あいちトリエンナーレ問題・その4: 愛知県の大村知事は「表現の自由を守る側」ではなく、「表現の自由を制限した側」
『あいちトリエンナーレ』で開催されていた『表現の不自由展』では複数の問題が絡み、炎上が起きています。
時間の経過とともに関心が薄れつつありますが、「表現の自由」を侵害した側の大村知事が被害者アピールをしている問題にも触れておく必要があります。抑圧者が責任転嫁をするなど論外と言わざるを得ないでしょう。
愛知県の大村知事が “主催者権限” で「『表現の不自由展』の中止」を決定した
間違ってはならないのは「大村知事が『表現の不自由展』の中止を決定した」という点です。
名古屋市の河村市長は「展示の中止を含めた適切な対応を求める」と申し入れただけです。これを「政治的な圧力」と主張し、「脅迫状の存在」との “合わせ技” で中止を決断したのは大村知事自身です。
民間企業なら、この対応は止むを得ない部分はあります。しかし、都道府県知事は異なります。なぜなら、知事は警察権力を傘下に持つ立場にあるからです。
したがって、大村知事は「中止を決定したプロセス」についての説明を果たさなければならないと言えるでしょう。
愛知県警に「警備の強化を命じること」も「被害届を提出して捜査を求めること」もせず、中止を決定した大村知事
各都道府県警は知事の影響下にあります。これは愛知県警の予算は愛知県知事である大村知事が握っているのですから、監督下にあることを意味しているのです。
大村知事が8月3日に「展示会の中止」を一方的に決定し、理由として「安全面」を挙げました。しかし、その時点で愛知県警には脅迫(や威力業務妨害)の被害届を提出しておらず、愛知県警に「警備の強化」を要望もしていません。
県知事にはそれだけの権限と権力があるにもかかわらず、『表現の自由』を守ることと真逆の振る舞いをしているのが大村知事なのです。
5日の定例会見で大村知事は「河村市長の主張は憲法違反」と批判していますが、それなら愛知県警が7日に脅迫犯を逮捕したのですから、速やかに『表現の不自由展』を再開すべきです。
それができないなら、大村知事は『表現の自由を守る側』ではなく、『表現の自由を弾圧する側』です。この部分を無視して「大村知事は『表現の自由』を守るために活動している」と主張する界隈も同罪と言わざるを得ないでしょう。
『表現の自由』を掲げるなら、「慰安婦像を侮辱する作品」の展示も『あいちトリエンナーレ』で行うべきだ
芸術作品であることを理由に『ヘイト作品』の展示を容認するなら、『逆の政治的メッセージが込められた作品』も愛知県が主催する公的イベントで展示することを認めなければなりません。
なぜなら、それが『表現の自由』だからです。もし、展示を拒むのであれば検閲をしたことと同じであり、『表現の自由』を侵害したことになります。
大村知事は「憲法に規定された『表現の自由』を守る」とのメッセージを送ったのですから、県として具体的なアクションに対する言及も行うべきでしょう。
「他者に対する憎悪を表現した作品群は公費を使って開催される展示会には不適当」と拒否することは可能です。しかし、大村知事は「表現の自由が優先される」との理由で「公費による展示会での展示を認める」と宣言したのです。
大村知事には自らの発言に基づいた行動を起こすべきですし、それを愛知県民が選挙を通して審判を下すべきと言えるのではないでしょうか。