードです。ヘイト問題は誰を対象としていても同じ基準に基づく罰則が適用されるべきであり、被害者の属性によって免罪されるという形で運用が認められている方が問題と言わざるを得ないからです。

 

『あいちトリエンナーレ』と『あいちトリカエナハーレ』を同じ基準で批判することが重要

 『あいちトリエンナーレ』の主催者である愛知県の大村知事は『あいちトリカエナハーレ』の展示内容を批判していますが、「ヘイト作品を展示していた」という部分についてはどっちもどっちです。

 したがって、『あいちトリエンナーレ』で炎上した展示物を「表現の自由」を根拠に擁護した大村知事や津田大介氏などは『あいちトリカエナハーレ』も同じ根拠で擁護しなければなりません。つまり、「(展示作品は)極めて不快だが、表現の自由を尊重する」と言わなければならないのです。

 過去にそう断言したのですから、今回の案件でも『表現の自由』を守るために最前線に立ってくれることでしょう。

 憲法を持ち出しての擁護をしていた以上、『あいちトリカエナハーレ』の展示物を批判する資格が大村知事などにはないことは明らかです。矛盾した姿勢を見せつつある『あいちトリエンナーレ』の実行委員会や検証委員会に対して “踏み絵” を迫る良い機会と言えるのではないでしょうか。