電力自由化による電力不足の警鐘が鳴らされる
日経新聞によりますと、「2030年度に原子力発電の約27基分にあたる発電設備が足りなくなる」との研究報告がまとめられたとのことです。
発電量が足りなくなる要因はLNG(液化天然ガス)による火力発電が減退することなのですが、LNGによって発電されている分量を別の発電手法でカバーできなければ、研究報告で指摘されていることが現実に起きると言えるでしょう。
「2030年度に2700万キロワットの発電設備が足りなくなる恐れがある」。電力中央研究所はこのほど、こんな研究報告をまとめた。2700万キロワットは原子力発電所で約27基分にあたるだけに本当なら影響は大きい。
昨今は太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーがブームとなっています。将来の電源構成(ベストミックス)においても発電量の割合を2割強とする計画があります。
微々たる発電量しか持たない再生エネが全体の2割を占めるようになるのであれば、現状の発電手法による割合が下がることを意味しているのです。特に影響が大きいのはLNGを利用した火力発電と言えるでしょう。
- 再生可能エネルギー
- 2030年には発電量の 22〜24% を占める目標
- 固定価格での全量買取制度(FIT)が存在
→ 価格競争力がある
- LNG(液化天然ガス)
- LNGによる発電量の 27% は現時点で最大
- 石炭よりクリーンだが、再生エネより環境にはマイナス
- FITのある再生エネより価格競争力が劣るため、売れ残りのリスク
再生可能エネルギーはFITがあるため、自由化が行われた中でも新電力会社が利益を確保しやすい発電手法です。「利益が確保しやすく環境にもやさしい」となれば、儲けを狙う企業が投資をすることでしょう。
一方でLNGは “帯に短し襷に長し” といった状況です。発電コストは石炭火力に劣り、環境への影響も再生可能エネルギーに遅れをとっています。1番のメリットが何もない発電手法を利用する発電所を自前で用意する新電力会社はまず現れないと思われます。
その結果として、LNG発電所からの発電量が減り、太陽光発電など再生可能エネルギーからの発電量が増加する傾向が強まることになります。
電力は需用量と供給量を一致させなければなりません。再生可能エネルギーはエコというイメージが強いですが、発電量をコントロールできないという致命的な弱点があり、この問題を解消できなければ電力不足に陥る将来が待ち受けていると言えるでしょう。
消費者が求める電力供給をないがしろにし、高額な買取価格が設定されたままのFITを認めた電力自由化で利益を得るのは太陽光発電などに投資ができる一部の企業だけに留まると思われます。
自由化によって電力料金が下がるというのは幻想です。実際には発電所という設備を持つ大手電力会社が “卸” として力を見せつける場が整うだけなのですから、料金は上昇することとなり、電力量が足りない事態が頻発する恐れがあります。
自由化による問題が本格的に浮かび上がるのはこれからが本番と言えるのではないでしょうか。