ミランにしても、インテルにしても、見せ金による資金力は意味のないことを学ぶべき

 イタリアではミランとインテルが中国資本の傘下となり、復権するかが来季以降の注目点と言えるでしょう。両チームともに「資金力はある」と見られていますが、それが “見せ金” の域を出ていないことが問題です。

 イタリア国内はユヴェントスの一人勝ち状態ですが、ヨーロッパ全体では10位に何とか留まっているという状況であり、ミラノの2チームが浮上のきっかけを掴めてないことを問題視する必要があります。

 

累積赤字が足かせとなり、苦境に陥る

 インテルが三冠を達成した 2009/10 シーズン以降のセリエA主要クラブによる売上高推移は下図のようになります。

画像:セリエA主要クラブによる売上

 2009/10 シーズンの売上高はインテルが2億2480万ユーロ(欧州9位)、ミランが2億3580万ユーロ(同7位)、ユヴェントスは2億500万ユーロ(同10位)とトップ10にイタリア勢が3チーム入っている状況でした。

 トップのレアル・マドリードが4億3860万ユーロでしたから、オーナーのポケットマネーによる穴埋めが可能な範囲だったと言えるでしょう。しかし、そのような散財が長続きすることは不可能であり、累積赤字に耐えきれなくなり、高給を手にしていた主力選手を放出が始まり、チーム弱体化が進むことになったのです。

 

ユヴェントスの経営基盤は安定しているが、金満クラブには劣る

 イタリア勢は 2009/10 シーズン以降、チャンピオンズリーグのプレーオフで敗退し続け、本戦ストレートインの権利を持つクラブしかグループリーグに参加できていません。

 ユヴェントスが1枠を確保し続けており、残るチーム同士で潰しあいが行われていると言えるでしょう。しかし、“金満クラブ” の代表格には資金面で太刀打ちできない状況であることはデロイト社が発表している Football Money League より明らかです。

  • マンチェスター・シティ
    • 2009/10:1億5280万ユーロ
    • 2015/16:5億2490万ユーロ
  • パリ・サンジェルマン
    • 2008/09:1億80万ユーロ
    • 2015/16:5億2090万ユーロ
  • ユヴェントス
    • 2009/10:2億500万ユーロ
    • 2015/16:3億4110万ユーロ

 「FFP があるから、補強できない」ということは単なる言い訳であることは明らかでしょう。オイルマネーを背景にした “金満クラブ” の代表例であるマンチェスター・シティとパリ・サンジェルマンが大きく売上高を伸ばしているからです。

 

スポンサーという形で FFP は回避できる

 オーナーのポケットマネーを使う手法は FFP で禁じられましたが、スポンサーという形で迂回することが可能です。

 マンチェスター・シティも、パリ・サンジェルマンも高額なスポンサー契約で売上高を激増させています。チャイナマネーを手にしたミラノの2チーム(ミランとインテル)も手法を模倣することは禁じられていないのです。

 つまり、シティや PSG と同等の5億ユーロ台の売上高は厳しくても、ユヴェントスと匹敵する4億ユーロ弱の売上高までには到達できるはずです。それができていないのですから、「資金力がある」との主張は説得力を欠くと言わざるを得ません。

 サッスオーロの実質的オーナーであるマペイ社と同じぐらいのスポンサー契約を引き出していないのですから、「資金はあるが、使うことはできない」ということは本質なのではないでしょうか。

 

 本田選手や長友選手がミラン、インテルという歴史と伝統のあるクラブと契約したことは素晴らしい業績です。しかし、クラブに求められる成績を納めることができていない時期でのプレーであり、チームのユニフォームを着るに相応しい選手であるかに疑問符が付くことも事実と言えるはずです。

 スクデット争いができる競争力がミランとインテルに戻るのか。戦略面が発達しているイタリアで勝つためには “実際に使える資金力” が不可欠です。それがない状態が続くのであれば、低迷期が続くことになるのではないでしょうか。