長友がユナイテッドのオファーを断ったことは合理的だが、インテルが延長オファーを提示するかは不透明だ

 イタリアのインテル・ミラノに所属する日本代表DF長友佑都選手にプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドから獲得オファーがあったものの、拒否したことがニュースとなっています。

 断ったことが事実であることは選手自身も求めており、その判断は合理的だったと言えるでしょう。しかし、本人が希望するインテルとの契約延長がスムーズにまとめるかは依然として不透明です。

 

 長友選手にオファーを出したマンチェスター・ユナイテッドですが、クラブの『格』は欧州屈指です。これはサー・アレックス・ファーガソン監督時代に獲得したトロフィーによるものが大きく、また欧州トップクラスの資金力も持っています。

 しかし、ここ数シーズンは偉大すぎたファーガソン時代を払拭することができず、欧州最高峰の舞台であるチャンピオンズリーグへの出場権を確保することも困難になりつつあります。

 ユナイテッドが長友選手にオファーを出した理由ですが、サイドバックに怪我人が続出していることが大きいでしょう。冬の移籍市場が開いている時点で本職のサイドバックはイタリア代表のダルミアン選手だけでした。

 移籍に踏み切っていれば、ユナイテッドでレギュラーとしてプレーしていたと思われます。ですが、それは今シーズン限定の話です。来シーズン以降のことを考えると、ベンチ要員となることが濃厚だからです。

 

 ルイ・ファン・ハール現監督が解任されるのは時間の問題です。第26節を終えた段階で獲得した勝点41はプレミアリーグができてからのチーム最低成績。得点33も同じく最悪の数字です。

 ファン・ハール現監督のような補強費を与えられなかったモイーズ前監督の時代ですら、それ以上の成績を残していたのですから、ファン・ハール政権は風前の灯であることは明らかです。

 そうなると、来シーズンは新監督が招聘され、新監督の意向に合った選手がチームに加わることが濃厚です。(誰になるかが分からない)新監督が長友選手と高く評価する保証がない訳ですから、ユナイテッド移籍を冬の移籍市場で敬遠したことは合理的な判断だったと言えるでしょう。

 

 では、長友選手の “インテル愛” を現在の所属チームであるインテル・ミラノは評価するかと問われると「それは別問題」となるでしょう。

 インテルはマンチェスター・ユナイテッド以上に近年は成績が振るわないのですが、その大きな原因は深刻な財政難です。以前はモラッティ前会長のポケットマネーで損失の穴埋めを行っていましたが、それも UEFA (欧州サッカー連盟)が FFP (ファイナンシャル・フェアプレー)を導入したことで不可能になりました。

 『ガゼッタ紙』が報じた内容によりますと、インテルの累積赤字は4億ユーロを超えており、財政的に破綻寸前となっています。

 今シーズン開幕前に「100億円以上の大型補強をした」インテルと報じられていましたが、実際は資金の必要となる選手の買取ではなく、レンタル移籍の形態で支払いを先送りにしているケースがほとんどでした。

 つまり、それだけチームは資金を必要としていることが現状です。

 

 莫大な放映権収入が見込めるチャンピオンズリーグへの出場を逃すことになれば、トヒル会長は『インテル再建プラン』そのものを見直すことを余儀なくされます。

 セリエA屈指の資金力を持つユベントス(2015年の売上高:3億2390万ユーロ)ですら、主力選手に引き抜きの噂が絶えないことが実状です。売上高が1億6480万ユーロでしかないチームの会長が「選手を売るクラブではない」といった所で、鼻で笑われるだけでしょう。

 資金難で苦しむチームが新たな契約を提示するには優れたパフォーマンスを継続していることが不可欠ですが、良いパフォーマンスを見せる選手は引き抜きの対象となるだけに、長友選手がインテルに残れるかは非常に不透明な状況であると思われます。